プロローグ(キャラクター紹介)
「で、ここはどこだ?」
「困りましたね……さすがに右も左もわからない場所に放り出されると……」
「とりあえず、お互いの自己紹介から始めた方がいいかもしれないね」
日が落ち始め、何もない草原に放り出された五人。
彼らが、どうしてそのような場所にいるかの説明は少し前に遡る。
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「帰るか」
声を上げたのは赤茶けた髪で精悍といった雰囲気を醸し出す、流堂 紅真。
彼は二千人ほどが在籍するマンモス校――常磐学園に通う十七歳の少年。
あまり自分から人に喋りかけるタイプではないため、体格の良さも相まって、見る人からすれば怖いと思われるかもしれないが、熱い心を持つ少年だ。
現在、授業やホームルームを済ませて、部活にでも入っていない限りは帰宅するのみという状況。
通学カバンに教科書を詰め込んで、教室の外に出る。
廊下を通ると初夏の風が吹き抜け、運動部の音が届いてくる。
しばし歩き続けて、校門に差し掛かった時、それは起こった。
空間に亀裂が入り、辺りの物を飲み込んでいく。
そこにいたのは五人。一人は何故か諦めたような顔をし、一人は荷物を取り出そうと、残る三人は全員を助けようとしていた。
が、その場から動かない者と、助けようとしたのに相手が自分を助けようとしてきて困惑する者で、逃げ出す事が出来なかった。
そして五人は、世界から消えていった。
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「じゃあ、僕から自己紹介するね。杠 瑞希って言います」
身長は130cm前後、生粋の日本人であるにも関わらず肩より長めの銀髪、眼は紫色をしている。
顔立ちは端正で、美少女と言うのも憚られる程であるが……男である。
身長と顔立ちから、今でも男子小学生に告白される。
当然のごとく振られた上に辛い現実を突きつけられるのだが、いつまで経っても変わらない姿で歩く姿を見かける度に、告白した子供の心の傷を抉っていく。
当年取って三十歳。子供の頃に数々のトラウマを植え付けられた人達から、トラウマメーカーと呼ばれる常盤学園周辺の超有名人だ。
「次は私ですね。私は朱鷺宮 梓と申します」
紅真と同年代の彼女は、腰まで届く艶めく黒髪の持ち主、神社に生まれた箱入り娘。
朱鷺宮神社は広大な敷地を持っており、元の場所では周辺一帯の神社を取り纏めて祭事を行ったり、街の事業に対して可決権利を持つほどの権力を要している。
そこの一人娘である梓は蝶よ花よと育てられ、大和撫子を体現したような容姿で学園でも人気者である。
その一方で性格は控えめだけど、身体は控えめにならなくてもと残念がる意見が少なくない。
本人に直接指摘した人間はいたが、どうなったか知られてはいない。
「あ、俺も? 俺は字無 巡。まぁよろしく」
二十歳、無職。
薄い青色の短髪と、あまりよろしくない目つきで不良やチンピラと間違われやすいが、至って普通の性格。
少し前に、とある出来事が片付いたため、日々をゆったりと過ごしていた。
無職ではあるが、金には困らない生活をしており、高級マンションの一室を陣取っている。
親族とは絶縁状態のため、マンションの荷物をどうするかだけが不安要素らしい。
「えっと……じゃあ私も。月薙 菖蒲ですぅ」
二十六歳の女教師である菖蒲は、赴任してきたばかりの新人教師。
だが、そのグラマラスな身体つきと、祖先に外国の血が混じっているらしい風貌、甘ったるい口調が相まって、男性は生徒や教師問わずにモテる。
反面、女性からはやっかまれる事が多いのをどうにかしたいと思っている。
髪は肩より少し長めのピンクブロンドを後ろで纏め、柔らかな印象を与える。
可愛い物好きで、家にはぬいぐるみが沢山あるが、最近はいい歳なんだからと母親に捨てるよう言われるのが悩み。
「最後は俺か。俺は流堂 紅真だ。」
五人全員が挨拶し終わったのだが、いきなり知らない土地に放り出されたというのに、誰一人として焦ってないのはある理由がある。
その理由をお互いに知るのは半日後の事である。