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2-7 分岐点
アリスは準備に取り掛かった
メモのとうり王都の状況報告にはローラが担当し、ベルが情報収集、販売はウィリーが任され、必要に応じてアリスへ報告してもらうことになった。
残念ながら入浴場はクリスが不在となるため、せっかく開始した入浴場はその月の会員費は無料とし、入浴場のみ一時休止となった。それでも貴族からの要望があったため、入浴場以外は運営することにはなったが。
こうして一行はプロヴァン領のマーセルへと出発した。
メンバーはアリス、クリス、カルヴァンの3人。
道中はいたって平穏だった。プロヴァンまでは平坦な道が続いており、途中に何度か森に入ることや町で一休みすることもあった。
そして、この日も何事もなく進むかと思われた3日目、道中をしばらくの進んでいると突然声をかけられた。
「止まれ!」
前方から男達が現れると街道を塞がれてしまい、アリス達の馬車は停止する。
何事かとアリスがクリスと馬車を降りて現場へ行くと、護衛兼御者のカルヴァンが身構えている。
そして、その先を見てみると、なにやら武装した集団がいた。
「なにか御用でしょうか」
「おう、お嬢さんがリーダーさんかな?」
「ええ、そうですが何か?」
「荷物をすべて置いていってもらおうか」
どうやら彼らは盗賊らしかった。
明らかに武装が充実しているのでただの盗賊ではないもののがやっている行為で言えばその名称で十分だった。
「あら、困りましたわ。これらからプロヴァン辺境伯へお会いしに行くだけでしたから特に対した荷物はないのですが」
「そんなこと知ったことか。見た目からしてどこかのお嬢さんか。もし金目のものがないのであれば身代金という手ありそうだな」
盗賊らしはへらへらと笑いだした。
値踏みするような目つきにアリスは嫌悪感であらわにするする。
「あら、その金目の判断基準は何なのかしら」
「そんなの決まっている。宝飾品のことだよ」
残念ながらアリス達はそんなもの持ち合わせていなかった。
そもそも話し合いに向かっただけなのにわざわざ荷物を重くする理由もなかった。
「そんなの私たちは持っていませんよ」
「だったら身代金になるかな。まあ、それができないならあんた達を売り払うかもしれないが」
どちらにせよ。アリス達にとって到底選択できるようなものではなかった。
「盗賊騎士め」
アリスは男達を睨みながら小声で呟いた。
騎士とってもすべての騎士が守ってくれるような存在ではない。自身の力を悪用する存在もいた。
それが誇示する程度ならまだ笑って流せるが良心や道徳心のないものが騎士になればそうなってしまういい例だった。
「盗賊騎士?」
「騎士の称号をもっているのに平時に街道で盗賊行為をしている集団よ。行商や旅人をこうして襲っているのよ。抵抗すれば皆殺し、抵抗しなくても略奪したうえ強姦や身代金目的で拘束されるのよ。下手な盗賊よりも訓練されていて強い分たちが悪いわ」
アリスが毒づきながらクリスに説明した。
彼らが騎士だと知りクリスは驚きを隠せないようだった。
「ごちゃごちゃ言ってねえでさっさと決めな」
明らかにアリス達が絶望的な状況だと誰もが思った。
なんせ相手は盗賊になっているとは言え騎士。力の差は歴然としていた。
そして逃げるにしてもメンバーや体力を考えても到底逃げ切れるとは思えない。
どうみても絶対絶命だった。
これまでなの。
アリスは悔しそうな顔をする。
密集して前方では5人1列となって道をふさいでいる男たち。
クリスは庇おうとし、カルヴァンも身構えているものの戦っても勝てる見込みなどなかった。
「何笑って嫌がる!」
そんなとき、盗賊のリーダーらしき人が突然怒鳴った。
男たちはなおもじりじりと近づいてくるが、その言葉に反応してアリスはクリスの顔を見てみると笑っていた。
その表情はクリスか考えがあることを示してることを知っていた。
クリスは何を
アリスがそう思ったとき、クリスが何かを呟き始める。
その後起こった出来事をアリスは見ることができなかった。
ただひとつわかっていたこと。それは灼熱の炎を盗賊達に放ったであろうことだけだった。
耳から聞こえる絶望に満ちた悲鳴と徐々に臭ってくる何かが焦げる臭い。
それだけで何が起こったのか判断するは十分だった。
クリスに庇われながら、アリスは大人しくしていた。
いや、そうするしかできなかった。
覗いてしまえばその先に見えているのは恐らく地獄絵図とも思える光景だろう。
その様子を見届けているクリスの後姿を見ながらアリスはクリスの服を強く握って待った。
しばらくして炎はおさまった。そこには鎧の他に黒く固まりと一部に白いものが見られる物体が残り、
焦げ臭いにおいが立ち込めていた。
アリスが知ることができたのは何が起こっていたのか。
ただそれだけだった。




