31 黒髪少女はうぶすぎる
1-8 王都
アリス達は王都へ着くと、予め手配してあった宿へと向かった。
宿へ着くと既に王国の使者が待っており、アリス達が来たのを確認するとすぐに王宮に向かって行き、その後もう一度やってくると翌日に謁見する日程を伝えてきた。
日程を確認し終え、今日は宿に泊まってゆっくりするだけ。
そこでアリスはひとつして見たかったことをする事にした。
それは真夜中に一緒に誰かと一緒に会話しながら寝てることだった。
アリスにとって幼少の頃以降そういった経験はなく、ローラに頼んでみても使用人なのでといつも畏まって断られてしまう。けれどクリスならいいよと言ってくれるかもしれない。
そう思うとアリスは期待でワクワクしていた。
そしてタイミングを見はかりクリスに声をかける。
「ね、ねえクリス」
「アリスさん、なんでしょうか」
「今晩の宿なんだけど、一緒の部屋で泊まらない?」
「え?」
クリスは驚いた表情をし、明らかに動揺しているようだった。
「え?私何か変なことをいったかしら」
「い、いえ」
クリスの予想外の反応にアリスも動揺する。
そして、クリスが何故か顔を赤くしている。
「クリス、何だか顔が赤いわよ。風邪でも引いたの」
「い、いえ。すいません。それでは明日の準備がありますので」
クリスはそそくさと別の部屋へと向かっていった。
「あ、えーっと……」
アリスはローラを見た。
「わ、わたしもその……」
普段は畏まって断るローラもなぜか顔を赤くしている。
え?ちょっと待って。何か誤解されていない?
何?私何か変なこと言った?
アリスは首を傾げたが思い当たることがない。
期待はずれの結果に落胆しながらアリスはトボトボと自分の部屋で寝ることになった。
そして翌日。
アリスは身なりをドレスに着替え王宮へと向かった。
そのとき、クリスも同じようにドレスを着てもらうことになったのだが、なぜかクリスはしきりに嫌がりかなり抵抗していた。
ドレスは女の子にとって着てみたい憧れがあると思ったんだけど。
クリスの嫌そうな顔を不思議に思いながらもその様子を眺め、アリスは慣れない服装にクリスが照れ隠ししているだけだと思うと自然と納得ができた。。
そして着替え終えてやってきたクリスは黒髪が引き立てられた美しいドレス姿だった。クリスの要望のためか流行ものとは少し違いシンプルなデザインではあったものの、それがよりクリスの容姿を引き立てている。
「クリス、似合っているわよ」
クリスはその言葉を聞いて、ピクリと反応する。
そして、顔を真っ赤にさせて俯いている。
やっぱり、照れ隠しだったのね。
そういえばクリスはこれまでこういった服を着る機会がなかったのかもしれないわ。
これまでのクリスの出身や性格を考えると何となく納得することができた。
照れ隠しも内心では喜んでいるに違いない。
「いえ、アリスさんの方が似合っています」
クリスが恥ずかしがりながらも笑顔で返してきた。
そのクリスの様子を見て、アリスは一安心する。
やっぱり、初めて着るドレスだったら慣れない格好は恥ずかしいのかもね。
アリスは黒髪を活かしたクリスの美しいドレス姿に満足しながら眺めていた。
そしてこう思った。
これからはクリスにも社交場に参加してもらおうかしら。
アリスは妙案かと思ったがクリスの様子を見て再考することにした。
クリスの恥ずかしがる様子をかわいいと思いながら見ていたが、そのうぶな姿を他の男の貴族たちも見ると思うとあまり気分がよくなかったから。




