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2-1 はじまりはいつだって理不尽(2回目)

アリスはクリスの復帰を喜んでいた・・・はずだった。


「何よ、これ?」


アリスはクリスが復帰して仕事に支障がでないように仕事も多少はクリスの分もやっていた。

それはいいのだ。自分からやろうと思っていたし、クリスのためと思えば別段頑張ることに抵抗もなかった。

しかし、問題はそこじゃなかった。


クリスがかなりのスピードで仕事をこなしているのだ。

それも復帰初日から1人分の仕事、そこから日を追うごとにペースが上がっていっている。

もしかしたら仕事をこなしている量はいつの間にか抜かれていたのかもしれない。

そしてその状況を反映している結果がアリスの目の前にあった。


目の前にはクリスがペースを上げてこなした書類がアリスの承認待ちや確認資料となって山積みになっていた。

それに加えてクリスの分を引き受けた仕事と自身の仕事が残っている。

どう見てもアリスのキャパシティを超える量が会長室にあった。


「じょ、冗談よね・・・どうしてこんなことが」


アリスは現実逃避を試みるがどう足掻いたって片付けなければ山積みの書類が消えることはない。

今になってアリスは気づいた。そもそも、怪我人だからたいして仕事をこなせないと考えていたことが間違いだった。相手はクリスなのだ。

ロジャース商会のときだって経理の仕事では時間を持て余していた。よく考えなくてもクリスの仕事をわざわざ引き受ける必要なんてなかったのだ。


「こうなったら仕方ないわよね」


そう思いなおし、経理の仕事はクリスに知られないように少しずつ戻していくことにし、アリスは自身の仕事とクリスが終えた仕事をこなすことに専念することにした。

アリスはこの状況に主人としてのプライドが傷ついたが、ただでさえ自身の仕事が遅れていたのだ。

格好悪い。なんて言っていている余裕なんてなかった。


こうして、アリスはクリスに負けないように必死で仕事をこなし、一ヶ月くらいが過ぎるころにはようやくアリスは停滞分の仕事をかたづけ、クリスはこれまで以上になっていた。

ただ、その間にアリスはクリスに対して違和感を感じていた。

復帰直後なのに仕事が異常に速いということも十分なくらいおかしかったものの、それ以上に気になること。


クリスが妙に女性っぽくなっているのだ。

仕草のひとつひとつがこれまでよりふんわりとしていて、動作も妙に色っぽかった。

その仕草を見るたびにアリスは首を傾げた。原因を知りたかったが、


「クリス、なんだか以前よりかわいくなったわね」


そんなセリフを言えばじゃあ以前はどうだったのとなるのが目に見えていて当人に言えるはずが無い。

それに、最近のクリスはぼんやりと考えている姿も目立った。仕事は相変わらず超スピードでこなしてくるため仕事には全く支障はないものの、躓いて「キャッ」なんてクリスから聞いたときはアリスは心配するどころか思わず目を丸くしてしまった。

加えてクリスはその後恥ずかしそうにながらアリスに苦笑いしてくる。そんな姿今まで見たことがなかった。


よく考えてみればこれまでのクリスの方がおかしかったのかもしれない。


以前のクリスを気に入っていたアリスにとっては新鮮という感覚よりも不自然な感じがして納得が出来なかった。

それでも、クリスは怪我から復帰したばかりなのだ。しばらくクリスの様子を見守っていればいずれ元に戻るだろう。

そんなことを考えながらながらすぐ傍にいるクリスをアリスはちらりと見た。


まぁ、今のクリスも違う意味で魅力的よね。


今日はクリスは長い黒髪をポニーテールにしていた。

これはこれでいいかもしれない。クリスの姿を見てアリスはそう思うのであった。

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