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「女性とは何か」


哲学の話しではない。エリックに女性を磨いた方がいいといわれたことをアリスは気にしていたのだ。

工房を出てロジャース商会の屋敷へと戻る途中ずっと考えていた。女性。言われてみればアリスはこれまで男女間の違いは理解していたつもりだったものの仕事ではその立場を利用するくらいで当人としてはそれほど意識したことがなかった。


「こういうのはマリアさんに聞いてみるべきかしら」


そう呟くと馬車の進路を変え、孤児院へと向かう。

久しぶりの孤児院の光景はそれほど通ったわけではないはずなのにどこか懐かしく感じた。

そして、近くに馬車を止めると、孤児院へおそるおそる入っていく。中は相変わらず元気な声が聞こえてきていた。

 

「あら、アリス様ですよね?」


声がした方向を見るとマリアがいた。相変わらず金髪の長髪にどこか母性を感じさせる雰囲気を漂わせていた。


……は、これが女性というものか!?


アリスはマリアが優しげに子供たちを宥めてアリスの方へ向かってくる姿を見て呆然としてしまった。

 

「お久しぶりですね。どうかされましたか?」

「そ、それが」


微笑みながら尋ねてくるマリアにおずおずしがらもディオンとエリックとの件について話してみる。

そして、一連のことを話し終えるとマリアはくすくすと笑った。

 

「え?何か変なことがありましたか」

「いえ、エリック様の伝え方が悪いのか、単に初心なのかなと思いまして」

「後者は絶対ないと思うので前者だと思いますけど、どうしてですか」


マリアがアリスを優しげに見ながら笑顔でいる理由が理解できず、続きを急かす。


「そうですねえ。私が言っていいのかわかりませんが、ディオン様もエリック様もアリス様に好意を持っていらっしゃるんじゃないでしょうか」

「ええ、そういえばエリックはやらた求婚を申し込んできていたような」

「あら、でもその様子だと断っていらっしゃるのですか」

「ええ、まあ会って早々にいきなり結婚を申し込まれましたし、それ以降なんども言ってはくるんですが。どう考えても軽く言っているようにしか見えないので遊びだと思います」

「そうだったんですね」


アリスがそう言うとマリアは再びくすくすと笑い出した。

その様子に他人事みたいに見られている気がして少しだけアリスは不機嫌になる。

 

「すいません。アリス様は十分女性らしいですよ。ただ……」

「ただ?」

「もう少し恋愛に関して傍観者ではなく参加者になられてはいかがでしょうか」

「参加者?どういうことかしら」


 マリアの言っていることがわからずアリスは首を傾げる。

 

「言い方が悪かったですね。私が言いたかったのは誰が誰を好きなのかといったのではなくアリス様ご自身はどうなのかということですね」

「私は……」

「あ、クリスさ、クリス様はなしですよ」

「うぐっ」


アリスは言葉に詰まる。その様子を見たマリアは手を伸ばしてアリスの頭撫でるとこういった。


「アリスさんにとってローズ商会ができてからはよくクリスさんが助けてくれていたかと思います。でも、クリスさんは女性でありアリスさんの従者なのです。それと恋とは違うのです」

「で、でも……」


アリスは顔を俯ける。マリアが言いたいことはわかっていた。でもアリスはその言葉で納得できるほど単純ではなかった。


「ええ、わかっています。それでもそう割り切れない気持ちがあるとすれば、例えその相手が男性であっても女性であっても恋ではいいのではないでしょうか」


そういうとマリアはにっこりと微笑んだ。そして一言言葉を付け加える。

 

「かく言う私も、クリスさんはどこか男性らしさを感じる瞬間がありましたから」

「へ?」


アリスが思わずマリアの目をみるとマリアは矢朝しく優しく微笑んだ。


「さて、どうでしょうか。少しは悩みが解決できましたか」

「ええ、なんとなくだけど」

「はい、恋とはそういうものだと思います」


その言葉にアリスは笑顔で礼を言うと孤児院を退出した。そして、帰り道馬車に乗りながらいろいろと今日の出来事を振り返ってみた。


「参加者……か」


自分が傍観者になっている。その言葉が妙にしっくりと来ていた。


「少しだけ……ほんの少しだエリックに優しくしてあげようかしら」


何だかんだで理由をつけてはやってくるエリックの気持ちを考え少しだけ態度を改めようかなとアリスは思った。

そして、ロジャース商会の屋敷に戻るとエリックが慌てた様子でいた。そして、アリスの姿を見て慌てて駆け寄ってくる。


「アリスさん、心配していたんですよ!どこ行ってたんですか」

「え、ああ。孤児院にちょっとね」


よほど慌てていたの駆け寄るなり肩を掴んできた。少し痛みを感じたもののそれだけ心配してくれていたと思えば不思議と悪い気はしなかった。


「心配してくれたのね。ありがとう」


アリスはエリックに微笑んででそう言った。

その言葉に驚いたエリックは目を白黒させながらまじまじと見る。

そしてエリックは意を決してそしてこう言った。


「結婚しよう」

「ごめんなさい」


恋愛の道はまだまだ遠そうだなと思うアリスだった。

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