二章 10
とりあえずみなものことは一旦置いといて、僕は店内のネット端末からゲームの新しいクエストをダウンロードしつつ店内を物色し始めた。
みんなお祭りに行っているのか、店内はがらんとしている。
さすがカメクラとでも言うべきか本土の店舗とほとんど同じ品揃え、いや逆輸入版や日本語版のないソフトまでコアなラインナップになっている。ここは中野ブロードウェイかカオス館か?
同じということは、お宝発掘のために僕のすべきことは……エサ箱のサルベージだ!
「えーっと……、こっちじゃまだ売ってたのか……で、おお、これも捨てがたい……」
僕は一本の古いパッケージ無しのゲームカートリッジ、裸ロムに目を止めた。
「あ~、なつかしい。これ大事にしてたんだけど、いつのまにか無くなってたんだよなあ……。ここはやっぱ買い直すべきだろうか……」
僕が何気なくロムをひっくり返すと、そこには――――
「なーんーでーやーね――んッ!」
とシャウトするほどの、驚愕の文字が記されていた。
「なーんーでこんな遠い島に僕のロムがあんのさ! むっちゃハッキリと『みなかたたける』って書いてあるじゃんかぁッ! あああああああんんのぉぉクソ兄貴! 勝手に借りパクした上に無断で売り飛ばすたぁどおおおいう了見だああああ――!」
僕の絶叫が広い店内にこだました。その時、
「お客さん、店内で大声出されますと他のお客様のご迷惑となりますので、ご遠慮願えますか?」と、すげーイケボイスなお兄さんに注意されてしまった。
慌てて振り向くと、そこには、見たまんまで言うと、ゆるいウェーブのかかった肩くらいまでの長髪で、イケメンだけどなんか疲れたホストっぽい二十台後半から三十台前半くらいのお兄さんが立っていた。
チャラいわけじゃなくて、どちらかというと水商売系、ちょっと昔なんかあったような訳あり風のお兄さんは、素足にビーサン、スネ毛剥き出しのバミューダパンツにハデなアロハシャツ、その上に真っ黄色いカメクラのエプロン、そして胸にはでっかくピンク地に黒文字で『店長』と書かれたわざとらしいカンバッジをつけている。
「あ……済みません、兄貴が勝手に売ってしまった、僕の大事にしていたロムを見つけたもので、つい……」と、僕は手にしたゲームのロムカセットを差し出した。
それを見た店長さんは、えっと驚いた。