四章 23
カメクラを早退した伊緒里ちゃんと僕が、島一番のショッピングセンターにやってきたのは、伊緒里ちゃんがペアウォッチを買いに行こうと言い出したからなんだ。
僕が時計がないと僕が困るだろうからってのは口実で、じつは「したいことリスト」に『おそろいのグッズが欲しい』の項目があるからなんだ。そういうことなら行くしかないよね。
伊緒里ちゃんに連れられて店に行ってみると、前から目星をつけていたのか、伊緒里ちゃんは広い売り場の中をまっすぐ歩いて僕を商品の所まで案内したんだ。
伊緒里ちゃんはとても嬉しそうに
「えっとね、これが第一希望なんだけど、これとこれとこれと、あとこれの中でよさそうなのある? 無かったら他を見るけど」と言った。
そこまで言われちゃったら、他の選択肢ないじゃん。さすが優等生、手際がいいや。でも、相手が誰でも同じこと言ってたのかな? なんて無粋なことは、今はいいっこなしだぜ。
「じゃ、この第一希望で」と言うと、伊緒里ちゃんは満足げに笑った。
タコライスを食いそびれた僕は、とっととレストラン街に行きたかったから、すかさず店員さんを呼んだ。
店員さんがやってきて、僕が財布から軍に支給されたクレジットカードを取り出すと、伊緒里ちゃんが慌てて「私が払いますっ」と僕を遮った。少々押し問答になりかけたけど、
「もう! これプレゼントにするんだから、払っちゃダメ!」
と、伊緒里ちゃんが怒るのでここはひとまずハイハイ、と素直に従った。多分これも項目の一つかもしれない。
僕がみなも以外の女の子を連れていたせいか、ヘンに人目を集めてしまったので、僕らはこないだ泊まったホテルに逃げ込んだ。ここなら、あのコンシェルジュさんが匿ってくれる。