二章 9
『心ここにあらず』なみなもを連れて神社を出て、そのまま道沿いにフラフラと歩いていくと、まだ祭りの真っ最中で道は混み合っていた。
みなもの気分が落ち着くまで、しばらく散歩でもしよう。
大きくカーブしている道路を進んで行くと、丁度神社の裏手側までやってきた。
そこには基地のサブゲートがあり、向かいには、見慣れた看板を掲げた大きなゲームショップがあった。その看板とは――カメハメハクラブ。
親友、吉田修太郎の実家が経営する、皇国最大のゲームショップチェーンだ。
……ああ、そういえば市ヶ谷で難波さんが島にもカメクラがあるって話してたっけか。今の今まですっかり忘れていたよ。
カメクラの中でもこの店舗はかなり大きい方だろう。ゲームだけでなく本、セル&レンタルDVD、漫画、トレカ、フィギュア、造形材料、お菓子に食玩、そして大型店のみに併設されている漫画喫茶も完備、およそカメクラの要素をパーフェクトに備えた、文字通り大王級のカメクラの中のカメクラだった。せっかくカメクラを見つけたんだから、入らない手はない。きっと中で休憩出来るスペースもあるはずだ。そこでみなもを休ませつつ、自分は店内をちょっと見て見ようって算段さ。
広い店内に入ると、見慣れたポップやポスター、什器、携帯ゲーム機用のネット端末などが置いてあって僕は少しほっとした。
「具合、大丈夫か?」
僕はみなもベンチに座らせると、彼女に尋ねた。
「……多分。さっきの子、何だろ」
「さあ。どうしてお前のこと、瑞希姫だなんて言ったのかな」
「私が威の巫女だから?」
「お前のことは知らないみたいだった。でも、お前の顔を確認した上で瑞希姫だと断言したんだ。あの子は瑞希姫の顔を知っている……。どうしてだろう、人間なのに」
「私が瑞希姫……。わからない……」
また、みなもの顔が虚ろになってきた。
「あーあー、もう考えるな。とにかくそこ座ってろ。少し休め」
みなもはこくりと頷いた。