四章 44
それから僕はシャワーを浴び、ひとりで食堂へと出かけた。
急いでメシを食い、みなものぶんの食事を乗せたトレーを持って宿舎に戻ると、――事件は発生していた。
「なん……だ、これ……」
ドアを開けると部屋の中がめちゃくちゃになっている。
まるで空き巣にでも入られたかのような、いやどちらかというと、ヤクザの報復で部屋を荒らされたって方がしっくりくるカンジだ。
こんなに荒らされた部屋にいると、とても怖くて、いちゃいけない場所にいる気分がした。生理的にここはヤバイって……。
「そうだ、みなもはどうなった?」
僕は寝室に走った。
ドアは少し開いていて、電気をつけると、みなもがベッドの上で丸くなって泣いていた。こっちの部屋はあまり荒らされていないようだ。みなも自身にも、特にケガをした様子はなかった。
――やったのは、こいつか……。
僕はそう、直感した。
僕は、はーっと大きく息を吐くと、みなもに声をかけた。
「おい、大丈夫か?」
体に触れようと手をかけると、みなもは獣みたいに絶叫して僕の手を払いのけた。
……どうなってんだ。もっと悪くなってるじゃないか。
「なあ。先生は、一体なんの手当をしたっていうんだ。良くなるどころか、どんどんひどくなってるじゃないか。なあみなも、お前、本当は何の病気なんだ? もしかして、大変なことになってるんじゃないのか? 一体どうしちゃったんだ?」
みなもは壁にへばりつき、僕を睨み付けてこう叫んだ。
「……お前は、違う!」
次回、新章となります。