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2-5 青空の涙

ようやく頼んだものを買ってきたカルヴァンが慌てている。

原因は他ならぬアリスとクリスがだった。

目を潤わせて涙の後があるクリスと顔を真っ赤にしたアリス。

この二人が抱きしめて見つめ合っていたのだ。


我に返ってアリスが周囲を見回すと、ニヤニヤしていた人やカルヴァンの行動にブーイングしている姿がちらほらと見える。

よく考えなくても白昼の公園で大声を上げてしまったアリスや泣き出していたクリスがいたら誰だって目にとまってしまうだろう。

そういう意味では寸止めしたカルヴァンはナイスタイミングだったわけだが、目を点にさせているカルヴァンの姿からその意図がなかったことがうかがえる。


「し、失礼しました!」


慌てて再び去ろうとするが、去ってどうしろと言うのだろうか。

気付いてしまった状況で観客がいる中で先ほどの続きができるようなアリスではなかった。

むしろ恥ずかしくて居た堪れない感情がこみ上げてくる。


「よ、余計な気遣いはいわらないわ。それに気を使うにしても手遅れすぎよ!」

「す、すいません」


誤魔化すためにアリスは顔を膨らませてカルヴァンに言ったがカルヴァンは動揺してオロオロするばかり。

アリスはちらりとクリスを見てみたが、クリスは状況を飲み込めていないのかキョトンとしていた。

どうやらクリスはまだ周囲の視線にも気付いていないらしい。

どうしたものかとアリスが困惑していると、不意に笑い声が聞こえた。


「ふふ」


そして、声の聞こえた方を見てみるとクリスと目が合い笑い始めた。


「あははははは」


その様子に呆然としてしまったアリスだったが、クリスの屈託のない笑顔を久しぶりに見れたことが嬉しかった。

そして、さきほどまでの呆然としていたアリスも自然と笑顔になって一緒に笑った。

カルヴァンは状況がわからず苦笑いしているが、この状況とクリスの笑顔を作った当事者なのだ。

感謝しないといけないかなとアリスは思うのであった。


「さて、気分転換も終わったし、そろそろ帰りましょうか」

「そうですね。帰りましょう」


こうして、アリスとクリスは一緒に笑いあった後、笑顔で屋敷へと帰宅することにした。

周囲の観客は少々不満げだったが、目的を達成した今、彼らに餌を与えるほどアリスは寛大ではなかった。

クリスの表情にはどこか穏やかさを取り戻しており、もはや心配はいらなそうであった。。


なお、アリスの受難はその後待ちうけていた。

突然会議をほっぽりだして、外出をしてしまったのだ。それもそれなりの時間を使って。

そのため帰宅したときには日中の仕事がほとんど片付いていなかった。


「こ、これを今からやるの」


残った書類の山を見てアリスは思わず悲鳴をあげた。


「お疲れでしたら翌日でもいいかと思いますよ」


ローラはアリスの様子を察してかそう言ってくれたが翌日になればさらに仕事が増えていくのだ。

明日2倍の仕事をこなすか今日のうちにできるだけこなして明日の仕事を減らしておくか。

当然ながらアリスに2倍の仕事をこなせる自信などなかった。

肩を落としながらも仕事に手をつけていった。


それからどれくらい時間が経っただろうか。

意を決して仕事に取り掛かったもののアリスは想像以上に仕事が捗らなかった。

原因は他ならぬクリスとの出来事だった。


もしあのまま、カルヴァンが割り込んでこなければどうなっていたのかしら。


仕事をしながらそのことが頭から離れないのだから捗るはずもなかった。

なお、クリスは仕事分をきっちりと時間内にこなしたらしい。

さすがにベルから受け取ったときはローラもアリスも困惑するしかなかった。


「こういうとき、クリスが羨ましい」


心の底からアリスはそう思ったが思ったところで自分の仕事が片付くこともない。

明日が少しでも楽になればと黙々と仕事をこなしていった。

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