47 黒髪少女は空気を読みすぎる 前言撤回
2-2 予期せぬ出会い
「ロザリー。私がそんなに信用できない?」
「いえ、そんなことは」
「ではどうしてもう少し早く教えてくれなかったの?」
「それは・・・」
「ロザリー。よく聞きなさい。私は信用できる人しか傍に置いておくつもりはないの。私がロザリーをロジャース商会の使用人のままにして私の従者にしなかったのはそのためよ」
「では」
「ええ、今日をもってロザリーはいなくなってもらいます」
ロザリーを信用していなかったなんて嘘だった。だったら最初からロザリーにオルランドへ来てもらうはずがない。
冷静になればわかることだったがロザリーは気づいていないのか顔を俯けた。
「アリスさん!」
クリスが驚いた表情でアリスに声をあげた。
クリスが・・・気づいていない?
アリスはそのことに驚いたが今は釈明している場合ではない。
アリスはクリスを目で訴えるようして見た。
「クリス、少し黙ってて」
「でも」
「いいから黙って最後まで話を聞いて」
アリスはクリスを宥めるように言うとクリスは黙った。
いつものクリスであれば状況に気づいてむしろ笑いを堪えているくらいだろう。
メアリが反論するかもしれないと身構えておいてよかったとアリスは安堵した。
「ロザリー。あなたにはその覚悟がある」
「・・・はい、アリス様がお望みとあれば」
「あら、よかった」
「メアリ、あなたはどうなの」
「・・・私は、ロザリー様に従います」
「それでけっこうよ。決まりね」
重い空気が場を支配し、誰もアリスに反論する人はいなかった。
少し想定にずれがあったもののこれで環境は整った。
あとはアリスが語ればすべてまるく収まる。
そう思い、アリスが一息つくとローラが動いた。
「それでは準備がありますので」
ロザリーが部屋を退出しようとする。
「待ちなさい。話はまだ終わっていないわよ」
「・・・はい」
ロザリーは立ち止まる。
このまま退出されてはアリスが困るのだ。
立ち止まったことにアリスは一安心し、今度はクリスに問いかける。
「クリス。これは命令よ。ロザリーいなかった。いいわね」
アリスはニヤリと笑みを作りながらクリスに言う。
クリスは一瞬呆然としていたがアリスが笑みを作ったことでやっと察してくれたらしい。
クリスの表情から笑みが見てとれた。
「ええ、決まっているじゃない。今日をもってロザリーはいなくなった。そしてここにいるのは私、クリス、ローラ、メアリ。依存はないわね」
「はい」
その言葉を聞いてクリスが即答した。
アリスは笑みを浮かべ、ローラとメアリを見る。
「あなた達二人も了承したのだから問題ないわよね」
「でも」
ローラがアリスに反論しようとする。
そんなことアリスは既にお見通しだった。むしろそのための前振りだったのだ。
アリスは怒っているふりをしながらローラを睨んだ。
「あなたは私に嘘をつくつもりなの」
「いえ、そんなつもりは」
「なら命令よ。今日をもってローラと名乗りなさい。ロザリーという名前は私をだましていた罪として使用することを禁止します。」
やった!そう、私はやったのだ。ローラを騙し意図的に反論できない状況を作った。
オーウェン子爵が冤罪かなんて関係ない。私はローラを信じる。それで十分じゃない。
アリスは満足げに驚いているローラやメアリに微笑みかけた。
するとクリスが突然アリスに話しかけてきた。
「アリス様」
「何よクリス」
「もうこれ以上、下手な芝居を打たなくてもみんな理解していますよ」
クリスに言葉にアリスは驚き思わず本音がもれる。
「え?なんで芝居と・・・じゃなかった。芝居じゃないわよ。私は本気なんだから。だからローラはこれまでどおり働きなさい。いいわね」
「はい、アリス様」
ローラは安心したのか嬉しそうに頭を下げ、ほっとしたのかメアリは泣いていた。
け、結果オーライよね?それにしてもどこから芝居だとばれていたのかしら。
もしかして最初から?クリスの反論も計算の内?私ってそんなにだいこん役者だったの!
そう思うと顔が赤くなるのを感じた。そしてちらりと見てみるとクリスは満面の笑みを浮かべている。
人の気も知らないで!
クリスに様子に苛立ったが妙な違和感を感じた。
・・・あれ?クリスはこんなちゃちゃを入れる性格だったかしら。
これまでのことを考えればむしろ腹が立つくらいニコニコしながら見ていたような気がするんだけど。
そういえば最近のクリスは何だか仕事の余裕がなくなっていたような。
オルランドの旅路も以前なら手品を使わなかったと思うんだけど。
アリスは再びクリスをちらりと見た。
今日のクリスはポニーテールをしていたがこれまで低い位置で留めていたのを高い位置に変えていた。
最初は髪型を変えてたからイメージが変わったように見えたかもしれない。
アリスはそう割り切って考えていた。
それだったらこの違和感はなんだろう。
本当に心配すべきなのはクリスのほうなのかもしれない。
アリスはクリスを注意深く見守ることにした。




