四章 7
「なんか、ちょっと安心しちゃった。ありがとう、威くん」
「うん。良かった。でも、これからどうしようかな……」
とりあえず、今後の作戦を考えなくっちゃ。
ん? どうしたことか、伊緒里ちゃんが僕を夢心地な目で見ている。
なんかすげーキラキラしてる。みなもでは見たことない、なんというか……乙女な眼差しだ。
ついさっきまでの厳しい学級委員の顔はどこへやら、すげえふにゃふにゃになっているぞ。
「……ねぇ、伊緒里ちゃん。どうかした?」
君ヤクでもキメてるような顔してるよ、と言いそうになって、心の中で自分にフルスイングパンチを食らわせた。我ながらなんてヒドいツッコミばかりするんだろうかと、たまに悲しくなる。
「ふぇ? はっ! な、なんでもないの、なんでもないから」
あ、我にかえった。ふぇ、とかかわゆすぎるだろう、伊緒里ちゃん。
でもヤバイ。
マジヤバイ。
ぼくの理性さんが……あ、あ、あー……。プツン。
もー、そんな可愛い顔で見つめられたら、ぎゅーしたくなっちゃうだろ!
僕は伊緒里ちゃんを抱き締めた。せざるを得なかったんだ。
辛抱たまらん、容赦ない方のぎゅーだ。
「や、た、威く……ん……」
伊緒里ちゃんの息も荒くなる。
「ごめ……でも……」
僕の息づかいも彼女に筒抜けだ。でもそんなの構ってらんない。
「でも?」伊緒里ちゃんのウイスパーボイスの破壊力がすごい。
「でも、もう……ムリだ」
僕は、彼女に頬ずりして、ほっぺやおでこをついばんで、背中をまさぐったり、腰を抱き寄せたり、髪を弄んだり、どさくさ紛れに唇を奪ったりと、間違いなく『不健全』なぎゅーをした。
ダメだ。もう止められない。止まらない。
伊緒里ちゃんが愛しくてどうしようもなくなった。
力を入れるたび、伊緒里ちゃんが『くふっ』とか『んぁ……』とか、とてつもなく悩ましい声を上げて僕の腰に手を回したり背中に爪立てたりする。僕もつい調子に乗って普段みなもにしてるように、伊緒里ちゃんの柔らかいお口を蹂躙してしまった。
――ああ、もう、どうにでもなれ!




