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2-6 一休み

社交パーティー当日。


アリスは特別扱いとして参加させられた。

そして、アリスは参加してからようやく嫌な予感の意味を理解することになる。


「なによ、これ」

「あ?ああ」」


アリスが睨むとエリックは苦笑いをかみ殺したような表情をした。

アリスが驚いたのも無理はなかった。今回のパーティーは参加者ほぼすべての人が結婚した人達が集まる舞踏会だったのだ。

つまり公式の舞踏会。そこではエスコートする男性も必須となるのだが、そのエスコートはエリックがするつもりらしい。

そこから得られる結論と言えばエどう考えてもリックの婚約者と捉えられても仕方ないということだった。

もっとも、それはローラン王国では平民のアリスにとっては明らかに場違いな身分ではあったのだが。


「どういうことか説明して下さるかしら」

「アリス様。まあ落ち着いて」


エリックの傍にいるだけでも注目が集まってしまうのだ。アリスは仕方なく苛立ちを抑えながら言葉に気をつけながら問いかけた。

もちろん、周囲に気付かれないように表情にも気をつけながら。


「これが落ち着いていられるはずがないじゃない。これって公式の舞踏会よね」

「ええ、そうですけど」

「じゃあ、何で私が参加しているのかしら」

「そりゃ、他の貴族のご令嬢と一緒にいたら婚約と勘違いされるからだよ」

「え?」


アリスは言っている意味がわからずエリックの顔を見た。


「だってそうだろ。こういった公式のものでの参加で未婚の女性をエスコートするとなれば下手したら婚約の話になりかねないじゃないか。その点、アリスであれば身分差がはっきりとしているから周囲の圧力もないし、無理やりもない。しかもロジャース商会のご令嬢」

「いや、褒めているのか貶しているのかどっちなのよ。それにロジャース商会は今は関係ないでしょ」

「当然、褒めているのさ。だから今回だけは頼むよ」

「は、はあ」


どうやら、エリックにも何やら事情があるらしい。

アリス自身その気持ちがわからないでもなかった。貴族といった権力者になれば政略結婚は当たり前。もし、純愛をしたいのであれば屋敷の庭で隠れて会うような不倫行為でしかできない場合も珍しくなかった。

今回エリックがアリスのお願いした理由。それは政略結婚逃れだったのだ。公式で女性がいるとわかれば相手も諦めるだろう。そんな安直な考えだったらしい。もっとも、それを了承した陛下や王妃に疑問を感じないわけではなかったが。エリックの言葉から推測するとロジャース商会という言葉で説得したことは容易に想像がついた。

そして、今回ばかりは本当に申し訳ないと思っているらしい。普段は陽気なエリックが言葉とは裏腹に真面目な顔つきになっていることからもわかった。


「仕方ないわね」


アリスは周囲にわからないようにため息をつくと笑顔をエリックに向けた。


「今回だけよ」

「恩にきる!」


こうして、無難に舞踏会を終えたのだが、エリックと一緒にいたこともありで肝心の資金調達はまったく進まなかった。

落ち込みながら帰路に着いたアリスだったが、エリックも約束は守る気はあったらしい。

後日、感謝の手紙と一緒に不足金額を記述する紙を渡された。

そのおかげもあって無事に資金調達はできそうだったが、舞踏会でのエリックの姿を見てアリスは改めて思うのであった。


幸せなのは下手に富や権力を持った貴族ではなく、何のしがらみもなく平凡に過ごせる平民なのかもしれない。と。


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