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1-6 反省会

クリスが正式にアリスの従者となってから一ヶ月が経とうとしていた。

しかし、毎回の打ち合わせのために会うたびにクリスの顔には疲労が色濃くなっている。

言わずもがな、剣術の稽古が理由だった。


少し心配になり、事業計画の打ち合わせ聞いてみる。


「あなた、大丈夫なの」

「ありがとうございます。大丈夫です」


クリスだって女の子なのだ、弱音を吐いてくれればアリスも助けようもあった。

でもクリスは頑なに大丈夫だと言う。


現在のクリスの日課は午前に仕事をこなし、午後から稽古、そして今の打ち合わせ。

どう考えても大丈夫には見えないスケジュールなため、クリスとの第7回事業計画の打ち合わせはほどほどにして、

もっぱら稽古の話やあった出来事の話についてするようになっている。


「そういえば、稽古てどんなことをしているの」

「はい、最初は剣の持ち方や扱い方についてです。残念ながらこちらについては今もあまり素質がないようで」

「あら、そうなの。クリスにもできないことがあるのね」

「そりゃ私だって人ですから。でも、最近始まった護身時の回避行動についてはなんとかやっていますよ」

「そうなの。例えばどんなことを」

「女性は力が非力なので、捕まったときの身の動かし方や、相手を掴むときのこつなんかが中心ですね」

「まあ、男の人の力にはかなわないですものね」

「はい、実際にやってみて実感しました」

「そうなの。でも無茶はしちゃだめよ」

「大丈夫ですよ。それに今ちゃんと習得しなくちゃ実戦では到底使えませんから」

「それもそうかもね」


どうも上手く出来ない事がクリスを返ってやる気にさせているみたいだった。

何でもできる人というのは案外できないことに出会ったときに熱中してしまうものなのかもしれない。


まあ、クリスがやる気ならいいんだけど・・・


手品の件が落着してからというものクリスとは親しく話すようになってきた。

ただ一緒に話しているだけで楽しいのだ。

最初は主人としてのアリスなりの配慮だったけどこれも悪くないかなと思っている。


それにクリスの仕事の評判は上がり続けており、もはやアリスは追いつけないと思って潔く諦めたらなんだか気持ちも軽くなった気がする。

もっとも、だからと言って仕事に手を抜く訳ではないけど。


ま、負けている言い訳じゃないわよ!


ただ、クリスの現状を見れば到底第7回事業計画の話は進められそうにない。

アリスは秘密で別途第8回事業計画をローラと練る事にした。

なぜローラとそのようなことをしようとしているのかというと、きっかけは何気なくローラにクリスの現状を話したことからだった。一人で事業計画を作っていたときのこと。


コンコン


「失礼します。アリス様」

「あら、ローラ。少し待っててちょうだい」

「・・・ねえ。ローラ」

「もし、あなたが商売をするとしたらどんなことをする」

「私ですか・・・」

「思いつきでもかまわないわよ」

「そうですね。私でしたら。貴族向けに販売をするんじゃないかと思います」

「あら、どうして?」

「貴族の方は噂がお好きなようですので一人でも有名な貴族の方と交友を持つことができればそこから一気に広まるかなと思いまして」

「なるほど、人脈を活用するのね」

「はい、それに貴族の方は自慢もお好きなようですし、そう言った方は高級品といった品を好む傾向がありますので」

「利益も高いと」

「はい、でも貴族の方と私では交友を持つこともできませんから難しいかもしれませんね」

「そのアイディアもらったわ!採用よ!」


といったことが始まりだった。

そして、ローラと話してみると意外と貴族との交流関係や話し方の作法といったところで詳しかった。

少し気になったのでアリスはローラに確認をしてみる。


「ねえ、ローラ」

「何でしょうアリス様」

「どこでその知識を得たのかしら?」


その理由を聞いてみるとローラは少し考えてそう言った。


「それは使用人として目上のお客様や使えるご主人様に不快感を与えないためです」


その一言が決定打となった。

これまでクリスと話していたときにはなかった視点。

そしてなによりアリスが大学時代に貴族とも交友があり、想像しやすかったことも決め手だった。


こうして、アリスとローラは対貴族での販売計画を密やかに、そして着々と事業計画を進めていくことになった。

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