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セブンス  作者: 三嶋 与夢
元不良な六代目
83/345

出世の裏側

 ――王宮内。


 そこで呼び出されたクラークとノーマは、書類を受け取って立ち尽くしていた。


 ノーマは大臣を相手に抗議する。


「どういう事ですか! 出世をしたのに左遷とは!」


 大臣は言う。


「左遷? 人聞きが悪くないかね? 手柄を挙げた騎士に領地を与えるのは、古くから報酬として認められてきたことだ。考えてみたまえ……今の年金と役職の手当以上の収入が手に入るのだよ」


 脂ぎった顔の大臣に言われるが、ノーマは納得しない。


 宮廷騎士として頑張ってきた。


 領主貴族になれと言われて、納得が出来なかったのだ。


 領地と言っても、飛び地である代官派遣でも人が決まらないような場所だ。


 人口は二百人もいなかった。


 クラークが大臣にたずねる。


「し、しかし大臣。私は十騎長で――」


「君の忠勤は評価している。騎士となって十年以上もよく頑張ってくれた。これで君も爵位持ちだぞ」


 騎士爵という爵位を与えられ、領主と認められる。


 しかも、飛び地でノーマとは近所である。


「……こんなの、左遷ではないですか!」


 王宮での百騎長は、確かに実入りでは領主貴族に負ける。


 しかし、王都での暮らしと田舎での暮らしは違う。


 領地の管理という仕事は大変だ。


 王都で暮らす方が、ノーマにとっては楽だった。


「口を慎めと言っている。英雄だからここまで優遇しているのだよ。出世した騎士たち。新たに騎士になった者たち……それらに与える年金を、いったいどこから出すと思っているのかね? 領地を与えられただけでありがたいと思うことだ」


 クラークは思う。


(飛び地で管理が面倒な土地を与えただけではないか!)


 クラークの方も似たようなものだ。


 人口は百二十名程度の集落だった。


「なに、王宮での官位は現状維持だ。騎士爵家と言っても、立派な貴族だぞ」


 領主貴族は王宮に税を払わないが、同時に官位があっても年金は支払われない。


 それを知っているクラークは、生き残って手柄を持ち帰ったら領主貴族になった事を悩むのだった。


 ノーマを見れば、本当に青い表情をしている。


「陛下からの褒美だ。まさか、断るとは言わないよね?」


 大臣の顔を見れば、全て分かっているのか良い笑顔をしていた。


 そして、真顔になると。


「大事なお方がセントラルにお越しになる。その前に雑事など構ってはおられんのだよ。さぁ、早く戻って手続きに入りたまえ」


 追い出されるように大臣の部屋を出るクラークとノーマだった――。






 ――サークライ家。


 ラルフは机に拳を作って強く叩き付けていた。


 ライエルによって騙されて購入したヒッポグリフは、氷が溶けるとバラバラになっていたのだ。


 ――貴方の娘が仕留めたヒッポグリフです――

 ――お買い上げありがとうございました!――


 などと張り紙までしていた。


 噂ではヒッポグリフは二体、グリフォンが一体であった。


 遠征部隊が帰ってきた時には、二体のヒッポグリフが持ち込まれたのを確認している。


 安心していたところで、商人がグリフォンを購入したという噂を聞きつけたのだ。


「あの小僧……」


 しぼり出すような声で、ラルフは机の上にある書類を見る。


 遠征部隊が全滅、もしくは大きな損害を受けることを望んでいた。


 失敗し、遠征部隊が手柄を立てて戻ってきたら、王宮は慌てて資金集めに動き出した。


 だが、百名近い昇進だ。


 苦々しく思いながらも、ここで出世をさせず褒美を減らせば外聞が悪い。


 王宮内で予定していた計画は破棄され、対応に追われることになっていた。


 そして、サークライ家はその問題に大きく関わっている。


 ノーマやクラークという指揮官に領地を与えて飛ばしたが、責任者の一人であるラルフも例外ではなかった。


 ヒッポグリフを掴まされたのを理由に、責任を押しつけられたのだ。


 爵位が一階級降格。


 役職の地位も降格。


 サークライ家は男爵家に格下げされていた。


 周囲では落ち目と認識されているので、これからどんどんと人付き合いも減るだろう。


「一族がどれだけの苦労をしてこの地位を維持してきたと……」


 悔しそうにするラルフだが、深呼吸をすると表情を元に戻す。


 思考を切り替える。


「使用人を何人か切り捨てねばならないな。ブレッドは今回で独立か……」


 真っ先にブレッドを切り捨てる事を決めたラルフは、出世して一階級だけ宮廷官位が上がったマーカスの事を考えていた。


「……ブレッドよりはマシか? だが、それだけではサークライ家を維持できない。結婚するにしても、しないにしても孫に期待するとしよう」


 ラルフは立ち上がると残った二人の娘のことを考える。


 ミランダがいるので甘やかしてしまった次女のドリスと、三女のルーシーの二人。


 その二人を、どこか外に――。


 領主貴族の下に修行に出そうと決めるのだった。


「できるだけ厳しいところにするか。その方が現実を知る機会にもなる。しばらくはセントラルから遠ざけておくか」


 ウォルト家がセントラルに来るとあって、ラルフは警戒を強めていた。


「……案外悪くないかも知れないな。しばらくは非主流派を気取っておくか」


 最近のセントラルを危ぶみ、今回の機会を利用して周囲と距離を取ろうとラルフは考えるのだった。


 そして――。


「……ミランダは惜しいことをしたな。だが、あれくらいできる男の方が安全か。シャノンも大丈夫だろう」


 親の表情をするラルフは、すぐに真剣な表情に戻る。


「今回は負けを認めよう。若いのに、手の込んだことを……ろくな大人にならないな」


 自分も人のことは言えないと思いながら、ラルフは屋敷の廊下を歩くのだった――。






「……微妙だ」


 セントラルにあるカジノを訪れた俺だが、金貨一枚を使用して結局は金貨一枚と銀貨一枚を手に入れて外に出た。


 カード、コイン、その他色々と試してはみたがしっくりこなかった。


「どうしよう……まったく面白くない」


 そう言うと、六代目が言う。


『ライエル、お前はギャンブルが嫌いか? こう賭けた時に興奮とかしないのか』


 俺は宝玉を指先で転がして否定すると、五代目の声がした。


『ギャンブルの何が面白いんだ? 六割取って四割還元だったか? カジノを経営している方が儲かるだけだ。時間の無駄だろうが』


 効率重視の五代目らしい意見である。


 だが、そこで――。


『いや、でもこういうのも大事だよ。実際問題、管理しないと違法賭博をやり始めるから僕の時にもバーデン家が管理していたからね』


 それを聞いて三代目以外が、四代目から順番に。


『ちょっと……なんですか、ソレ?』


『おい、まさか裏組織の親分は……』


『……見つからない訳ですな。バーデン家ですか……あの恩知らず共がぁぁぁ!!』


『忠臣面して、こちらが対策に乗り出すのを笑ってみていたと? こちらがどれだけあいつらに苦労させられたと……』


(あ、そう言えば領地にはそういう組織があったような……)


 俺がバイス領でごろつき共をまとめる裏組織を思い出していると、ご先祖様たちが過去にも対策を立てていたのか騒ぎ始める。


 三代目が笑いながら言う。


『あ、伝えてなかったね。ごめん、ごめん。だって、僕は戦死しちゃったし』


(これ言われると、何も言えなくなるんだよな……)


 四代目が言う。


『そうだけどさ! 裏組織が出来てこっちは散々苦労して……あぁぁぁあぁぁあ!!』


 バーデン家。


 それを聞いた俺はバーデン家の次期当主である兄弟子を思い出した。


 剣術を学ぶ際に、俺の兄弟子として一緒に訓練を受けていた。


(アルフレートか)


 妹であるセレスに忠誠を誓っており、俺をウォルト家の出来損ないと言った人物でもある。


 それまでは優しい兄貴分だったのだが、今ではろくな思い出ではない。


 カジノの入口から出ると、俺は宝玉内から聞こえる声を聞きながら人通りの多い場所を歩いていた。


 スキルを使用し、こちらを狙っているスリなどから距離を取りつつ会話を聞く。


『娘を嫁がせようとしたら拒否する訳だ! こっちが怪しんでいると思ったか? ちくしょう……』


 五代目が当時を思い出し、バーデン家に怒りをためている。


 六代目も。


『敵対する気はなかった。ただ、寄生しようとしていた、と……俺のスキルに反応しないわけだ!』


 悔しそうだ。かなり悔しそうだった。


 七代目は。


『おのれバーデン家……これまで散々甘い汁を吸いながら、わしらを嘲笑っていたと言うのか!』


 ふと、俺は思った。


(アルフレートに、今の俺は勝てるのか?)


 訓練時では最後まで勝てなかった。年齢もあったのだが、最後の方は手加減抜きでサーベルを振るってきたのだ。


 殺意というものを感じ、(ひる)んでしまったのを思い出す。


 すると――。


「あ、英雄さん」


 いきなりの声に噴き出しそうになり、周囲を見ると上着はゆったりとした服装で、下は張り付くようなショートパンツを着用しているエヴァが手を振っていた。


 少し疲れた表情をしている。


「エヴァ? ……さん?」


「なんだ、今日は前と違うのね。面白いからもう一回くらいはあの時の貴方と喋っておきたかったわ」


 悪戯っ子のような笑みを向けてくる彼女に、俺は頭をかいて顔を赤くする。


「それで、俺に何の用ですか、エヴァさん」


「エヴァでいいわよ。この前のお礼でもしようかと思ってね。かなり稼がせて貰いました」


 そういうエヴァに、俺は。


「儲けられて何よりです。それで、お礼とは?」


「昼食でどう?」


 俺は少し考えて。


「なら俺の方で食事を奢るので、デザートを頼みます。カジノで少しだけ儲けまして」


 そう言うと、エヴァが聞いてくる。


「意外ね。そういうのは似合わなそう。で、いくらつぎ込んでいくら勝ったの?」


「金貨一枚つぎ込んで、銀貨一枚です」


 エヴァが微妙な表情をする。


「そ、そう……金額が大きすぎてビックリしたわ。金貨一枚で銀貨一枚……び、微妙なのかしら? それなら、食事は任せて、デザートは私持ちで。お腹空いたのよね」


 時間は昼を少し過ぎたくらいだ。


 俺はエヴァを連れてどこか手頃な値段の店に入ろうとすると、エヴァがお勧めの店を教えてくれた。


「セントラルに来てから、教えて貰った店なら案内出来るわ。ついてきて」


 そう言われてついて行くと、そこは表通りから外れたところにある店だった。


 入ると、こぢんまりとしていたが、綺麗に掃除のされている店だ。


 客を見ると、エルフの割合が大きかった。


「俺が入ってもいいのかな?」


「いいわよ。お金を払うならお客様だからね」


 そう言ってエヴァがカウンター席に座ると、俺もその横に座った。


 今日の稼ぎはセントラルに来て一番だったと言うエヴァの話を聞いていると、エルフの店主が俺たちの席に来る。


「エヴァの恋人か? お前、歌が私の恋人とか言っていたのに……若い連中が悲しむぞ」


 そう言って笑っていたのは、青年のエルフである。


 ただし、エヴァは。


「言わないでよ、おじさん。あ、こっちの彼はライエルで、私の情報提供者! サービスしてよね」


 おじさんと呼ぶので驚いて店主の顔を見ると、相手は理解したのか説明してくれる。


「エルフは老化が他の種族より遅いからね。長生きもあって、こんな見た目なのさ。さて、大事なお客様ならサービスはしておこう。リピーターは大事だからな」


 エヴァに任せると、彼女は注文を行なう。


 奥へと戻っていく店主が戻っていくと、慌ててエルフの店員が来た。


「お、お水をお持ちしました」


「あんた……もう、店長に注文を頼んだわよ」


 エヴァが呆れていると、年若いエルフの少女が落ち込んでしまう。


「え? 店長の娘さん?」


 そう言うと、エヴァが首を横に振る。


「私より少し年上だけど奥さんよ。ナンパとかしないでよね」


「……俺をどういう目で見ているんだ」


 すると、宝玉から声がする。


 四代目だ。


『仕方がないと思うけどね。ここ数日を思い返して、反論してみるといいよ。さぁ!』


 楽しそうな四代目の声に、俺はここ数日を思い返してしまった。


 忘れようとすればするほど、鮮明に記憶がよみがえってくる。


(違う。あの時の俺は本当の俺じゃないんだ!)


 五代目が言う。


『普通は回数を重ねるとそれなりに制御出来るんだが、お前の場合は……普通の人間なら、お前のスキルを持っているともう五回以上は成長を経験しているかもな。成長に大量の経験値が必要で、急成長するから精神的にも抑えが効かないんだと思うぞ』


 そんなのを言われても納得出来ない!


 暗くなっていると、エヴァが慰めてくる。


「ちょ、ちょっと! 冗談じゃない。というか、アレだけ美人を引き連れているのに、なんでそんなにメンタルが弱いのよ」


 俺はエヴァに言うのだ。


「思い出したくない過去がよみがえるんだ。エヴァもそういう過去があるだろ?」


 すると、エヴァは首を横に振るのだった。


「私、成長後にテンションが上がっても歌詞が思い浮かんだりするだけだし。他は色々と聞くけど……人間ほどに急激な変化は私たちにはないわよ」


 エルフが羨ましくなった。


「面白かったんだし、いいじゃない。これからからかわれるネタになるし、開き直れば?」


「そんなの嫌だ!」


 すると、オロオロとしている店員さんが、俺たちの言い合いを何とか止めようとするのだった。






 エヴァとの食事を終え、休日をどう過ごすか考えていると忙しそうにしているクラークさんを見つける。


 何やら農具を扱っている店に顔を出して、交渉しているようだった。


 店主は難しい表情で断っており、それを聞いてクラークさんも肩を落としている。


 宮廷騎士であるクラークさんが農具を購入するのは想像出来ず、何かあるのかと声をかける事にした。


「クラークさん!」


「おや、ライル君」


 二人で近くの通りにあるベンチに座り、事情を聞くと三代目が言う。


『人口が百二十名程度の集落か……』


 俺は領主になるクラークさんに、なんと言って良いのか分からなくなった。


「いきなり領主ですか?」


「私も驚いているが、決定には従わないといけない。しかし、色々と動こうにも何をやれば良いのか……」


 ノーマさんも領主になるようだが、あまり嬉しそうではなかった。


 四代目が言う。


『集落にも色々とあるからな。職人がいないと近隣と協力しないといけないし。王宮の貴族や騎士には大変かもね』


 五代目は。


『集落の領主ね。ま、実入り次第で美味しくもあるんだが、基本的には貧乏だよな』


 六代目は。


『俺たちでは集落の管理など書類上の事ですからね』


 七代目。


『わしとしては、早い内に寄親に連絡を取るべきだと思いますがね。それと、状況を詳しく知らないと動けないと思いますが』


 それらの意見を聞いて、三代目が笑う。


『アハハハ、何を言っているんだい、君たち……できる事なんかないよ』


 俺は宝玉を握って説明を求めた。


 疲れた表情をしているクラークさんを見て、何か助言をしたかったのだ。


(なんか良い方法を教えてくださいよ!)


 すると、察した三代目が言う。


『あのね。いきなり領主が来ても基本的には余所者なの。一年から二年はそこで生活して、そこのルールを覚えないと駄目だよ。王宮もドロドロしているだろうけど、小さな集落でも人間関係は色々とあるんだ。それを理解してから、領地の方針を決めるんだ』


 四代目が言う。


『……代官がいたなら、会ってみるのも良いかも知れませんね。場合によっては、荘園とか持っていると、王都にいる間に話を付けておかないと面倒ですし』


 三代目が言う。


『荘園を買えば良いよ。ついでに色々と現状を聞いておけば儲けだよ。グリフォン退治の英雄が頼めば喜んで教えてくれる、って!』


 ある意味脅しではないだろうか?


 そう思っていると、三代目がアドバイスをしてくれる。


『基本的には名士の意見を聞いて調整、問題起これば仲裁。領主なんて言っても、全部が全部をやる必要はないし、一定の距離を持って付き合いをすれば良いんだよ。やることをやって、あまり関わってこないなら向こうは良い領主だと思ってくれるし。ま、その土地にあったやり方というのがあるからね』


 それでいいのか? そう思う俺だった。


 だが、四代目がここで。


『そうだ。跡取りはいるのか、クラークに聞いておこうか。ついでに王宮に色々と申請出来ると思うよ。俺の時代の知識で古いから、確かではないけど』


 三代目が俺に言う。


『ライエル、基本的に相手を見なよ。クラークさんにあったやり方もあるから、無難なアドバイスでいいんだよ』


 俺はクラークさんにアドバイスをするのだった。


「あの……」


「ん?」


 落ち込んでいたクラークさんに、俺はご先祖様たちのアドバイスを伝える。






 ――クラークは、王宮に出向くと代替わりの申請を行なっていた。


「父さん、流石に十五歳で当主とか若すぎるよ」


 クラークよりも少し背の高い少年は、王宮内で困惑している。


 息子に対して、クラークは言うのだ。


「形だけと言っても、ここで領主になっておくのは悪くないぞ。向こうに行ってからではこちらに来て申請をしても時間がかかる。今ならある程度は融通が利くからな」


「グリフォン退治の英雄だから? 父さんは真面目だけど、本当に退治したとは未だに信じられないよ」


 自分の息子ながら人をよく見ていると思いつつ、クラークは王宮内で動き回っていた。


 代官として派遣された騎士の家を回り、領地のことを聞くなどして荘園を持っていれば買い取ると言って回ったのだ。


 ほとんどの代官が荘園を持っており、小銭稼ぎ程度の感覚だったようだ。


(塵も積もれば……酷い話しだな)


 向こうでの生活もあるために、元代官たちから必要なものを聞いて揃える準備もしている。


 クラークの息子は、代替わりの手続きやその他諸々で疲れている様子だった。


「今日はこのまま帰れるんだよね?」


「悪い……このままお見合いをして貰う」


「え?」


 クラークは、息子に伝え忘れたと言って謝罪をするのだった。


「向こうではその……嫁探しも大変なようだからな。それに、こちらとの繋がりもあった方が良いそうだ」


「き、聞いてないよ!」


 慌てる息子に、バタバタして伝え忘れた事をクラークは言う。


「すまん! だが、こっちも大変なんだ。職人の次男や三男を紹介して貰う事になっているから、そちらの方にも出向かんと……それにな、今ならまだグリフォン退治の英雄として名前が通る。今しかないんだぞ」


「……これ、絶対にグリフォン退治とかしない方が良かったよね」


「……それを言うな」


 息子は表向きの事情しか知らないので、クラークも怒れなかった。


(それにしても、やることが多い)


 やることが分からなかったよりもマシだが、クラークは忙しさに目眩がするのだった。加えて、セントラルから移住者を引き連れる事も考えている。


 そうすれば、人で溢れかえっているので、王宮が補助金を出してくれるのだ。


(次は従卒として頼りになりそうなものを……これは、本当にライエル君に色々と教わっておいて良かった。一人ではとてもここまで)


 感謝をするクラークだが、そんなライエルの知識も宝玉のご先祖様のものであるのを知らないのだった――。


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