三章 13
身内がテロリストになっちまったのか……、なんて恐い想像をしつつ小休止を取り、その後、僕はいよいよ実技訓練を始めることになった。
「では、今日の課題はこれだ」
店長は手にした『威力千分の一ショートソード』、とかいうと面倒なので『パーミル(千分の一)ソード(仮称)』の先で、難波さんが並べていた数本のドラム缶を指した。
「ドラム缶……ですか」
店長は片手をエプロンのポケットに突っ込んで、
「んじゃ、こんなカンジで」
と言いながら、ドラム缶の前でパーミルソードをしゅしゅっと振った。ドラム缶自体には、全く触れていない。ただ、少しだけ風が吹いたように感じた。
その数秒後、……ズズッ。
何かがこすれるような音。続いて石が砕けてガラガラと崩れ――
僕は、目の前で何が起こったのかよく分からなかった。
はっきり言えるのは、並べられた五本のコンクリート詰めドラム缶が、一瞬で細切れになってしまったということだけ。
「ここまで細かくしなくてもいい。とにかくそのシビリアンソードで、コンクリの詰まったドラム缶を破壊すること。カンタンだろう?」と店長。
僕のシビリアンソードは店長の剣より千倍強いんだ。出来ないワケがない。
「余裕っス」
「威がんばってー」
みなもがケーキの皿を片手に、そこいらをうろつきながら雑な声援を送ってくれる。
僕はとりあえずドラム缶の前に歩み寄ると、スイカ割りのように剣を上から真っ直ぐ振り下ろした。……武神器でなら、とうふを切るよりカンタンなはず。
「でやあぁぁぁぁッ!」
――ガスッッ!!
「んぎゃーッ!」
僕の庶民ソードが宙を舞った。
結果から言うと、ドラム缶には傷一つつかなかった。
僕は、ちゃんとグリップを握りもせず、気楽に振りかぶってコンクリートの塊を殴ったんだ。正直思いっきりナメてた。だから衝撃で手を痛めて、剣も吹っ飛ばしたってワケ。
「ぁいっててて……」
「……ダサ」背後から、ぽつりとみなもの声。
「初心者つかまえて、そりゃないだろ?」
さっきまでの応援ムードは、一瞬でM78星雲の彼方へ飛んでいってしまったらしい。
僕は痛む手を庇い、左手で剣を拾った。そして、今度はちゃんと柄を握り、剣を鈍器としてドラム缶を思いっきり叩いてみた。
斬るもんじゃなかったよ、ドラム缶。マジ硬いよ。ナメてた。
今度はなんとか五㎝ほど、コンクリの塊に刃がめり込んだ。でもやっぱり手が痛い。
様子を見ていた難波さんが走って来て「おう、これ使えよ」と、軍手を貸してくれた。
ふと振り返ると、みなもがすごいシュールな目で僕を見ていたんだ。侮蔑の眼差しってやつ? なんであたしこんなとこにいるんだろ、みたいな。
あは、なんて無理して笑ってみせたけど、みなもはもう僕の方なんか見てなくって、無言でケーキを食っていた。結果僕のHPは三十%減、MPは八十%減となった。