三章 14
僕はそのあと、日が沈むまでずっとドラム缶を叩いてたけど、気付いたらみなもはいなくなっていた。薄情なやつめ。
今日の成果はドラム缶を力任せに叩いた結果、二分の一本を破壊するに留まった。軍手をしてはいたけど、手はマメだらけでつぶれて痛いし、弾け飛んだコンクリートや金属片で顔や腕に傷が出来るし、いくら人間よか早く治るったって痛いもんは痛いんだ。
どうしたら店長みたいに、物に触れずに破壊出来るのか。聞いても店長は教えてくれないし、逆にどうして僕には出来ないのかって聞いても、やっぱり教えてくれない。今教えても意味ないし、上達とは無関係だからって店長は言うんだけどさ、んなこたぁねえだろうが。めんどくさいから教えたくないだけなんじゃないのか?
なんかいっぺんに色んなイライラがやってきて、僕のささやかな脳味噌が発狂しかかって、疲れて息を切らしてかがんでいると、
「威、もうそのへんにしとこうや」と難波さんが声をかけてきた。
こういう『ねぎらう』役って、本来は相棒のみなもの役目なんじゃないのかな? どうして僕をガッカリさせる方向にいっちゃうの?
――ガッカリ……?
「そうか!」僕は思わず叫んだ。
コンクリのガレキをスコップでネコ車に放り込んでいた難波さんが、ビックリして「なんだ?」と聞いた。
「みなもは僕にガッカリしたんですよ! そうだ、そうですよ。あいつは兄貴、いや瑞希姫の伴侶である、店長みたいに強くてカッコイイ本物のイクサガミが欲しかったんだ!」
「ああ……。確かに一利あるな。小さい頃は、やたら琢磨さんに懐いていたしなあ」と難波さんが腕組みをして言ったとき、頭上すれすれを輸送機がかすめていった。
……なんだ。悪いのは、僕だったのか。
アイツをガッカリさせた、僕が戦犯だったんだ。
やっぱり、僕はイクサガミなんかになっちゃいけなかったんだ。
アイツをガッカリさせないために。
そっか。
そうだったんだ。