二章 6
八坂食堂を出た僕らは、ぶらぶら朝市を見物したあと、メインストリートの繁華街を散策することにした。といってもほとんどはお土産屋さんだ。
みなもは実家へのお土産を一生懸命買っていたんだけど、それって『沖縄』土産のロゴ違いだよねえ? ヘタすっと、上から『ニライカナイ』ってシールを貼ってあるだけかもよ? 実際、都心の沖縄物産展で普通に買えるものばっかで、わざわざ送る意味あんのか、正直僕にはわかんないよ。
うろうろしてると日が傾いてきたので、みなもの浴衣の準備をしに僕らはホテルに戻った。着付けはホテルの人に任せて僕は部屋に戻り、ソファで巨大カニ型ボスを三体ほど倒し終わった頃、フロントから電話がかかってきた。
僕は早速一階へと降りて行った。
「おお…………」
ラウンジで僕を待っていたのは、一体どちらのお嬢さんですか? とばかりに艶やかな浴衣姿のみなもだった。浴衣は全体に寒色系のあじさいをあしらった柄で、髪にはブルーのエクステ(部分的に髪を増量する飾りのようなもの)と大きなコサージュが添えられていた。ちょっと南国風なところがきっとニライカナイ式なんだろうな。
「どう」
ちょっとムッツリしながらみなもが言った。お前、ツンデレだったっけ?
「あ、ああ、すごくいい。似合ってる。可愛い」
これは、まごう事なき本心だ。
「どうです? 威様。みなも姫様、素敵でしょう? どこに出しても恥ずかしくありませんよ。今夜は存分にお祭りをお楽しみ下さいませ」とコンシェルジュのお姉さん。どことなく誇らしげに見えるのは気のせいか?
歩くには少し遠いから、僕らはホテルの車で神社まで送ってもらったんだ。到着すると周囲は既に沢山の人で賑わっていて、道が大混雑していた。
キレ気味な交通整理の人に怒られそうだったので慌てて車から降りると、スピーカーから流れるお囃子や、イカやトウモロコシの焼けるいい匂いが、僕らを出迎えてくれた。お祭りは、どこも一緒なんだね。
神社の前の通りから神社側を見ると、ゆるい傾斜に造られた敷地内には木がたくさん植えてあり、その中を蛇行する参道を短い石階段が繋ぎ、参道の両脇には夜店の屋台がびっしり並んでいた。そして神社前の道路を挟んで反対側には基地のフェンスが続いていた。
カラコロと木の草履を鳴らして歩くみなも。その手を引いて石畳の参道を歩く僕。
屋台の赤や黄色の明かりに照らされて、今夜のみなもの顔はなんだかとても、その……おいしそうだ。
いやいかんいかん。まだ祭りは始まったばかりなのに、早速脳内で浴衣を脱がせてどうすんだよ俺。自分が一番けしからんヤツだったわ。……ふう。