二章 7
そんなカンジで僕らは参道の屋台で買い食いをしつつ、ゆっくりと参道を進み本殿に近づいていった。ここまでの道中、混雑のせいもあってか、誰も僕らに気付いていない。
境内に入ると、神楽殿の方からお囃子が聞こえてくる。放送じゃない、生演奏だ。みな、神楽殿の方を食い入るように見ている。……何を見てるんだろ?
はぐれないようにみなもの手をぎゅっと握り、僕は人垣の中を縫うように神楽殿に近づいていった。
自分が国津神だからって、雅楽や神楽に興味があるわけじゃない。だって二十一世紀生まれなんだから。でも何故か、見なければいけないような気がしたんだ。そこに『いる』誰かを。
――天女……?
神楽殿の上で舞い踊っている巫女さんが一人。
奉納の舞い、というよりも激しい能のような舞い方だ。空を切る薄衣の軌跡が淡く光っている。それは暗い場所でライトを動かしたときに似ていた。激しく舞うと、複数の軌跡が神楽殿に描かれる。
……どうなってるんだろう、あの着物。蛍光塗料とか使ってあるのかな。
「ねえ、みなも。あの着物、光ってるよね?」
「え、何の事。ライト以外、光ってるもの、ないよ」ぽかんとした顔で僕を見るみなも。
「マジ? だってほら、今もスーっと……」
「…………それって、恐い話?」訝しげな顔をしながらみなもが言った。
ひょっとして、僕にしか見えてないのか? この光……。
おかしいなあ、と思いつつも巫女さんのアグレッシブな舞いを見学していると、ときどき僕と巫女さんの目が合う。気のせいかと思ったけど、やっぱり何度もこっちを見てる。
あ、また目が合った。僕に何か言いたいんだろうか……?
幻想的な情景に軽くトリップしているうちに、いつのまにか神楽が終了していた。あの子はどこに?