四章 33
広い場所ならなんとかなる、そう思って基地の敷地内に誘い込んだのに、この劣勢は一体何なんだ!
コソコソしたヤツだからと若干油断もしていた。だけど、人狼のポテンシャルは僕の想像以上で、いや、自分のスペックを過大評価してたからこそのピンチなわけで。
さっきから、陸がくそ重たいウルフクローをブンブンと振り降ろしてくる。
その度に僕はじりじりと後退させられる。
僕の何が陸の嗜虐心を煽っているのかわからないが、ときどきフェイントまで入れてくる。かと思ったら、思いっきり腹にパンチを入れてもくる。これじゃあオモチャだ。
「どうした! よそ者ォッ! 遊んでくれるんじゃなかったのかよ!」
防戦一方になりながら、僕はヤツの動きを観察した。――勝機を探して。
それは、すぐに来た。
「クッソおおおッ!」
僕は、陸が腕を振り上げた瞬間を狙って、ヤツの腹を思いっきり蹴り飛ばした。
「ギャッ!!」
僕の蹴りがめり込むと、陸の体は軽々と数メートルほど吹っ飛んで割れたコンクリートの上をゴロゴロと転がっていった。
(チャンスだ!)
僕は助走をつけ、一気にスピードを上げた。
ヤツの手前でダイブ、体を思いっきり反らし、双剣を腹めがけて打ち下ろした。
「くらえッ!」
渾身の一撃×二!!
――が、陸は膝を上げ、向こうずねで僕の攻撃を二本とも受けた。
「ッギャアッ」
陸は叫び声を上げ、その場でのたうち回り始めた。
腹への攻撃をかわすつもりが、余計にダメージがでかかったようだ。
すねなんか、棒で叩かれたら本気で痛いに決まってる。
「バカめ。油断してるからだ」