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43 黒髪少女は空気を読みすぎる

2-2 予期せぬ出会い

それから数日後。

アリスは父ウィリアムから呼び出しを受けた。


「失礼します」

「アリスか入ってきなさい」


入室すると父ウィリアムが笑顔で見てきた。

しかし、アリスはその笑顔に戸惑った。父ウィリアムが仕事で笑顔をみせることはあまりない。

何かあったのだろうか。アリスは身構えた。


「ご用件は何でしょうか」

「ああ、そうだな。最近、あのクリスティーヌの様子はどうだ」

「おかげさまで順調に回復しております。それに取引先の貴族が停止前からある程度まとめ買いをする方も多かったおかげで取引先をほとんど失わずにローズ商会も無事に再開ができ以前の調子を取り戻しつつあります」

「そうか、それはよかった」


父ウィリアムは笑顔のまま頷いた。

もし、父が笑顔になるとしたらこのタイミングだろう。

ではなぜ最初から笑顔だったのか。アリスは首をかしげた。


「実は大事な話がある」

「何でしょうか」


どうやらクリスの話は前ふりだったらしい。

先ほどまで笑顔だった父ウィリアムの顔が急に険しくなった。


「クリスティーヌをこれ以上匿いきれそうにない」

「そうですか」


そのことはアリスもわかっていた。

ローズ商会が営業再開したのだ。しかもローズ商会の事務所はロジャース商会と同じ建物内にある。

カルヴァート商会から知らぬ存ぜぬで逃げ回るにしても限界があった。


「では、これ以上迷惑をかけないためにローズ商会がローラン王国の王都へ本拠地移転をしようと思うのですがよろしいでしょうか」

「ああ、それがアリスの望みだったな。やむを得ない了承しよう」


父ウィリアムは渋い顔をしながらも了承してくれた。

婚約の件でうやむやになってしまったが、父ウィリアムがローズ商会の本拠地を王都オルランドへ移転させたくなかったのは、アリスがカルロスから出て行くのが寂しかっただけなのかもしれない。

その渋い顔から悲しそうな表情が見て取れた。


「ありがとうございます。ただ、私だけでなくクリスも準備があるかと思いますので、早々に話しておいたほうがいいかと」

「いむ、そうだな。せっかくだ、アリスもクリスが来るまでここで居て待っていなさい」

「わかりました」


父ウィリアムは近くにいた秘書らしき人に伝えると秘書はどこかへ向かっていった。

そして、父ウィリアムとアリスだけになった。


「そうして会長室に一緒にいるのは久しぶりだったな」

「ええ、そうですね。あのときはアラン兄様もいましたね」

「ああ。そしてアランがアリスに勉強を教えていたな」

「そうでしたね。それももう何年も前のことにはなりますが」

「ああ、そうだな。アリス、立派になったな」

「ありがとうございます」


この会長室は当時のときから内装は一切変わっていなかった。アリスは改めて部屋を見回してみると、当時の記憶が再び思い出していく。


この部屋をちゃんと見たのはいつ以来だっただろうか。大学生活を終えて、仕事を始めるようになってからは忙しい日々が続いた。当初は父ウィリアムと一緒にいることを目的としていたこともいつの間にか大陸一の商会を目指すようになっていた。

よく考えてみればカルロスに戻った・・・いやクリスと出会った日からすべてが決まっていたのかもしれない。

こうなることも含めて。


今生の別れということではないはずだったが、本拠地がオルランドへ変われば会う機会はほとんどなくなってしまうことにお互い理解していた。今は二人とも商会の会長。会長が事業おいて会いにいくには王都オルランドとカルロスの距離は少し遠かった。

そしてそのことをアリスも父ウィリアムも理解していた。

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