四章 17
結局、みなもは早退した。
午前中くらいまでは保健室にいたようだけど、昼休みになったら即、基地から学校へ警護に来ている人に車で送ってもらったって、後で難波さんから聞いた。
学食でメシを食ってたとき、明日香ちゃんがなんとなくほくそえんでいた気がしたのは、僕の思い違いだろうか。まあ、彼女にとっちゃ、みなもが失脚するのは願ったり叶ったりだろう。みなもだって、僕が気に入らないなら横須賀に帰ればいいんだ。もしかしたら、具合だって良くなるかもしれないし。
日課となっている放課後の訓練終了後、僕が水道で顔を洗っていると光明寺先生の使いが僕を呼びに来た。先生曰く、ここは暑いし毎日の訓練も厳しいから検診したい、というので、早速僕は医務室に向かった。
ところでさ、僕がこんなヘナチョコで、実質的には対戦車グレネードさんにも小指で負けるレベルだ、ってのが外国にバレたら、国防的に結構マズいと思うんだ。
けど、訓練とかフツーに基地の金網越しに見えちゃうし、ご近所のじいちゃんばあちゃんに時々声援送られたりしてる状況って、僕が言うのもなんだけどセキュリティ上どうなの? って思うわけで。
それとも、放課後に「コンクリートを詰めたドラム缶とひたすら格闘する部」で汗を流している僕の様子をご近所さんに見ていただくことで、軍への好感度をアップしてもらいたいとか、健全な海軍少年を演出してると――敵が思うわけねーだろ!
……なんてどうでもいいような良くないようなことを考えながら、いつのまにか僕は事務棟一階にある医務室の前に到着していた。