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セブンス  作者: 三嶋 与夢
動物大好き効率厨な五代目
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サークライ家

 サークライ家の屋敷を訪れた俺たち。


 普通なら大きな屋敷を見て驚くところだろうが、驚いているのはクラーラとモニカだけであった。


 俺は領主貴族の元はついても跡取り。


 ノウェムも同様だ。


 狭い王都という制限もないので、屋敷に関してはむしろノウェムの実家であるフォクスズ家の方が大きい。


 アリアも元子爵家――名門出身なので驚かない。


 ミランダさんとシャノンは、実家であるから懐かしいと言った感情を持っているはずだ。


 そう思って二人を見るが……。


「う~ん、なんか前にも増して微妙な」


 苦笑いをするミランダさんに、シャノンは嫌そうな表情をする。


「ちっ! あいつらいるじゃない。どっかに嫁げば良いのに」


 屋敷の門をくぐって玄関まで来る。


 やはり身内だから対応が早く、用件の確認などされなかった。


 だが、屋敷の中からは――。


「なんであいつらが帰ってくるの! お父様、私がこの家の婿を迎えるという話で決まっていましたよね!?」


「ふざけないでよ! お姉様の相手は使用人じゃない! 私の恋人の方がずっとマシよ!」


 女性の言い争う声が聞こえてくる。


 モニカが言う。


「まぁ、なんというか……流石はこの娘たちの実家ですね。気性の激しいことで」


 ニヤニヤと笑いながらミランダさんとシャノンを見ている。


 クラーラは屋敷をキョロキョロと見ていて、落ち着きがなかった。


「こんなお屋敷には来たことが……あの、礼儀作法とか知識でしか知らないんですが?」


 ノウェムに助けを求めるクラーラを見て、宝玉から三代目の声がした。


『身内だし、気にしなくて良くない? 呼び出したのは向こうだからね。というか、クラーラちゃんに手を出す奴はボコボコにするね。……ライエルが』


 俺かよ! そんな感想を持っていると、アリアが言う。


 以前は仲が良かったためか、相手側の当主を知っているようだ。


「ラルフさんは気持ちがあればある程度は許してくれるわよ。普通に挨拶をして、あとは黙っておけば良いの」


 そんな事を言うアリアに、ノウェムは心配そうに言う。


「アリアさん、もしかして礼儀作法に関しては?」


 アリアがノウェムから視線を逸らした。


「習ったわよ。けど、もう何年も前の話なの! 忘れているところも多いのよ」


 泣きそうなアリアに、ミランダさんが笑いながら言う。


「冒険者仲間を連れてくる、って伝えているから、礼儀に関しては心配しないでいいわよ。それより、ライエル?」


 俺を見たミランダさんに、頷くと革製の小さなケースを持ち上げた。


 アラムサースで引き払った屋敷の代金と、合わせてこれまでに支援して貰った金額を用意したのである。


「俺が持っていていいんですか? 自分で返した方が――」


「いいのよ。その方が面白そうだし」


 面白そうと言うミランダさんに、首をかしげた俺はケースを持って玄関が開くのを待った。


 屋敷の中から聞こえてくる言い争う声は静まり、ドアが開くとそこには灰色の髪をした紳士風の男性が立っていた。


 少し疲れた感じが出ているが、そこには触れないことにする。


 スーツを整え、俺を見る【ラルフ・サークライ】さんは、ミランダさんとシャノンの父でもある。


 妻を失ってからは、後妻を迎えていないようだ。


 そのため、サークライ家は四姉妹で婿を取る必要がある。


「失礼した。では、皆様方……ミ、ミランダ?」


「何よ、お父様」


 以前とは印象が違うせいか、ラルフさんは俺たちを見て少し困惑している。


 それに、シャノンが普通に立っている姿も……。


「……おい、なんで急にそんなに大人しくなった」


 モジモジとして、似合わないシャノンを見てそう口にしてしまう。


「だ、だって、久しぶりにお父様に会うから……痛っ!」


 ミランダさんがシャノンに握り拳をお見舞いすると、ラルフさんやその後ろにいた面子がポカーンとしていた。


「何するのよ!」


「いつまでも病弱に振る舞うんじゃないの! もう一人でも大丈夫なんだから、しっかりしたところを見せなさいよね」


 こちらの姉妹も五月蝿くなってきたので、俺はラルフさんに言う。


「あの、ミランダさんとパーティーを組んでいるライエルと言います。あ、こっちはお土産になりますね」


 王都で売られているお菓子を、ミランダさんの見立てで選んだ物を渡す。


「あ、あぁ、すまない。以前とは印象が違いすぎて驚いてしまったよ。玄関で騒いでいても始まらない。二人とも、いつまで言い合っているんだ」


 困ってしまっているラルフさんを助けつつ、俺たちはサークライ家の屋敷へと足を踏み入れる。


 ドレスを着た二人の年頃の娘を見た。


 黒髪で三つ編みをした髪を後ろでまとめている眼鏡の少女は【ドリス・サークライ】。


 紺色のドレスを着ており、眼鏡をかけていた。


 垂れ目の視線は、俺たちを胡散臭そうに見ている。


 そして、もう一方の黄色のドレスを着ている濃い緑色の髪をした少女は【ルーシー・サークライ】だ。


 長い髪を背中まで伸ばしており、ミランダさんと印象は似ている。


 そして、視線はミランダさんとシャノンを見ていた。


「今更戻ってくるなんて……」


 歓迎されていないのが分かるが、ラルフさんが言う。


「ドリス、ルーシー……二人はお客様の相手をしなくていい。下がっていなさい」


 ラルフさんがそう言うと、二人が俺たちを睨んでから屋敷の奥へと去って行った。


 その様子を見て、四代目が言う。


『宮廷貴族のお嬢様、って感じだね』


 五代目も同意していた。


『姉が戻ってきて、自分たちの今後が心配なんだろうな。領主とは違った意味で食い扶持を得るために必死だからな』


 六代目が言う。


『ミレイアが嫁いでおいて、こんな事になっているのが許せないのですが?』


 七代目は――。


『宮廷貴族などこんなものですよ。わしの時代ではかなりの数が粛正されましたがね。呼び出されて来てみれば、まったく……』


 怖いことを言う。


(そう言えば、相談役だったとか言っていたな。かなり酷い時代だとは聞いていたけど…・・)


 しかし、二代目がついて行けないようだ。


『宮廷貴族か……引き継ぎの時に会ったことがあるだけだな。陛下に面会して忠誠を誓って……それだけに十日以上も待たされたぞ』


 四代目が言う。


『こちらにコネがないと待たされますね。あとは賄賂ですか? 十日も待つくらいなら、いくらか渡せば良かったのでは?』


 五代目も同意見だ。


『そっちの方がはるかに効率は良いな。ま、それを許す環境は問題だがね』


 二代目はボソリと。


『……そんな金もなかったんだよ』


 本当に苦労をしてきたんだと思い知らされつつ、俺は屋敷に通されるとミランダさんと二人でラルフさんの相手をする事になった。






 ソファーに座って紅茶を飲んでいるが、味がしなかった。


「……つまり、これは結納金ではない、と? 本当なんだろうね?」


「は、はい」


 アラムサースで屋敷を売り払い、それまでかかった資金を返すことになった。


 俺がラルフさんにケースに入った金貨を差し出すとミランダさんが――。



「それ、結納金だから」



 そう言ってしまったのだ。


 そこからラルフさんに淡々と質問攻めにあい、ようやく誤解が解けたところだった。


 二代目が言う。


『この娘、こわい』


 六代目は。


『ちょっとした遊び心ではないですか!』


 内心でちょっとでは済まない! と思っていると、ミランダさんがラルフさんにたずねた。


 先程とは違って真剣な表情だ。


「それで、なんで今更呼び出したのかしら?」


 今までと違った印象がある娘を前に、俺はラルフさんの視線をチラチラと向けられて非常に気まずかった。


 三代目が言う。


『娘を食べちゃった、とか思っているんじゃない? ほら、男で変わる女の子も多いからね』


 五代目が呆れる。


『追い出した娘を気にして? それはどうなんだろうな』


 ラルフさんは溜息を吐きつつ言う。


「……お前たち二人を追い出したのは事実だ。否定する気もない。だが、同時に理由もあった」


 そう言って、ラルフさんは俺の名前を呼んだ。


「【ライエル・ウォルト】……元ウォルト家の跡取り息子だね? ダリオンやアラムサースでの噂は調べさせて貰ったよ」


 宝玉から聞こえる声に、少しだけ緊張が混じった。


 六代目だ。


『ふむ。法衣貴族だったか? 子爵ともなれば伝はあるというところか』


 俺に対してどう相手が動くのか?


 そんな事を思っていると、ミランダさんがラルフさんに言う。


「……お父様でも、仲間……特にライエルに手を出すなら、私も本気を出すわよ」


 挑発的な娘の視線を受けても、ラルフさんは表情を変えなかった。


 むしろ、笑っている。


「お前がそんな事を言うとは思わなかったよ。安心するといい。我がサークライ家もウォルト家とは縁のある家だ。私も、そしてお前にもウォルト家の血が流れているんだよ。もう、昔のことだがね」


 ミランダさんがそれを聞いて驚いているが、俺は知っているので表情を変えずに紅茶を飲んでいた。


 気まずい。


「私が気にしているのは、ウォルト家の人間がお前とシャノンに近づいたことだ」


 俺が反応を示すと、ラルフさんが俺を睨み付けていた。


「ライエル君、一つだけ聞いていいかな?」


「どうぞ」


「君は実家の意向で動いて、ミランダとシャノンに近づいたのかね?」


 俺に対する質問を聞いて、七代目がアドバイスをくれる。


『正直に答えなさい、ライエル。相手は既に情報を持っている。お前が家を追い出され、これまでどんな状況だったかもある程度は把握しているだろう』


 俺は宝玉を一度握ると、そのまま答えた。


「実家は関係ありません。追い出されましたからね」


 ミランダさんが言う。


「お父様、知っていてそういう事を聞くのは……」


 ラルフさんが溜息を吐く。


「分かっている。だが、こうでもしないと落ち着かないのだよ。お前も数年前に出会っただろう? セレス・ウォルトに」


 俺がカップを置こうとした瞬間に聞こえた名前に、驚いて顔を上げてしまった。


 六代目が言う。


『動揺するな、ライエル』


 平静を装うが、相手には俺の感情が理解できているようだ。


 そして、ミランダさんとシャノンを追い出した理由を語る。


「あの時からだ。ウォルト家からお前の教育を行ないたいと申し出があった。いや、正確に言うならお前を気に入ったのだろうな。理由を付けて呼び出そうと動いていた」


 教育とは、貴族同士で息子や娘を相手の家に送って育てる事だ。


 身内では情も出てくる。場合によっては、その家に鍛えて貰うために行なうのだ。


 五代目が言う。


『……おかしくないか? なんで教育してやるから寄越せ、なんて言い分が通る?』


 七代目が言う。


『わしの時代でもウォルト家に修行を依頼する家は多かったのですが、こちらから修行を付けてやるなどとは流石に言えませんでしたね』


 俺はそこを聞く。


「教育してやると、俺の実家が言ったのですか?」


 ラルフさんは紅茶を飲んでから、俺の問いに答えた。


「今の王都もそうだが、特にウォルト家の動きがどうにもおかしいのだよ。跡取りである君を追い出した頃から、付き合いを止めると言いだした家も多かった。それ以前からも行動がね……」


 聞けば、俺が部屋に軟禁されているような頃から、ウォルト家はおかしくなっていたようだ。


 そして、ラルフさんが言う。


「領主貴族であるウォルト家は、文武共に優秀な家だ。私だってそんなところに娘を修行に出せるなら……そう思っていたところに、娘を修行させてやる、という手紙が来てね」


 あり得ない対応に即座に修行に出す事を諦めた、というラルフさん。


 だが、そんなラルフさんの説明を聞いていたご先祖様たちは――。


 二代目から順に言う。


『優秀……俺の苦労は報われたんだろうか?』

『絶対に武は僕の活躍だと思うね! あの頭でっかちの尻拭いをした僕の!』

『なら、文は俺かな? 色々と大変だったんだよぁ』

『優秀、ね。ま、生き残れば優秀と言えるのが世の中だ。今は違うけどな』

『そうなんですよね……今は違うんですよね』

『わ、わしのせいではないです! あの馬鹿息子がぁぁぁ!』


 俺は咳払いをしてから聞く。


「ミランダさんを修行に出したくないから、アラムサースに送り出したのですか?」


 ミランダさんが疑った視線を、ラルフさんに送る。


「そんなの聞いてないわよ」


 ラルフさんは真剣な表情で俺たちに言うのだ。


「……数年前に、セレスという少女が王都に来てからどうもおかしいんだよ。今まであり得なかった無理な要求が通った事もある。普通は距離を置くところなのに、わざわざウォルト家に近づいた家もあった」


 問題のある家からは逃げられるなら逃げる、それが貴族でもある。


 逃げられない場合もあるのだが、基本的には距離を置く対応をするだろう。


 ラルフさんは言う。


「私も王宮で働いて長いんだが、それでもこんな事ははじめてだよ。それに、ミランダとシャノンを家から出したと言うと興味をなくしたみたいでね。それ以降は声がかからなくなったよ」


 ミランダさんが言う。


「……確かに何かありそうだったけど、それで? 今回呼び出した理由は何? 私とシャノンがここにいるのはまずいんじゃないの?」


 今の話の流れから言うと、確かに俺たちがここにいるのはまずい。


 王都から――いや、国からすぐにでも逃げ出すべきだった。


(あいつに……セレスに来られると、俺ではどうしようもできない)


 二度だ。


 二度も成長を経験したが、セレスに勝てるところが想像もできなかった。


 圧倒的な力の差を、俺は思い出してしまう。


 ラルフさんの表情が疲れたものになる。


 これまでの真面目な会話とは違い、事情を説明してくれた。


「……ドリスとルーシーの喧嘩は聞こえていたか?」


 ミランダさんは鼻で笑った。


「格が違い過ぎる相手との結婚? 馬鹿よね。どちらか一方は諦めればいいのに」


 既に家を追い出された形になっているミランダさんが、婿を迎えるというのはラルフさん的にも認められないのだろう。


 ウォルト家の誘いを断っており、ミランダさんを家に戻すつもりはないようだ。


「私やシャノンに戻ってこい、って言わないわよね?」


「そんな事をして同格の家から婿を迎えると? 私もそれはできないと理解しているし、もうお前たちの人生だ……好きにしなさい。ただ、私の意見を聞いて貰えるなら、ライエル君はちょっと」


 三代目の声が聞こえた。


『ライエル君はちょっと! 言われたね、ライエル』


 面白そうに笑っている。


 七代目が怒鳴る。


『ライエルの何が不満だ、この宮廷ネズミが!!』


(お爺さま、落ち着いてください)


 そう思っていると、ラルフさんが言う。


「真面目そうなんだが、その……あの数の女性を養うのは、冒険者では難しくないかね? 男の夢かも知れないが、実際にハーレムを築いている男に娘を取られるのはちょっと」


 俺もそう思う。


 七代目が言う。


『……確かに。今のライエルはそう見えるな』


 二代目が言う。


『養ってはいけるな。良くも悪くも優秀ではある』


 良くも悪くも、のところに棘があるように感じた。


「誰を選ぼうが私の勝手でしょ? それで、本題はなんなの? ドリスとルーシーの馬鹿二人を止めろ、ってでも言いたいの?」


 ラルフさんが「昔はもっと可愛かったのに……」などと、ミランダさんを見て悲しそうにしている。


 俺を見る視線が鋭くなった気がした。


「いや、諦めさせたいのもあるが、それ以前にやらかしてくれた」


 ラルフさんが説明をする。


「仕事の事で無理矢理家に押しかけた騎士がいた。その時に二人が話を聞いたらしい。直轄地にあるジオに村に騎士団を派遣する事になっている。数が足りずに義勇兵を募るのも決まっていてね。公表する前の事だったんだ」


 聞けば、ジオニ村の近くに【ヒッポグリフ】が住み着いたようだ。


 鷲の頭部と前足に、馬の胴体と後ろ足がついたような魔物である。


 空を飛ぶだけに、厄介な魔物であった。


 ついでに言えば、周辺の魔物たちまで引き連れているらしい。


 俺は疑問に思って聞いてみる。


「王都には騎士団や兵士も充実しているのでは?」


 冒険者が住みにくいのが王都である。


 そういった場所は、騎士団や兵士がしっかりしているところが多いのだ。


 ラルフさんが言う。


「ヒッポグリフもそうだが、最近は騎士団の派遣が続いていてね。人手が足りないんだ。今度送り出す集団も、十騎長を中心として送り出すことが決まっている」


 十騎長というと、武官で言えば騎士たちのまとめ役だ。規模によっては副官でもあり得る。


 ただ、今回の相手を考えると、少し物足りなく感じてしまう。


 六代目が言う。


『……アレかもしれませんね』


 五代目も同意だったようだ。


『人減らしか? 今の王都で? 人手が足りないと聞いていたが……いや、足りないのは騎士か』


 ブツブツという五代目の意見を聞いていると、二代目が吐き捨てるように言う。


『はっ! どうせ王都の連中には、小さな村なんかその程度なんだろうさ』


 隠された意味でもあるのかと思っていると、ラルフさんが言う。


「あの二人が結婚を望む相手が、話を聞いて志願したんだ。いや、志願させられた、と言った方が正しいかな? 今更取り消すことなどできない。できれば、巻き込まれた彼らを守って欲しい」


 それが、ラルフさんが俺たちに頼んだ依頼だった。


 ミランダさんが言う。


「守って欲しい? 魔物を倒しに行くのよね?」


 俺も不思議に思った。


 今更逃げることができない立場なのだろうが、どうして助ける必要があるのか? ラルフさんにしてみれば、いない方が都合は良いはずだ。


(こんな事を考えると、なんだか黒くなっていく気がするな)


「……使用人の【ブレッド】は良く働いてくれる。【マーカス】は家族思いの青年だ。どちらも、ドリスとルーシーのわがままで死なせるには惜しい青年なんだよ」


 ミランダさんが言う。


「失敗するのが確定しているみたいじゃない!」


 ラルフさんは言う。


「あぁ、だから逃げ帰ってくるだけでいい。この依頼、引き受けて貰えるかな……ライエル君? 金貨百枚までなら用意しよう。できれば、娘二人は置いて行って貰いたい」


 ラルフさんは、ミランダさんではなく俺を見ていた。


 ミランダさんが言う。


「ライエルに依頼……しかも、私とシャノンは置いて行け、ですって?」


 四代目が言う。


『娘は置いて行け、ってか。これ、かなり危険な依頼じゃないかな?』


 ――試すようなラルフさんの視線を見て、俺は何か隠しているのではないか? そう思わずにはいられなかった。


 二代目が言う。


『こいつら嫌いだな。小さな村一つ潰れても構わない、って感じがするわ。やってらんないね。本当に腹が立つ』


 小さな村の領主だった二代目は、思うところがあるようだ。


 そして、三代目が言う。


『それで放置するんですか? 二代目がそれでいいなら、僕たちも断るようにライエルに言いますけどね……』


 二代目は――。


『くそっ! ライエル、お前が決めろ!』


 悔しそうな二代目は、どうやら俺には参加して欲しそうな感じだった。


 小さな村一つが潰れる。


 そんな話を聞き、試すようなラルフさんの視線――。


 俺は言う。


「……引き受けましょう。ただし、ミランダさんもシャノンも俺の仲間で、パーティーのメンバーですから連れていきますけどね」


 この依頼を、引き受けることにするのだった。

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