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3 黒髪少女は常識がなさすぎる

1-2 少女との出会い


アリスはクリスにカルロスの町について話をすることにした。

クリスが田舎から来たということで町についてほとんど知らないと思ったからだ。


カイロスは自由交易都市であること。

領主の代わりに総督と呼ばれる人がいること。

領土は小さいものの、3国に通じる道がある好立地であること。

周りは西にローラン王国、南にガイア帝国、東にライン連合国とそれぞれ国に囲まれており、いずれの国もこの都市には友好的で比較的平和であること。

城壁や警固は都市が管理し、税の徴収も同様であること。北に流れる大きな川に沿い、同じような都市国家がいくつあること。そして船を使えば2~3日で塩の味がする水があるところまで行けること。

またお金は金貨、銀貨、銅貨があり、食品なら銅貨、日用品は銀貨、高級品は金貨で支払われていること。

それよりも大きな取引では金塊で行われること。

曜日に関しても、町の人は5日が勤労日、1日が休日残り5日が神様の感謝祭となっていること。


最初は親切心で説明していたものの、これまでいつも聞く側にいたアリスは目を輝かせて話を聞いてくれるクリスが新鮮で嬉しくなり、何だか本当に部下ができたみたいで楽しくなっていた。


「あと、忠告しておくけど、町の人をあまり信じすぎないようにね」

「え?」


最後に忠告を加える。やっぱり田舎の娘は人を疑うことを知らないらしい。


「やっぱりね。まあいいわ、どうせすぐにわかるだろうし」

「はあ」


クリスが首を傾げているのをみてアリスは苦笑する。

そして雑談をしばらくしていると馬車が止まった。おそらくカイロスの門に辿り着いたのだろう。

兵士らしき人が馬車の中を確認してきた。


「ひっ!」


クリスが悲鳴をあげた。アリスはその声に驚いてビクッとする。


「おやおや、証明書に載っていない人がいるじゃねえか」


いつもなら問題ないが、今回はクリスがいる。初めての通行が一番面倒なのだ。

さっさと終わらせるためにアリスはクリスに指示をすることにした。


「クリス。証明書を見せてあげなさい」

「えっ、ああ、はい」

「あと、通行税として銀貨10枚ね」

「は、はい」


通行税はもっと低かったはず。

どうせ差分は自分のこずかいとするつもりなのだろう。兵士の言葉にアリスはうんざりする。そして、ちらりとクリスの様子を見てみると何やら様子がおかしかった。


「もしかして足りないのかな。仕方ないなぁ、それだったらちょっと付き合ってくれたら通してあげてもいいよ」

「え?」

「……おかしいでしょ!」


クリスが動揺しているのを見かねてアリスは割り込むことにした。


「通行税は銀貨3枚なはずよ!」

「新参者に対しての税が代わったんだよ」

「ならその責任者を呼びなさい」

「うっせえな。お前は黙っていろ」

「私だって商人の娘なんですから黙っていられますか!責任者を呼びなさい」

「たかが商人が口を挟むな!」


ただが商人。

その言葉にアリスは怒りがふつふつと沸いてきた。

よく考えなくてもカルロスは交易都市。行政も軍事もトップは商人なのだ。


「それがロジャース商会であってもですか」

「え?」


兵士は突然の言葉に呆然としている。


ああ、その間抜け顔をするなら最初から変なことしなきゃいいのに。


「そ、そそそ、そうだんったんですか」

「ええ、そうよ」

「こ、これは失礼致しました。お付きの方だったんですね。それならどうぞ。え?税ですか?わ、私が代わりに払っておくんで大丈夫です」


兵士は逃げていった。

そしてアリス達を乗せた馬車は再び動き出す。


お父様に報告してあの兵士は解雇か懲戒してもらいましょう。


「…………ふう」


なんだか疲れてしまいアリスはため息をついた。


「あ、ありがとうございます」

「いいのよ。一般の馬車にしたのがよくなかったわ。ね、私が言ったことがわかったでしょ」

「は、はい」


怖かったのね…………あら、何だか可愛い。

クリスはまだ状況がよく理解できていないのか少し怯えている。

アリスはクリスを安心させるために笑顔を向けた。


「あのー、ロジャース商会についてですが」

「この都市では3商会が力を持っていてその一角が私のところなのよ」

「ひぇあ!」

「何その声」


予想外の反応にアリスは思わず笑ってしまう。

そして顔を赤くして縮こまるクリスがとても可愛く思えた。


「青くなったり赤くなったり面白い子ね」

「え?私がですか」

「他の誰がいるのよ」

「それも、そうですね」


二人で笑い。お互いに雑談をしていると、ようやく馬車は止まりアリスの屋敷へと到着した。


この子を絶対に私の従者にする。


アリスは改めて決意した。

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