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1-4 私、中世で仕事をしてます!

翌日からアリスの創業計画は始まった。


大学に通う前に提出していた第1回、第2回事業計画書はいずれもお父様に苦笑いされながら却下されてしまった。それでも、代わりに大学を行くことができたのだから結果としてよかったのだろう。

今はそう思うことにしている。


それでも今は大学を卒業したのだ。以前と同じレベルの計画書を提出していては失望を与えてしまうことはアリスにも容易に想像できた。

知識を得たアリスにとって足りないこと。それは現場での経験だった。そこでアリスはロジャース商会で働かせてもらえるように頼むことにした。


コンコン


「私です。アリスです」

「おお、アリスか入ってきなさい」


アリスは了承を得た返事を確認し、会長室に入室する。


「ふむ。アリスから会長室に来るということは何か頼み事とかな」


さすがお父様。察しがいい。

・・・いや、それ以外の理由で会長室に来たことはないんだけどね。


「はい。お願いがあって来ました」

「言ってみなさい」

「私をロジャース商会で働かせてください」


父様ウィリアムは目を丸くして少し驚いた表情をした。


「ふーむ。現時点でそれなりに仕事は与えていたと思うが」

「書類整理に関してはこなしておりますが、私にとっては役不足です」

「そうか。よいのか?それでは事業計画を作る時間がなくなってしまうと思うのだが」

「かまいません。今、私に必要なのは計画を練る時間よりも実践経験を得ることかと思います」


父様ウィリアムは悩んでいた表情からなにやらニヤリと笑みを見せた。

アリスはこの表情の意味を知っている。その顔は上機嫌なときの顔だった。


「わかった。営業責任者のダリルに伝えておく。明日から営業所に向かい、そこの新人として実績を積んできなさい」

「ありがとうございます」


クリスに遅れること1日、アリスもようやくちゃんと働くことが決まった。

そして、その日は与えられていた雑務も多くなかったため、アリスは久しぶりに事業計画を練ることにした。


コンコン


突然、扉をたたく音がした。


「どうぞ」


アリスは窓の外を見てみると日は傾いていた。

就業時間が終了したので約束どおりやってきたらしい。


「失礼します」


予想どうりクリスが入室してきた。


「初めての仕事はどうだった」

「そうですね。初めての事ばかりでいろいろ大変でしたね」

「それにしてはだいぶ余裕がありそうね」


明らかにクリスは疲れた様子がないんだけど。

働いたばかりのときはそういうものなのかしら。


アリスはクリスが疲れていないことを不思議に思ったがアリス自身働いた経験がないためそういうものも思うしかなかった。


「はい、仕事は覚えてしまえば単調でしたのですぐに終わっちゃいましたから」

「あら、それなら仕事時間は何していたの」

「仕事内容を確認したり、メモして整理していました」

「なるほどね」


やはりクリスは出世するかもしれない。

アリスは自分の目に狂いはなかったと確信したが、なんだか心に引っかかる部分も感じていた。


「アリスさんは何していたんですか」


クリスがアリスの書類を興味深げみていた。


「ああ、これね」

「これはお父様からきた雑務と事業計画書よ」

「事業計画書?何か始めるんですか?」

「ええ、まあね」

「よかったら見せてもらえませんか」

「え?ええ良いわよ」


クリスに事業計画書を見せた。どうせまだ途中なのだしクリスに見せたところで理解できないだろう。

そう思った。


そしてクリスは事業計画書を手に取り目を通していく。


・・・


少しの間無言の時間が流れた。


そしてクリスは・・・苦笑いしていた。

この苦笑いに見覚えがあった。


嫌な予感がする。


「ま、まだ途中だけどどうかしら」

「え?えっと、正直に答えてもよろしいでしょうか」

「え?ええ。あ、でも少し優しく言ってもらえるとうれしいかしら」


クリスは少し困惑した表情だった。

クリスの表情にアリスは怖気づく。


「わかりました。感想ですが、この内容は少し見直されたほうがいいかなと思います」

「素直に言うと?」

「全くダメですね」


ガーーーン


ダメですね。ダメですね。ダメですね・・・


アリスの心に延々の響く。


従者のクリスに・・・田舎娘のクリスに・・・わ、私これでも大学をでているのよ。


クリスは出世する。アリスはクリスを高く評価していたからこそ、その返答は重く、とてもショックだった。


アリスは頭を垂れる。

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