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2-3 嵐の前の静けさ

クリスを注意深く見守り始めてから数日。

ローラン王国の王都オルランドへ本拠地移転後はこれまどおり変わらなかった。

工房での指示や会計処理はもっぱらクリスがこなし、貴族への営業はアリスがこなしていた。

あれからローラには極力これまで通りに過ごしてもらうことにした。

下手に隠れて過ごしてもらえば返って怪しくなりやすい。それなら開き直って堂々と生活をしてもらった方が案外見間違いと考えて特に支障もなく過ごせると判断したからだ。現にこうして今もローラを会長室に呼び手伝ってもらっていたし問題らしきことも起こった形跡はない。

むしろ問題なのはクリスのほうだった。

今日もクリスの髪型に変化があった。


「きょ、きょうはツインテールなのね」


ツインテールは整った小顔で若干の幼さが求められるなかなかハードルの高い髪型だった。

なのにクリスは見事に似合っている。


「そうですね。似合っていますね」


アリスの気持ちを察したかのようにローラが呟く。そして目が合いお互いに苦笑いした。

最近クリスの女性らしさがますます磨きがかかってきている。

ポニーテール、ツインテール、休日は髪を束ねずストレート。女性がおしゃれに気にする理由などひとつしかなかった。


これは男ね?好きな男ができたのね?


そう思い、アリスはクリスの様子を注意深く見てみたり、ローラに調べてもらったりしたものの、それらしい影すらなかった。

むしろ結果は清々しいまでに仕事一筋。しかしそれだと説明がつかないのだ。

もしかしたら、クリスは巧みに隠している可能性だってある。

クリスに好きな男がいればアリスにとっては大問題だった。なぜならクリスが仕事をやめたいとか他の商会にいってしまう可能性だってあった。そんなことを今のローズ商会が許可できるはずもない。

そう、断じて私情ではない。クリスをとられるのが嫌とか相手を知りたいとか微塵も思っていない。


「どうやって調べたらいいのかしら」

「そうですねえ、だったらベルさんに頼んでみてはどうですか」

「なるほど、部下に対してなら案外そう言った話もできるかもしれないわね」


ベルトはカルロスからオルランドへ移動したときに話したくらいだったもののクリスに尊敬の念を持っている感じがした女の子だった。

アリスはローラに頼み、早速ベルを呼ぶ。

そしてベルが緊張した面持ちで恐る恐るとやってきた。


「ただ今参りました」

「よくきたわベル。それとそんなに緊張しなくてもいいわよ」


ベルが緊張しすぎないように気づかいの言葉をかけ、話を続ける。


「ひとつお願いしたいことがあって呼んだの」

「何でしょうか」

「非常に重要な任務だから決して当人には悟られないようにして調べて欲しいの」

「え?」


ベルの表情から緊張と不安そうな表情をしているとしていることが伝わる。

アリスはベルが緊張しすぎないように微笑みながら話をすすめる。


「大丈夫。これはあなたにしかできないことなの」

「私にしか・・・できないこと」

「ええ、最近クリスの様子に変化があるような気がしない」

「そういわれれば・・・なにか髪型が変わっていたりしますね」

「そう!そうなの。で、その理由を知りたいと思ってね」

「だったら私知っていますよ」


アリスの言葉にベルはきょとんとした顔で答えた。

その言葉を聞いてアリスは思わず立ち上がる。


「知っているの!だったら理由を教えてちょうだい」

「ひっ!」

「あ、アリス様。まあまあ落ち着いて」


アリスの食い入るような行動にベルが怯えてしまったことに気づいたローラがアリスを宥めた。


「そ、そうだったわね。ベル、どういう理由だったの?」


ベルはまだ怯えていたものの小声で話し始めた。


「私も以前、気になってクリスさんに直接聞いてみたんです。そしたら」

「そしたら?」

「髪の毛をちゃんと結んでいないと仕事の邪魔になるし、結んでいた方が気が引き締まって仕事がしやすいと言っていました」

「し、仕事が理由」


アリスは肩をうな垂れがっくりとした。


「わ、私の洞察力ってこんなものなのかしら」


誰にも聞き取れないくらい小さな声で呟いた。

そして安心したような残念なような微妙は表情をしていると、心配そうにベルがこちらを見ていることにアリスが気づいた。


「ねえベル」

「はいなんでしょうかアリス様」

「私のもとでも補佐役としても働かない」


ベルは驚いた表情をした後に嬉しそうな顔へと代わって言った。

アリスにとっもベルのように素直に聞いていればこんなに気にする必要なんてなかったのだ。だったら仕事でも同じようなことがあるのかもしれない。それにまたクリスを調べてもらうこともあるだろう。アリスはそう考えていた。

それにクリスの専属ではあったため微妙な立ち位置だった。それが会長から正式に認められたことになる。それはベルにとっても悪い話ではなかった。


「ありがとうございます」


こうしてベルがクリスとアリスの雑務や伝達といった仕事をこなす役割を担っていくことになった。

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