表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/104

54

2-4 噂

入浴場に関する計画を練ること数日。

今日もノックする音が聞こえてきた。入ってきたのはローラでいつもより嬉しそうな表情だった。


「あら、何かいいことでもあったの?」

「はい、皆さんに配った。石鹸ですが評判が思った以上に良くて」

「そうだったの。それはよかったわ」

「はい、最初は貴族の方だけのものと思っていましたが」

「そうね。私もそう思っていたわ」


使用人に渡してすぐ喜ばれるということはそれだけローズ商会の石鹸が有名になりつつあるということなのだろうか。

そういう意味では販売所の効果が出てきたのかもしれないとアリスは改めて思った。

そして、しばらく雑談をしていたとき。


ノック音と共にクリスが入ってきた。

この後、クリスから進捗報告を受ける予定があったのだが、その様子は普段よりも慌てており、後ろには付き添いらしき人影もあった。


「失礼します」

「やってきたのね。あら、後ろにいるのは」

「彼はローズ商会で販売店の店長をしているウィリーです。大事なお話しがあるとのことで連れてきました」

「ええ、名前は知っているわ。ついでに言うと評判もね。その大事な話とは何なのかしら」


アリスがにこやかに言うとウィリーに向かって言った。ウィリーは嬉しかったのか顔を赤らめている。

そりゃ、そうだ。先日あったばかりなのだ。覚えているに決まっている。

ただ、視察ではクリスは一緒じゃなかったために覚えていないと思い、再度役割を含めて紹介したのだろう。

その辺りはクリスに抜け目がなかった。

しかし、赤らめた表情はすぐに慌てた表情に変わった。


「大事な話とはローズ商会の噂についてです。これまでであれば噂と言っても多少のことでしたら聞き流していたりするのですが、今回の件はかな悪質な噂で一応お伝えしようと思ったしだいです」

「で、その噂の内容は」

「ローズ商会がガイア帝国のスパイなのではないかという話です」

「・・・」


アリスはじっとウィリーを見た。クリスやローラも同様だった。


アリスの頭の中が真っ白になった。これまでガイア帝国から入荷しているものはあったがガイア帝国と繋がりなどない。

思い当たる点などまったくなかったのだ。


「その噂はどこからでしょうか」


今度はローラがウィリーに聞いた。


「先日ご贔屓にしてくれているお客さんから話を聞きました。一応確認のために、販売員の人にもそれとなく何か噂を聞いたことがあるかと聞いてみたところ、同様の噂を聞いたことがあるとのことでした」


どうして視察のときに気づけなかったのかとアリスは悔やんだ。そのときだった。


「流言」


クリスが思い付いたポツリと呟く。

突然のクリスの言葉に室内にいる全員の注目がクリスに集まった。

しかし、クリスからはそれ以上の言葉は発する様子はない。何か思い当たることでもあるのだとうかと思い、アリスができた範囲で返してみる。


「流言・・・なるほど。誰かがローズ商会を蹴落としたい人がいるということね」

「おそらくそうかと思います。だた、今の情報だけではではなんとも」


その返答からクリスにも確証がないことがわかった。

そのことがわかり、アリスが指示を出す内容は決まった。


「そうね。さっそく調べてみましょう。今回の調査はおそらく私は直接動かないほうがよさそうね。クリス、ウィリーは噂の出所を可能な限り調べてちょうだい。そしてできる限り火消しの話題を作ってちょうだい」

「わかりました。早急に対応します」

「噂は初動ですべてが決まるわ。くれぐれもよろしくね。そしてローラ、あなたには貴族方面のお願いしたいことがわるわ」

「どういったことでしょうか」

「それは後で話すわ。メアリを呼んできてちょうだい。今すぐによ」

「わかりました」


こうしてクリスとウィリーが退出していった。


アリスは頭を抱えた。こういう噂はやっかいなことををアリスは知っていた。

学生時代のエリックとアリスの関係に関する噂、カルロスでのクリスに対する裏切りの噂、そして今回の噂。

人の噂など信用できたものではない。しかし、もっともやっかいなのはそこではない。

その噂を話している当人達がまったく悪気がないことなのだ。

悪気がないから知り合いに話し、そこに自己解釈をつける。そして話に尾ひれがついてその後とんでもない話になっていく。それも当人に直接言っているわけじゃないからと自身は相手を傷つけているとも知らずに。

『悪気はないから』『噂を流される奴にも原因がある』噂話の好きな人はその言葉を盾に主張するからこっちから何を言ったって無駄なことをアリスは知っていた。そして、そのことに対して真っ向から反論しても無駄なことも。

何にせよ、その件はクリスに任せたのだ。

アリスは気を取り直し、ローラと打ち合わせをする。これで貴族が取引を自粛されてしまってはローズ商会の存続に関わるのだ。

幸い、クリスがベルに事前に調べさせていたABC分析の結果がある。アリスがやるべきことは主要取引先だけでも繋ぎとめておくことだった。


「ローラ、今すぐ出発の準備よ。あと、メアリに頼んでこのリスト上位の貴族に順に面会の予約を取ってちょうだい」


アリスはそう言うと急いで準備を始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ