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あれからローズ商会はなんだかんだはあったものの順調に経営が続きアリスは16歳になっていた。

そして、改めて見てため息をつく。


ローズ商会経営者:アリス(平民)

経理責任者兼入浴事業の責任者:クリス(騎士)

ローズ商会の屋敷管理者:ロザリー(子爵)

ローズ商会の新人:エリック(第2王子)


この3人は何度見返してもどう考えても身分に対して役職がおかしかった。というか秘密裏とはいえどこの世界に王子様を新人として雇う商人がいるのか。そう思うとアリスは頭を抱えたくなった。


「絶対ばれる。あいつは目立つからいずれ絶対ばれる……」


本当におでこに手を当てるとノック音が聞こえた。

そして入ってきたのはロザリーだった。


「あら、ロザリー様も元気そうね」

「はい、おかげさまで」


名前も今さら様をつけるのもよそよそしいと思いながらも外で同じ呼び方をしてしまうといけないのでアリスは呼び方を変えた。

それでも、最近貴族の仕事で忙しいのか会える機会が減ってしまったものの仲良くやっていると思っているが会える頻度が減ったためか、これまでの他愛のない雑談に花が咲く。

こうしてアリスもロザリーも笑顔で話しをしていると、再びノック音が聞こえた。

そこでアリスはクリス達を呼んでいたことを思い出す。


「クリスね。入っていらっしゃい」

「失礼します」


クリスが入室するとアリスがこちらを見て微笑んだ。

そして、ロザリーにも気がついたのだろうクリスはロザリーの方へ顔をむけると挨拶を始めた。


「これはロザリー様、お元気そうですね」

「クリス様もお元気そうで何よりです」


どこかよそよそしい二人が少し気になったものの今日の目的はそこではないので見なかったことにし、アリスは話を始めた。


「クリス、騎士叙任式お疲れ様。そしてカルヴァン、騎士見習いになれてよかったわね」

「「ありがとうございます」」


アリスが笑顔でそう言うと、二人も笑顔で返してきてくれた。

そう、クリスは15歳になった日、騎士となっていた。正確にはアリスがエリックを雇う事になった後からその事が決まっていたらしい。どうやらエリックはクリスを騎士見習いとしてエリックのもとへおいておいたのはアリスと会うための口実で、その口実が必要なくなったので早速独立させたようだった。

アリスから見れば権力者のやり方に驚くやら呆れるやらなんとも言えなかったがいい反面教師にはなった。


「それにしてもしてやられたわね」

「ええそうですね」


クリスとアリスは苦笑いした。

どうやらクリスも騎士になるつもりはなかったらしい。そのことは騎士見習いになったときの様子を見て薄々感づいていた。というのもクリスの稽古を何度か覗き見たことがあったものの、剣術、馬術ともにクリスはあまり得意ではないようで、護身術のときのように疲れが見られたからだ。


それに加えて稽古のせいでアリスとも会える時間が減ってしまった。そのことに少々不満だった……のは私だけじゃないといいな。


そんなことを苦笑いしながら多い浮かべているとクリスの噂について思い出した。


「そういえば、最近社交場で話題になっていることをクリスは知っている?」

「いえ、私はあまりそういう場には参加しませんので」

「あ、アリス様も聞いたのですか。例の騎士様についてですよね」

「ロザリー様も聞いていたのね」


ロザリーとアリスはお互いに笑顔で顔を合わせ、くすりと笑うと再びクリスを見た。


「え?」


クリスはキョトンとしたかと思うと顔を青くした。その様子を見てアリスは微笑んだ。


「おそらくクリスが想像しているのとは違うわよ」

「どういうことでしょうか」


クリスは不思議そうに首をかしげてている。その様子をアリスは楽しげにみて話を続けた。


「そういえばクリスはあまり社交場には顔をだしていなかったわよね」

「ええ、まあ嫉妬を買うだけですから」

「そこでエリックがクリスのカルロスの教会話や今回の件について美談として話してしまったのよ」

「どうしてカルロスの話をエリック様が」

「あなたは知らないのでしょうけど、カルロスでは有名になっていたのよ」

「そ、そんなあ。でもそれが話題と何の関係が?」


クリスは驚きを隠さなかった。その様子をみてアリスは笑いをこらえながら話を続ける。


「クリス、気づいている?貴族は政略結婚が常識なの。好きじゃない相手と結婚させられようとしているときに、教会から連れ出してくれるのは夢のような物語なのよ。ましてやあなたが表舞台にでようとしないから貴族の間では理想がどんどん膨らんで謎の騎士様になっているの。そしてそのご令嬢たちがあなたを何と呼んでいると思う」

「さあ、検討もつきません」

「あなたのことをバラ騎士と呼んでいるそうよ」


恐らくローズ商会の名前から取られたのであろう。バラ騎士誕生の瞬間であった。

クリスはこれから降りかかるであろうご令嬢達の理想や期待を想像しているのだろう。

顔を青くしたままへなへなと崩れ落ちた。

その様子を見てアリスもロザリーも苦笑いしている。

そして、その様子を見たアリスは一言付け加えた。


「頑張ってね。私の騎士様」


クリスに聞こえないように小さな声で呟いた。

実はアリスもその話題に便乗していたのはアリスだけの秘密だった。

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