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セブンス  作者: 三嶋 与夢
実は黒いのか? 三代目
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アラムサースギルド

 宿を確保した俺たち三人は、ギルドへと向かう事にした。


 まるで迷路のような学術都市アラムサースで、通りがかる人に道を聞きながら冒険者ギルドを目指した。


 通りも綺麗で、道行く人たちは清潔感がある。


 だが、どうにもゴチャゴチャとした都市であるのに変わりはなく、迷いやすい。


 スキルを使って場所を確認したのだが、入り組んだ場所にあるために利便性に欠ける冒険者ギルドが、アラムサースのギルドの特徴だろう。


「荷馬車がこっち側から来ていると言うことは、あちら側は通りにくいのか」


 迷路を抜けてギルドに到着すると、ダリオンよりも規模の小さな建物がそこにあった。都市の規模の割に小さい印象を受ける。


 一階はどこも一緒なのか、まるで市場のような場所になっていた。


 冒険者や荷馬車が出入りをして、持ってきた魔物の素材や魔石を売り払っている。


 時には商人がそれを購入し、大量に荷馬車に乗せて外に出てきていた。


「ギルドはどこも変わりがないように見えるわね」


 アリアが呟くと、ノウェムも同意する。


 しかし――。


「外から見れば一緒でしょうね。ですが、やはり場所によってギルドの雰囲気は変わるものです。バイスでもそうでした」


 バイスとは、俺の実家であるウォルト家の領地だ。


 大都市と言える規模であり、冒険者ギルドも存在している。


 ただ、関係に関して俺は余り知らない。


 七代目が言う。


『一応は場所を用意しているが、犯罪者予備軍の集まりだな。魔石の確保のためにおいているが……普通にわしの時代でもあまり必要ではなかったな』


 冒険者の多くは、ならず者……傭兵や賊も冒険者を名乗れば、冒険者である。


 それらの違いは、本人が何を名乗るか、によって決まるのだ。


 当然、ギルドも犯罪者は取り締まるが、全てを管理できているかと言えば怪しいとしか言えない。


 活動するホームを変更し、逃げ切った犯罪者もいる。


 そうした冒険者を狩る冒険者も存在しており、賞金稼ぎと呼ばれ対人に特化した連中だ。


 六代目も同意見のようだ。


『兵を出せば魔物の素材も魔石も手に入る。仕事だって豊富だ……だがな、どうしても枠に収まらん連中は出てくる。仕方がないとも言えるな』


 底辺の受け皿と思っている七代目と六代目に、三代目は違う意見を言う。


『随分と厳しいね。利用できるから利用する、でいいと思うけど? 魔石の利権を握っているし、傭兵の元締めみたいな連中だよ。敵に回しても意味がないよ。警戒しつつ、適度な距離感を維持するのが大事だよ』


 どうやら、三代目はギルドを利用する考えを持っているらしい。


 二代目が補足する。


『そう言えば、お前の時だったな……うちにもギルドができたのは』


 俺の実家にギルドが出来たのは、三代目の時のようだ。規模的にはそこまで大きく発展していない時期なのに、よくギルドが出来たものだと思う。


 三代目が、俺の疑問に気が付いたのか答えてくれた。


『辺境で魔物が一杯いるから、魔石や素材を得るには環境が良かったんだよね。僕も下手にきつく縛らなかったし』


 領主によってはギルドから税を大量に取る事もある。


 その場合、魔石や素材の買い取り価格に影響が出て、結果的に苦労しても稼げない場合があった。


 しかし、それでは冒険者が離れていく。余計に稼ぎが落ち込んで、結果的に問題が起こることもあるらしい。


「ノウェム、バイスのギルドはどんな感じだったんだ? 俺は行ったことがないから知らないんだよ」


 ノウェムに、今のバイスギルドを聞いてみると、少し困った顔をしていた。


 悪い意味ではないようだが、説明が面倒らしい。


 ただ、簡単に言えば――。


「可もなく不可もなく、という感じでしょうか。やたらと犯罪などには厳しいですが、税が重いという訳もなく、軽くもない。生きて行くには困らないギルドですので、割と冒険者の方々も多かったように思われます」


 それを聞いて七代目が喜ぶ。


『わしの時と同じだな。うむ、良い感じだ』


 冒険者が嫌いな七代目は、傭兵に苦労させられた事があるようだ。


 その原因がギルドだったのだとか……。


(詳しい話を聞くときもあるかも、な)


 俺たちはアラムサースのギルドに入る。






 ダリオンと違うのは、やたらと大きな掲示板がいくつもある事だ。


 大きな掲示板の裏表も使い、そこには数多くの依頼が張り出されている。


 内容は、必要な魔物の素材を集めてくれ。

 部屋の掃除をしてくれ。

 実験台になってくれ。


 等々、凄い数の依頼が張り出されていた。


「なんだ、これ……ダリオンの比じゃないぞ」


 俺が困惑していると、アリアも同じようだ。それらを見て、顔をしかめている。


「この依頼おかしくない? 部屋の掃除とか書いているけど、場所は学園の研究室よ。そんなところに冒険者を入れるの?」


 全く理解できない依頼が、数多く張り出されている。


 受付に向かうと、そこにはダリオンよりも多くの職員が仕切られたカウンターで仕事をしていた。


 若い人から年寄りまでいるのだが、淡々と作業を進めている印象だ。


 狭いスペースで、窮屈そうに作業をしているように見える。


 四代目がそれを見て言う。


『随分と独特なギルドだね。まぁ、領主がいないから締め付けも緩いのかも知れないけど……なんというか、冒険者的に満足するような依頼は少ない感じかな』


 指定した素材の回収など、冒険者らしいと言えばらしい。


 だが、それは学術都市が管理している迷宮で、指定された魔物から素材をはぎ取る事が書かれている。


 俺たち三人には、少々厳しい依頼だった。


(迷宮なんか、三人で挑めば浅いならともかく、管理されて深そうな迷宮は厳しいだろうな)


 近くで魔物討伐に出かけ、生活費を稼ぐ方が良いかも知れない。


 三人でホーム異動届を提出すると、受付の職員は淡々と説明をしてきた。


「アラムサースははじめてですか?」


 眼鏡をかけた七三分けの男性職員は、ホーキンスさんと違ってどうにも気持ちがこもっていない。


 ホーキンスさんが例外的に真面目だったのだろうか?


 ノウェムが返事をする。


「三人ともはじめてです。ここでは学ぶことが目的でして、あまり依頼をこなすような事はないと考えています」


 すると、職員が俺のギルドカードを装置にかけて確認する。


「……依頼に関する評価は合格ですね。緊急依頼も達成し、ギルドの評価は【A】となっていますよ? ダリオンですか……あそこは冒険者の質が悪いですから、何とも言えませんが、アラムサースの依頼もしっかりこなしてください。できないなら、できないとハッキリ言って貰えると助かりますけどね」


 少し見下した態度を取ってくる職員だったが、腹を立てるのも馬鹿らしいので俺はギルドカードを受け取るとそのまま頷いておく。


 二代目は鼻で笑いながら言う。


『この手の連中はどこにでもいるな。自分たちの方が優れています、っていうの? 自分たちと違えば格下扱いとか』


 三代目が二代目をたしなめる。


『学術都市と言うから、それだけ知識には自信があるんじゃないのかな? 大目に見てあげましょうよ。実害はまだありませんし』


 “まだ”という部分の口調が強かった気がするが、俺は職員に返事をする。


「できる限りは頑張りますよ」


「……そうですか。では、こちらのギルドカードは預からせて頂きます。説明は必要ですか? 必要なら別料金です」


 金を取るのか? そう思ったが、俺は首を横に振る。


 本当に淡々としている職員に挨拶をして、手続きを終えた俺たちはギルドを後にするのだった。






 外に出た俺たちは、先程の職員に関して愚痴を言う。


 宿屋の近くにあった軽食屋で、食事を終えるとそのまま不満を述べる。


 主にアリアだ。


「なんか、感じの悪いところよね」


 職員の態度もそうだが、ダリオンを見下しているのが気に入らないのだろう。


 アリアにとって、ダリオンはゼルフィーがいる街だ。


 そして、自分たちを受け入れてくれた街でもある。王都であるセントラルの法衣貴族だったアリアの一族は、当主の悪行のため一代で爵位を召し上げられた。


 そのままセントラルを追放されたところで、受け入れてくれたのがダリオンだったのだ。


 ノウェムはその辺も理解しているようだが、職員のフォローもする。


「ダリオンとは違いますよ。でも、淡々と仕事をされているなら、割と楽でいいですよ。ホーキンスさんのような職員であれば断りづらい依頼も、彼のような職員なら断れますので」


 フォローと言うよりも、少し黒い発言だった。


 だが、こちらが気を使う必要がないのは、ある意味において楽だった。


 俺はこれからの事を二人と話し合う。


「それくらいにして住むところを考えないか? ダリオンと違って手頃な物件はないし、今度こそアパートだろ。三人が住むのか、もしくは狭い部屋を三つ借りるのか。早いうちに決めて探しに行かないと」


 アラムサースはその都市の特色から一軒家よりもアパートが多い。


 理由は学生の出入りが多く、一軒家を用意する人が少ないためだ。


 多くの若者たちが学びに来るアラムサースでは、アパートの方が主流なのである。


「出来れば三人が良いですね。基本的にお金の方はしばらくは問題ないでしょうし、ここでどれだけ稼げるか調べてから決めても良いかも知れませんよ」


 ノウェムの提案を参考にしつつ、明日は近くで魔物を討伐に向かおうと考えた。


 ご先祖様たちも同意見だが、三代目だけは――。


『図書館行こうよ。図書館。しばらくは大丈夫だし、実入りの良い依頼を探して達成すれば、しばらくはどうにかならない?』


 すでに気持ちが図書館の方に向いているようだ。


 俺としても図書館には行きたいが、日々の稼ぎも重要な問題である。


 それに関して、お金が大好きな四代目が怒鳴る。


『ここでの収入をしっかり調べてからだろうが! そんなんだから、領地の事も――』


 基本的に財政関係や内政に手腕を振るった四代目は、眼鏡をかけたインテリ風の外見をしている。


 主に内向きのことなら、この四代目が非常に頼りになる。


 だが、今の俺たちに管理する領地はなく、金銭関係はノウェムが管理しているので出番がない。


 三代目が呆れた風に言う。


『お金に厳しすぎるね。誰に似たのかな?』


 四代目の父である三代目がそう言うと、五代目がその場を仕切る。


 普段は四代目の役割だった。


『その辺にしておけよ。いくらライエルの魔力量が増えたと言っても、初代のスキルも毎日のように魔力をため込むんだ。今更、ライエルを少し鍛えるために騒いでも意味がないだろうが』


 以前――。


 俺は成長しても魔力が増えないタイプだと思われていた。


 サーベルを二本使用する事から、器用さが成長をするタイプだと思われていたのだ。


(というか、腕は二本あるからサーベルも二本使えるよね)


 俺としてはまったく不思議ではなかったが、それでもご先祖様たち曰く――。



『『『お前はおかしい!』』』



 だ、そうだ。


 そして、魔力を増やすために、ギリギリまで魔力を使用させる鍛え方を強制的にやらされていた。


 しかも、俺がそれを知らされていないのに、だ。


 結果的に、俺は器用なタイプではなく全体的に大幅な成長を遂げるが、経験が人の倍は必要という大器晩成型であると判明している。


(俺のスキル【エクスペリエンス】は、経験値を多く獲得するスキルだけど、常時使用しているから魔力の消費は今まで通り多いんだよな)


 魔法も得意なのだが、使用制限のある俺にとって魔力の消費は大きな問題の一つだった。


「明日は外で魔物を退治するとして、今日はこの周辺の情報を集めるか。そうなると、図書館で調べるか、誰かに聞けると丁度良いんだけど――」


 すると、俺たちのテーブルに声がかかる。


「もしかして、アリア?」


 声を聞き、アリアが振り返った。


 その表情は、どうして相手がここにいるのかという驚きを示している。


「やっぱり! アリア・ロックウォードよね! 私よ【ミランダ・サークライ】よ! 王都で何度か遊んだことがあるから、もしかしたらと思ったんだけど」


 相手は少し大人びた女性だった。


 年頃は俺たちとそう変わらない。


 特徴的なのは、緑色の瞳とセットである薄い緑色をしたウェーブのかかった髪である。


 少し小悪魔的につり上がった瞳は、彼女の魅力の一つだろう。


 大人びた印象を持ちながら、活発さのあるどこか子供のような女性――それが、ミランダ・サークライであった。


「ミランダ? なんであんたがここにいるのよ。あんた、サークライの長女じゃない!」


 アリアが呆れるように言う。


 学術都市は次女や三女はいてもおかしくないが、長女となると話が変わってくる。


 主に他家に嫁入りか、実家の婿取りを行なう立場だ。


「うちは四姉妹だから、二人くらい好きに出来るのよ。それより、ここにいるなら教えてくれれば良かったのに……」


 ミランダが少し寂しそうな表情をすると、アリアは気まずそうに言う。


「昨日到着したの。それまではダリオンにいたわ」


 簡単に説明したアリアは、それ以降はミランダの顔を見ることがなかった。


 その様子を見て、ミランダは苦笑いをする。


「別に私は気にしないのに……シャノンとも一緒に遊んだ仲じゃない」


 シャノンという女性が出てきたが、話しの流れから言えば友達かミランダの妹であろう。


 アリアは無言を貫いた。


「……ごめんね。私は三年前からここで学園に通っているの。家の場所を教えるから、良かったらたずねてきて。シャノンも喜ぶわよ」


 そう言ってメモに住所を書き、ミランダは受け取らないアリアの代わりに俺にメモを渡してきた。


「失礼ですが、アリアとの関係は?」


 俺がパーティーメンバーです、とハッキリ言おうとすると――。


「ライエル様の恋人の一人です」


 横からノウェムが口出ししてきた。


 ポカンとするミランダだったが、俺が慌てて誤解を解こうとすると笑い出す。


「アハハハ、ごめんなさい。今のが面白かったから。あのアリアに恋人か……しかも、恋人の一人、って複数? 結構美形だと思ったけど、なかなかやるわね」


 肘で小突かれ、俺は離れていくミランダに右手を伸ばす。


 誤解を解く前に、そのまま去って行ってしまった。


 項垂れると、そのままアリアの方を見る。


「良い人そうだったけど、何か不満でもあるのか?」


 アリアは溜息を吐いた。


「そんなじゃないわよ。実際に良い人よ。一つ年上だけど、面倒見も良くてうちに悪い噂がある時も私をかばってくれたわ……けど、面倒見が良くて損をするタイプなのよ。お人好しで、人を悪く言わない良い人」


 お人好しで損をするタイプと、アリアはミランダを評価する。


 その意見に、ノウェムも同意見だった。


「裏表のない人でしょうね。いえ、我慢をするタイプでしょうか? それにしても、セントラルから多くの学生が来ていると聞いていましたが、アリアさんのお知り合いに会えるとは思いもしませんでした」


 俺も同じ思いだったが、アリアは頭を抱える。


「ミランダはいいわよ。けど、他の連中に会うことがあったら……」


 凹んでいる様子だ。


 俺は聞いてみた。


「そう言えば、なんで無視なんかしたんだ? 良い人なら話して良かったんじゃないか?」


 そう言うと、アリアはだからだ、と答えた。


「良い人よ。そのせいでミランダまで陰口を叩かれたわ。だから私は自分から離れたのよ。その後すぐに、セントラルを追い出されたけどね」


 何かと本人も色々とあるようだ。


 ただ、ここでは昔のように仲良くしても良いのでは? と、俺は思う。


(友達は大事にすべきだよな……特に、きつい時に離れない友達は)


 自分にはいなかったそういう同性の友達を持つアリアが、少しだけ羨ましかった。


 俺にとってノウェムは恋愛対象であり、友人関係ではない。


(最近で言えば、ロンドさんたちかな? 今頃どうしているのか……)


 俺はミランダのメモを見ながら、ロンドさんたちは元気でやっているのか心配するのだった。






 宿に戻って就寝する前。


 俺は会議室と呼んでいる円卓がある場所に来ていた。


 部屋の中央である円卓の真ん中には、大きな青い宝玉が輝いている。


 円形のその部屋には、六つのドアがそれぞれ用意され、ご先祖様たちの部屋になっていた。


 椅子は全部で七つ。


 そんな会議室に、今日は珍しく六代目だけがいる。


「あれ? 今日は一人なんですか。五代目は?」


 俺が視線を動かして五代目を探すと、六代目は苦笑いをする。


『俺もいつも親父と一緒じゃないぞ』


 六代目のスキルは、五代目のスキルを前提にして生み出されたスキルだ。周辺の敵味方を判断し、そして罠の場所も知らせてくれる【サーチ】というスキルの所持者だった。


 二つを併用する事で破格のスキルとして使用できるのだ。


 頭の中に、周囲の地図が浮かび上がり、敵や味方の位置が分かるというのは敵からすれば恐ろしいスキルだろう。


「なら、俺を呼んだのは六代目ですか?」


『おう』


 五代目の意見に同意することが多く、珍しくウォルト家では親子仲が良い世代だ。


 七代目である祖父とも、あまり喧嘩をしている様子を見たことがない。


 乱れた髪を後ろにながしワイルドな印象がある六代目だが、五代目の前では大人しかったりする。


 普段から、五代目とセットで一緒にいるので、それが普通に感じてしまっていた。


『実はな……俺はサークライ家の事を知っているから、伝えておこうと思ってな』


「ミランダさんの実家ですか?」


 六代目は、黒い噂の多い人物だった。


 賄賂を送り、王都の法衣貴族と繋がり自分の有利になるように動いていた、という噂が多い。


 そのため、ウォルト家では一番の腹黒とされてきたのだが……あまり、そういった雰囲気には見えない。


 むしろ、三代目の方が腹黒だった。


『昔は付き合いがあったからな。俺の妹がサークライ家に嫁いだからな』


 そんな事を聞いたが、初耳だった。


 いや、俺が知らないだけで、実家では付き合いがあったのかも知れない。


 ただ、俺の父……つまり、八代目からすると二代前の繋がりでしかない。


 バンセイムの貴族として見れば、すでに婚姻関係もなくなっているような物だ。


「実家と繋がっている可能性があると?」


『可能性は薄いと思うが、気にしておけ。俺もあんまり疑いたくはないんだが……あれだ。仲の良い妹は少なかったからな』


 それを聞いて、俺は一つ思い出した。


 六代目の弟や妹は非常に多かった。


 何しろ、五代目は嫁と妾を合わせて五名。五名もの女性を囲っていたのだ。


 しかも、五人共がウォルト家の家訓をクリアしている。


 それだけの女性を探したことも驚きだが、何よりも驚くのは――。


「……たしか、下には弟や妹が三十人ぐらいでしたか?」


『……おう』


 微妙な顔をする俺と六代目。


 五代目はウォルト家で一番の好色家として有名なのだが、実際に会ってみるとドライな印象を受ける。


 とても色に狂っていたようには見えない。


「なんか、うちのご先祖様は聞いている話と、実際のギャップが大きくて……」


『そうなんだよな……俺も自分がウォルト家一の腹黒だって聞いた時は、ショックだったぞ』


 六代目とそのまま世間話をしつつ、俺はミランダさんが実家と繋がっている可能性を考えるのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 改稿やプロローグ等の話の追加自体は良いのだけど、やたらと説明臭くなって逆に読みづらくなっている。
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