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2-4 噂
主要取引先と相次いで面会をしたアリスだったが、無駄に終わった。
それとなく、最近の噂について尋ねてみたものの、特にそれといった情報もなかった。
それにアリスを疑う様子はまったくないため下手に話題にすることもできなかった。
しかし、ウィリーからの話が事実なのであればいずれ使用人などから徐々に貴族へ噂が届く可能性も否めない。
どうしたものかと悩みながらもいつものように会長室で書類の確認をしていたとき、ローラがノックもなく慌てて会長室へと入ってきた。
「ローラ、どうしたの」
「お、お客様がこられました」
「あら?今日はその予定はなかったと思うけど」
その程度のことで慌てる必要があるのだろうか。
そう思いローラの行動にアリスは首を傾げた。
「で、相手は誰なの?」
「エリック様です!」
そのローラの返答で納得がいった。
そういえば一緒に踊っていたのがエリックだった。
また、よくローラを見てみればどことなく挙動がおかしかった。
察するにそのことも理由なのだろう。
「わかったわ。ローラ、エリックを応接室に案内して。私もすぐに向かうわ」
「か、かしこまりました」
そう指示をだすとローラは部屋を退出していった。
そしてその様子を眺め終えたあと、アリスは呟いた
「そこまで慌てることかしら」
ローラにしては珍しく、ドアを開けっ放しだった。
そして急いでエリックを迎えに行ったようだ。
「もしかしたら、身元がばれるかもしれないと思ったのかしら」
その使用人としての失態後の状況を眺めながら、エリックにローラの相手をさせたことを少し後悔した。
少し一息つき、ローラが知らせに来てからアリスも応接室へ入った。
「やあアリスさん。お久しぶり」
「お久しぶりです。前回はお世話になりました」
「いいよ、ほかならぬ君のためだからね」
そういうとエリックは笑みを作ってた。
「そうね、助かったわ。で、今回の用件は?」
アリスがそういうとエリックが顔つきが変わった。
「噂の話、もう聞いた?」
「さあ、どんな噂のこと」
内容がわからなければ判断しようがない。
アリスはそれとなくエリックに尋ねてみた。
「ローズ商会がスパイらしいという噂さ」
「ありえない」
エリックの言葉にアリスはすぐに否定した。
「ああ、わかっているし信じているよ。でもそこのとは伝えておこうと思ってね」
「ありがとう。でもそれらに対して有効な手立てなんて」
「なるほど、思いつかないということか」
「ええ、まあ。一応クリスには頼んでいるんだけど貴族に対しては下手に話せば返って広まりそうだし」
「ああ、そうだね。賢明な判断だと思うよ」
「じゃあ、どうすれば」
「そうだな・・・」
そういうとエリックは考え出した。
そして、ほどなくして何かを閃いたのかニヤリとして言葉を続けた
「この件は任せてくれないか」
「エリックに?」
「悪い話じゃないと思うよ。ついで噂がどこから出たのかも調べてあげるよ」
「で?その見返りは?」
「やだなあ、そんな見返りなんて」
「なら信用できないわ」
この手の話で見返りがない方がおかしかった。
そういう言葉を信じてしまえば後で何かいわれても断れない状況になることをアリスは懸念したのだ。
「まいったな。じゃあ、社交場1回でどう?」
「社交場?」
「ああ、詳細は成果報酬でいいかな」
「そうねえ・・・わかったわ」
それくらいでローズ商会の危機がなくなるのであれば問題ないだろう。アリスはそう思い了承した。
「じゃあ、約束ね」
そういうとエリックは席を立ち、屋敷を後にした。




