45 私は過去を見ない
2-2 予期せぬ出会い
そして出発当日。
馬車はアリスとクリスの安全を優先に考えロジャース商会の馬車が使われることになった。
そしてその馬車のもとへアリスが向かうと既にクリスが待っていた。
しかし、周囲を見回してもローラの姿が見当たらない。
「来ていない」
アリスは落胆した。
この後、工房によって職人3名と合流、その後孤児院から3名が来るのであれば追加で合流することになっている。
もしかしたら準備で遅くなっている可能性もあったもののその後の予定を考えれば、来るかもわからないローラのために待つことはできなかった。
ローラが出した結論なのだ。だったら尊重すべきだろう。
アリスは断腸の思いでクリスと一緒に馬車に乗って屋敷を出た。そのときだった。
屋敷の門の外側で待つ女性がいた。
「え?もしかしてローラ」
アリスは今更気づいた。よく考えれば返答は出発まで。ローラが出発当日に決めて待っていてもなんらおかしくなかった。
それにアリス自身準備でずっと忙しかったためにローラが言うタイミングがなかった可能性だってある。
そのことを考えればアリスは最初から出発の日時と場所まで指定しておくべきだったのだ。
私の断腸とは何だったのか。
そんな感傷に浸っている場合では無かった。アリスは慌てて馬車を止めさせ、馬車を降りて急いでローラの下へ向かった。
「アリス様、私も連れて行ってください」
ローラはそういうとアリスにニコッと微笑んだ。
「ありがとうローラ。あなたのことは必ず私が守るから」
アリスはそう言うとローラを思いっきり抱きしめた。
ローラは突然抱きつかれて驚いていたが。アリスに抱きしめ返してくれた。
こうして一行は3人になり、職人、孤児院の人たちとも合流した。
アリスは孤児院の人会うのは初めてだった。マリアに紹介され合流したのは、ベル、カルヴァン、ウィリーという人物だということはわかった。本来であればもう少し交流を深めるべきなのだろうが、これから長旅が待っているのだ。
お互いを知り合うのであれば旅路でも十分だと判断し、早々に出発をした。
そして出発後、アリスの想定どおりとなった。
クリスが馬車酔いし、何度か休憩を挟んだり歩いたりすることになったのだ。
そして、その休憩や歩いたりする合間を活用して3人(ベル、カルヴァン、ウィリー)についてアリスは多少知ることができた。
ベル、12歳女性。彼女は茶色の髪をしたしっかり者の女の子。3人の中ではリーダーの様ではあったものの、どちらかと言えば他の2人が男の子であったため、二人が対立したときの判断役としてそうなったようだった。実際統率というよりもなだめ役らしい。能力が優秀だからリーダーになるわけでないことをアリスに理解させてくれた反面、能力も優秀なリーダーを目指してきたアリスにとっては心境が少し複雑だった。
カルヴァン、12歳男性。正義感の強い男の子。もしかしたらメンバーの中では一番孤児院のことを考えているのかもしれない。その思いは強く曲がったことが大嫌いなようだが少々考え方が単調なため、人に合わせるウィリーとはしばしば意見で対立することもあるようだった。
ウィリー、12歳男性。他の二人よりも大人しいものの事なかれ主義。ただ、波風をあまり立てないため敵も少ないようだった。ただカルヴァンからはその流されてしまう部分で対立することもあるようだった。ただ、その様子からただ意思を持っていないのではなく合えて意思を持たないよううまく立ち回り、メンバーが余計な敵を作らないようにしているようだった。
ただ、こうして知ることができたのはクリスのおかげだった。
水の心配は要らず、火を起こすのに時間がかからない。それだけで食事の作業が大幅に短縮されゆっくり話す時間ができていた。
また、このメンバーでは女性が多かったこともあり、水浴びなども含めて貴重な水を用意できるクリスは貴重な存在だった。
そこ頃になると、手品で必要となるタネはどう頑張っても用意できないことは明白であったため、アリスはもうクリスができることは魔法だと確信した。
「羨ましいな」
クリスが水を準備する姿を眺めながらアリスはそう呟いた。
「ほんとそうですね」
予期せぬ返答に驚いて声のした方向を見ると声の主はローラだった。
「私も同じようなことができるようになりたいです」
どうやらローラも同じ考えのようだった。アリスも思わずうんうんと頷いたいた。
「同じようなことをすれば私も水が出せるようになるのでしょうか」
「・・・いや、それは無理じゃないかしら」
アリスはそういうとローラを見て苦笑いした。
「ですよね」
どうやらローラも同感らしい。アリスに苦笑いを返してきた。
そんなことがありながらもアリス一行は無事にローラン王国の王都オルランドへ無事到着した。




