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33 私は心を折られたりしない

1-9 憂鬱

オルランドからカルロスまでの帰路。

アリスはローラをずっと気にしていた。アリスがクリスにオルランドの仕事を任せて早々に帰宅したのもそのことが理由だった。


「ローラ、大丈夫?」

「心配をおかけして申し訳ございません」

「いいのよ。私が連れて来させたのだから。やっぱりオルランドは怖い?」

「いえ、そんなことは」


ローラはアリスに気を使わせないようにするためか弱々しいながらも微笑んでくれた。


「そう、ならいいのだけど」


アリスはローラの気持ちを汲み取り深く聞かないことにした。

つもりだったのだが、今度はローラが話し始めた。


「アリス様、私は本当は感謝しているのです」

「感謝?どうして」

「もう二度とオルランドに行くことはないと思っていましたから。それにあの町を歩くのが恐かったんです。あのときみたいにまた追われるんじゃないかって。でも町を歩いたり宿の人に顔があってもみんな親切にして下さってなんだか嬉しかったのです。もし、もしよろしければですが、また機会がございましたら私もオルランドへご一緒させてもらってもいいでしょうか」


ローラの問いにアリスはローラに笑顔を見せ返事を返す。


「構わないわ。あなたがいれば私の身支度も楽だからね」


帰路の中ではそんなことがあったものの、カルロスに近づくにつれてローラの様子も元に戻りつつあった。

その様子に安堵しながらアリス達を乗せた馬車がカルロスへ到着したとき、入り口の城壁で足止めを受けた。


「アリス様ですね。お待ちしておりました」


アリスは声のした方を振り返るが見覚えのない相手だった。


「失礼ですが、どなたかしら?」

「私の名前はカインと申します。今年新しくロジャース商会に勤めさせていただくことになり、今回アリス様をロジャース商会の屋敷に案内するように仰せつかっております」

「あら、そうなの。よろしくねカイン」


アリスはカインへ笑顔で返した。

こうしてアリス達はロジャース商会の屋敷へと向かうことになったのだがアリスは不穏を感じていた。


おかしい、いつもならお父様から何かあるのであればローズ商会の事務所か私の部屋でローラを使って連絡してくるはずなのに。

何か事情があるのだろうか。それとも城門前で待たせるほど急な話なのだろうか。


アリスはいろいろと想像してみたものの、思い当たる事がなく、直接会って確かめるしかないと無意味に考えることをやめた。

ローラもアリスの様子を察したのか心配した様子で見ている。アリスが今できることは不安そうにしているローラに安心できるよう毅然としながら笑顔を見せることくらいだった。





そして到着したロジャース商会の屋敷。会議室でアリスとアリスの父親でありいロジャース商会会長のウィリアムは言い合いが始まっていた。


「考え直せ!」

「どうしてですか!」

「ローズ商会は経営や基盤が安定していないからだ」

「ローラン王国からの条件が王都への本拠地移転なんですよ。基盤はオルランドで固めればよろしいではないですか」


必死に説得を試みようとするウィリアム会長。アリスはいつに無く激怒していた。

その様子を見ながらローラは困惑している。


どうしてこうなったのか。


事は数分ほど前に遡る。


コンコン


「アリスです。ただいま参りました」

「入ってきなさい」


アリスが入室し、続いてローラもロジャース商会の会長室に入る。


「ローラはさ」

「そんなに重要な話なのですか」

「う、いや、いずれローラも知ることだ。かまわないが」


アリスの態度に対して父であり会長でもあるウィリアムはいつになく歯切れが悪かった。


「それで、ご用件とは」

「そうだったな。アリスに近々大事な話がある。だからしばらくの間、ローラン王国へ向かうことは避けてカルロスに留まっていて欲しい」

「それは困りましたわ。ローズ商会はローラン王国から本境地移転の要望がきております。それを断ることは難しいかと思います」

「そうなのか、だがそれには時間の猶予があるのだろ」

「ええ、まあ。しかし、時は金なりと申します。相手の気が変わらない内早々に動くのが商人かと思いますが」

「ああそうだ、でも今回はそれでは困るのだ」

「どうしてですか」

「それは、そのときが来たら話す。今日は疲れただろうから部屋に戻って休みなさい」

「いいえ、それでは困ります。私たちはすでに本拠地をローラン王国のオルランドへ移動させる方向で進めているからです」

「なん、だと」

「あろはロジャース商会の承認をいただければ実行に移すだけなのです。娘として応援していただけませんか」

「考え直せ!」

「どうしてですか!」

「ローズ商会は経営や基盤が安定していないからだ」

「ローラン王国からの条件が王都への本拠地移転なんですよ。基盤はオルランドで固めればよろしいではないですか」


こうなると、売り言葉に買い言葉。話がまとまるはずもなくその日は翌日話すことということで話は保留となった。

しかし、この状況が2、3日ずっと続いた。

そうなるとアリスは日に日に苛立ちを募らせ話し合いはただの口喧嘩へとなっていく。


「ならん!」

「どうしてですか!」

「ローズ商会はまだ設立後間もない。経営が安定するまでカルロスに残るべきだ」

「ローラン王国からの条件が王都への本拠地移転なんですよ。みすみすチャンスを逃せというのですか」

「どうしてそこまで反対するのですか」

「それはだな。なんと言えばいいのか」


またか、アリスは歯切れの悪い回答に苛々していた。


「いいかげんにしてください。言いたいことがあるならはっきり言ってください」

「……その覚悟はあるのだな。」

「はい」


父ウィリアムはアリスが返事したのを確認し、言葉を続けた。


「でははっきりと言おう。アリスよ、お前に結婚の話が来ている」

「……結婚?」


突然の話にアリスは呆然とする。


結婚?誰が?あ、いやこの状況からして私か。

え?でも私はまだ14歳なのよ。それにそんな話聞いていないわ。

あ、いやまあ今聞いたけど。


アリスの脳内で目まぐるしく思考が駆け巡り、アリスは顔が青くなっていくのを感じた。

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