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1-7 はじめての事業

ローズ商会が安定してきたことを受け、アリスは社交場の出席は主要顧客の日程を合わせれるところのみ出るようにし、それ以外の日は一旦カルロスへ帰宅した。

そうなると貴族達もアリスが来ることが当たり前から期待して待ってくれるようになり、出向いた日はアリスがいるだけで社交場の話に花が咲いた。


ただ、アリスがカルロスへ戻るようにしているのはそれが理由ではなかった。

事業が始まってみると、取引先はすんなりと確保できたものの、薔薇の品質維持や運搬などの準備、製造工程で時間がかかってしまうなどローズ商会が見直すべき部分はたくさんあったためだ。

また、事業開始時は安かった馬車の利用料も、利用が増えるに応じてロジャース商会が何度も値上げ交渉を行なってくるためこちらの労力もかなりかかった。アリスはかなり憤慨しながらもカルロスへ滞在しなければならない理由のひとつであった。


もっとも貴族と交友で繋がって、商品も貴族に合わせて個別で対応しているのだ貴族相手の取引では他の商会の追従を許さなかったためで、アリスがこうしてカルロスに戻れるのは事業が順調な証でもあった。


その証明である順調に売上が上がっていく書類を眺めながらアリスは一息つく。


「・・・ふう」


アリスはロジャース商会の一室に設置されたローズ商会の会長室にいた。

売上が伸びると主要顧客以外でローラン王国の社交場に向かう機会も少しずつ減り、工房と本拠地のあるカルロスで書類をこなして指示をすることの方が多くなってきた気がする。特に運賃の話で。


最近またダリルが値上げの話をしてきたわ。

こんどは搬送の護衛費だったけどそろそろ我慢の限界かしらね。

一度お父様に契約について再度話し合ってみようかしら。うん、それがいいわね。


不快なことを考えたところで解決策がないのであれば意味がないのだ。

だったら別のことで売上に繋がることを考えたほうがローズ商会にとってもよかった。

アリスは頷くと次の社交場について考えることにした。

営業となる社交場に頻繁に出席していると噂の話や恋愛の話、ファッションの話が鉄板ネタだ。

ただ、アリスはどうしても恋愛の話が苦手だった。その話題に乗っかりたい気持ちはある。ただアリスにとって好きな相手がいなかったのだ。

そのため頑張って話しについていこうにも気持ちが理解できなかった。


「うーん、困ったわ。クリスは興味あるのかしら」


そんなことを考えているとコンコンと音が鳴りクリスが入ってきた。


「失礼します。」

「あら、クリス。仕事は大丈夫なの」

「はい。既に本日分終わっております」

「相変わらず仕事が速いわね。工房のほうも順調そうね」

「はい。従業員用の入浴場の評判がよかったので今度は男女別大浴場の設置を考えております」

「男女別大浴場?人気でるのかしら」

「男女別であったとしても多人数での入浴は案外楽しいそうです。アリスさんも一度入ってみてはいかがでしょうか。それに量産と相性いいですし」


当時の入浴場といえば混浴が常識だった。そのせいで宗教者から批判の的になっていたが人気は別として男女別ならそういった批判もなく案外うまくいくのかもしれない。

アリスはそんなことを考えていたらいいことを閃いた。


そうよ。その入浴場でクリスに好きな人がいるのか聞いてみればいいじゃない。

会長室で聞くよりも聞きやすそうだし結構楽しいかもしれない。


「わかったわ。今度一緒に試してみましょう」

「え?いえ、私は」


アリスの誘いにクリスは顔を赤らめた。

勧めておいて遠慮するクリスを不思議そうにアリスは見る。


「それよりも次の段階へ進みたいと思います」

「あら。話しを逸らしたわね。クリスらしくもない」

「いえ、私はアリスさんの従者ですから恐れ多いかと」


作戦失敗ね。ちょっと残念だわ。


クリスはどうしても遠慮したいらしい。無理強いするほどのことでもなかったのでアリスは一旦諦めることにした。


「懐刀と噂されているのに今さら何言っているの」


ロジャース商会でのクリスの評判は上々で営業所でも評判になっていた。

それでも当人のクリスはを何も知らないらしい。


「ご冗談を。ひとえにロジャース商会のおかげかと」

「あら、ロジャース商会もあなたが居たから動いたのよ」


今でも思い出す『クリスもいるから大丈夫』兄のアランが言っていた言葉。

アリスの眉間がピクリと動いたがクリスにばれないよう表情は必死に隠した。


「アリスさんだけでも動いていましたよ」

「あなたって・・・まあいいわ。今に始まったことじゃないものね」


自分の能力がどれだけずば抜けているのか理解しているの?


アリスはそう言いたかった。主人として一年通して必死にクリスを抜こうとし、そのたびにクリスに評判でどんどん離されていく状況はアリスにとってつらかった。それでも頑張ってこれたのは今日の日の為、そしてクリスを見つけたのが自分だという自負があったからだ。

仕事では周りの者などクリスに対抗心を燃やすどころかすぐに諦めてしまっていた。

それくらい力量に差が歴然としていたのだ。


アリスからすればクリスがこうしてアリスについてくる理由がわからなかった。

ロジャース商会にいればかなりの出世ができていることは間違いない。引き抜きがあれば破格の提示を受けるだろう。


それでもクリスはアリスを裏切ったりしない。


クリスが守ってくれた出来事がアリスを信じさせていた。


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