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2-10 因果応報

オルランドへの帰路。アリスは上機嫌だった。

理由は簡単でプロヴァンでの取引は想定以上によかったからだ。

マーセル商会を通じてガイア帝国へ拡大できる。これはこれまで人材不足によってローラン王国とカルロスでしか商売ができなかったローズ商会にとってはアリスの夢の実現に向けての大きな一歩となった。

また、これまでローズ商会1つで大陸一の商会にしようと考えていたが、今回の件ですべて自分たちの商会で達成する必要がないことを示す良い例となるかもしれなかった。


資金も人材も他に調達させ、重要な技術とポジションをローズ商会で管理する。


この仕組みができあがればローズ商会はすべて自前で用意して膨大な資金と労力を必要とする状況から脱することができる。

これは大陸にこれまでなかった新しい仕組みとなるかもしれなかった。


「ねえ、クリス」

「はい、アリスさんどうしました」


馬車に揺られているせいか幾分体調が悪いのだろう。クリスはぐったりしながらも呼ばれてアリスに笑みを見せた。


「プロヴァンでのやりとりについてだけど」

「ああ、あの件ですね」


あれ、どこで思いついたの。


「ああ、あれはアリスさんが『同程度の規模の工房や販売所を誘致する』って言ったときからですね」

「そんなはじめから!」

「ええ、それで少し思い当たることがあって調べてみたらライセンス販売というものとフランチャイズというのがあったんです」


そう言うとクリスはその二つについて説明し始めた。

ところどころわからない部分があったもののラインセンス販売とは技術や商品の名前を供与して販売する許可を与える代わりにライセンス料と言う名前の名目でお金を徴収する仕組みらしい。

そしてフランチャイズというのは仕組みや原料、ブランド、ノウハウなどを供給する代わりにロイヤリティを貰う仕組みらしい。

両者の違いは管理の有無でフランチャイズはすべて管理していくのに対してライセンス販売は管理も任せていくらしい。


今回の場合、どちらかと言うとライセンス販売に近いそうなのだが、販売の仕組みやノウハウの問題があるため、一部フランチャイズの形式を混ぜた共同事業にすることにしたらしい。

ちなみに3日の猶予をもらったのは立地を確認してライバルとなる石鹸商品の流通状況や競合商品の確認が目的だったらしい。


「へえ、そうなんだ」


 クリスが真剣に調べている中で料理に舌鼓をうったり、珍しい品や町並みを楽しんでいたアリスは少し申し訳ない気がした。

 そして、少し寂しそうにマーセルの町を眺めているクリスを見てもう一度機会があったらクリスと再び行こう。今度は商談ではなくゆっくりと楽しむために。

 そう思ったのは最初までだった。

 

 馬車にのってしばらくするとクリスは馬車酔いていた。


「これじゃ、遠出は無理そうね……」


 聞こえないようにそう呟くとアリスはクリスと一緒に馬車を降りて一休みしたり歩いたりしながらオルランドへの帰路を進んだ。

 

 こうして、帰路を進んでいると不意の出来事が起こった場所へ差し掛かった。

 一行は少し警戒しながら進んでいくと目の前に兵士達の姿があった。

 他に道がないため馬車で近づいていくと、アリス達の馬車に気づいた兵士達に呼び止められた。


「ちょっといいかな」

「はい、なんでしょうか


馬車を止め、アリスは何事かと素知らぬ顔で返事をした


「貴方たちはどこからやってきたのかな」

「私たちはこれからプロヴァンからオルランドへ帰るところですが、それが何か」

「この辺りでの出来事を聞いたことはあるかい」


その言葉にアリスは少し嫌な顔をしてしまったが、慌てず考え込む表情に切り替え返答する。


「いえ、そのような話は聞いたことがありませんが、何かあったのでしょうか」

「うーん、まあ話しても大丈夫か。実はな、この辺りで騎士達が亡くなったらしいのだ」

「亡くなったらしい?」

「ああ、というのもだな。遺体らしきものがあるのだが、真っ黒こげで、残っていたのは鎧などの武具でね。消息がわかっていないものから判断するしかないのだ」

「はあ、そのようなことがあったのですか」

「不思議に思えるだろうが集団で焼死なんて考えられないからな。それに死んだのが庶民ならともかく亡くなったのは騎士だ。襲われたとしてもそれなり力もあればそうやすやすと死んだりしないだろう。それに」

「それに?」

「剣できりあったのであればどこかしらに血痕などもあっていいはずなのだが一切なかったんだよ」

「不思議なこともあるのですね」

「まったくだ。こんな事今まで聞いたことがない」


むしろ、詳しく知りすぎているくらいの話だったが、騎士に襲われたから戦ったなんてことが言えるはずもなく、アリスは兵士の話に同調する。


そのときだった。


アリスは不意に腕を誰かにつかまれた。そのことに驚き振り返ってみるとクリスが怯えていて今にも泣き出しそうな表情をしていた。

ま、まずい……


怯えたクリスが今にも何か言い出しそうに感じたのだ。怯えているときに落ち着く方法、自身の経験で考えたときに抱きしめるのが一番いいとアリスは判断した。

アリスは慌ててクリスを抱きしめる。


「あ、悪いな。恐がらせてしまったか」

「ええ、そうみたい」


兵士はクリスの様子を見て恐がっていると思ったらしい。

すまなそうにしている兵士には申し訳なかったものの、アリスにとっては都合がよかったので話を合わせることにする。


「これ以上彼女に話を聞かせるのは酷だから私たちはそろそろ失礼させてもらってもいいかしら」

「ああ、それもそうだな」


クリスが震えている様子を見た兵士はアリス達が人を殺せないと判断したのだろう。

道をあけて馬車が通れるようにしてくれた。

クリスもアリスが抱きしめていると徐々に震えは収まってきており、なんとか歩けそうだった。

そして先にカルヴァンが馬車を先導して通過し、その後からアリスとクリスが再び馬車に乗り込もうとしたときだった。


「あれ?アリスじゃないか」


そこには一人の男性が立っていた。


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