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1-4 私、中世で仕事をしてます!
アリスは第4回事業計画書を書き終え悩んでいた。
第4回と謳っているものの、中身は第3回とほとんど変わらない内容となっていたのだ。
一方、計画に参加していたクリスは終始苦笑いを続けるだけで、事業計画に口をださなかった。
そのこともアリスを悩ます原因となっていた。
「この事業計画じゃダメね」
「あ、気づいていたんですか」
クリスが驚いたような顔をする。
それにはアリスも馬鹿にされていると思い腹立がたった。
「あなたねえ。わかっているなら最初から指摘しなさいよ!」
「いえ、事業計画は一見失敗する内容であったとしても計画の練り方しだいで変わったりするものですから」
クリスは笑顔で答えた。クリスはときどき変なことを言うのだ。
アリスはその言葉の意味がわからなかった。
「え?どういうこと?」
「ええ。これは昔誰かから聞いた話なんですが、ある店におにぎりの販売を始めたそうです。」
「おにぎり?何それ?」
「異国の庶民の食べ物だと考えてください。ただ、おにぎりという食べ物はご飯を作れれば簡単に作れる食べ物だったんです。この国で例えると、パンのようなものですね。」
「そうなの?なら最初からパン・・・いや、いいわ。それでどうなったの?」
「周囲の商会や貴族達はそんなの売れないと笑っていたそうなんですが、その商店はいくつかのトッピングを用意していろんな種類を作って販売してみたところ、大盛況だったそうなんです。やったことは単にトッピングの種類を増やしただけ。それで大成功をおさめたそうです」
「その話。このあたりのパン屋にも通じるものがありそうね」
「ええ、あると思います。ただパンを売るのではなくパンに何か加えるだけで選べるようになります。それにお客さんはご飯を作る必要がなくなりますからね。また、パン屋だからパンだけを売らないといけないというのは単なる思い込みですし」
「なるほど、ただ売ろうとするだけの計画ではだめなのね」
「そういうことです。そういったようにトッピングに工夫したり他と違うやり方することを差別化と言います」
「差別化・・・うーん、私にいいアイディアが浮かぶしかしら」
「アリスさんなら大丈夫ですよ」
クリスはニコニコと笑顔で言う。
アリスは改めて事業計画書を見直してみるが、計画書には差別化と言える内容はいっさい無かった。
思わずため息をついて呟く
「やり直しね」
「お付き合いしますよ」
クリスは相変わらずニコニコと笑顔で言う。
その様子がアリスには気に入らなかった。
「ひとの気も知らないで」
「え?何かあったんですか?」
シルバー商会の解散からさらに日が経ち、働き始めてからもうすぐ3ヶ月が経とうとしていた。
あれから再び堅実にアリスは仕事をこなしていたものの、シルバー商会以外にアリスは目立った実績はだせずにいた。
一方でクリスは着々と実績を積んでいる。もはや他のベテランを上回る仕事量をこなしているらしく、最近はロジャース商会会長の耳に届くまで噂が広まっていた。
「何でもないわ。今日はもう止めましょう」
「かしこまりました」
これまでの実績を考えれば、新人のアリスは十分すぎる成績であったが、クリスの主人として上に立たなければという焦りを感じていた。
その悩みをクリスに言えるはずもなく、アリスは焦りと苛立ちを感じていた。




