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77 私は焦ったりなんてしない

入浴の日がやってきた。


「さあ、みんな入りましょう」


時間となって全員が集まったことを確認すると意気揚々とアリスが先頭になって更衣室に入っていく。

そして、いざ服を脱ごうとして見回したときに異変に気づく。


「あら?どうしたの?」


他のメンバーは恥ずかしがり服を脱ぐのを躊躇っていた。そして顔が合うと一様に顔を赤くして俯く。


「もう、みんな無礼講と言っているでしょ」


入浴場に入ればどうせみんな一糸纏わぬ姿となるのに。


アリスは仕方なく一番に衣服を脱ぎ始める。

その様子を見てベルも追従する。そうなるとその様子を見ていたロザリーとメアリ順に続いた。

しかし、クリスだけがアリスを呆然と身体を見ていた。


「ほら、クリスあなたもさっさと脱ぎなさい」


クリスはそう言われて我に返ったのか慌てて脱ぎ出す。女性同士とはいえさすがにアリスもじっと見られるのは恥ずかしかったのだ。時間は夜間になってしまったけど、もともの入浴場は温度と湿度を維持するために蝋燭の明かりが中心になっていて明るさはそれほど気にならなかった。また、営業後であったものの、クリスの配慮があったのか入浴場は清潔だった。

入浴場に入って各自、身体を洗っているとだんだんと慣れてきたのかもしれない。最初は恥ずかしそうにひしていたみんなも徐々に笑顔がではじめ、湯船に入った頃には心地よさそうなため息やリラックスしていくのが姿がちらりとみられた。

そして、ようやく意識しないようになってきたのかちらほらと会話も始まる。


「たしかにクリスが言っていたように多人数での入浴も悪くないわね」

「ええ、ほんとそうですね」


アリスがロザリーに話かけてみる。するそその会話にメアリやベルも加わってきた。


「でもやっぱり私には一緒に入るなんておそれ多いかと」

「はい、私もなんか場違いな気が」


メアリとベルは主人と一緒なのは気が引けるらしい。

入浴は楽しんでいるようだったが先ほどからちらりと何度も恥ずかしそうに視線を送ってくる。

そしてもう一人、同じように、ただ別の位置に視線を送っている人がいた。クリスだった。

クリスは先ほどからなぜか胸を見ているようだった。しかも、口もとを湯船につけてぶくぶくと泡を作りながら。


……な、何しているのかしら、さすがに胸ばかり見られると恥ずかしいんだけど。


アリスはそう思ったが、さすがにそれを直接言葉にすることは躊躇われたのでそれとなくクリスに会話を振ってみる。

しかし、クリスはやはり気になるのか相槌を打ってくるもののちらりと胸をみてくる。


そんなに興味があるのかしら。


そう思い、クリスの身体を見てみる。クリスの一糸纏わぬ姿を初めてみたかもしれない。

黒髪を結っている姿は輪郭がはっきりとし、どうにか身体を隠そうとする素振りはどこか艶めかしさがあった。

そしてクリスの恥ずかしそうにしている様子を見てアリスは悪戯心に火がついた。

身体を近づけたり胸を触ってみたりしてスキンシップをはかりながらキャッキャッしてみる。

普段、そんなことをしたことがなかったので加減がわからなかったものの他人の肌を触れてみるというのも案外悪くないのかもしれない。最初はクリスが恥ずかしがる姿を見て楽しんでいたものの、いつの間にかロザリーが加わっきた。そして今度はロザリーとお互いの身体を触りあったりして楽しむ。そしていつの間にかその二人を見守るメアリやベルもそのふれあいに加わってきていた。

みんな、キャッと言ったりキャーと悲鳴をあげたりしていたものの一様に楽しんでいるようだった。クリスを除いては。

顔を真っ赤にさせながら怯えるように縮こまるクリス。


「……可愛い」


アリスは思わず呟いてしまった。クリスにとってはそれが止めのセリフとなったらしい。


「すいません。のぼせてきたみたいなんでお先です」


そう小声で言って逃げるように退出していった。


「少しやりすぎたかしら」


そう思って周囲を見回してみるとみんなも同じ考えだったらしい。それぞれに反省の色が伺えた。

とはいえ、それはそれでみんな楽しかったようで、その後もお互いの身体を触りあったり、仕事やファッションの会話をして楽しんだだ。


こうして、無事初めてのみんなでの入浴は成功をおさめた。

たぶん。


というのもあれ以来クリスを入浴に誘ってものらりくらりと言い訳をして参加してくれないのだ。

クリスに頼めばロザリー達と一緒に入浴する準備をしてくれるし、入浴は楽しかった。それでも設立メンバーであるクリスが抜けるのはやはりどこか寂しかった。


何事もほどほどに。

親しき仲にも礼儀あり。


アリスはそのことを身を持って知った。

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