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セブンス  作者: 三嶋 与夢
逸話とかかなり曲解されて伝わっているかもね十二代目
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戦場の策士

 メイに乗ってガレリア陣営の後方へと降り立った俺は、そこからレオルド君のいる天幕を目指していた。


「おぉ、ここからでも見えるな。しまったな……こんなに面白いなら特等席で見るべきだった」


 俺の声に、メイは横を見た。そこには大きな穴が出来ており、飛んできた魔法によって土が抉られていたのだ。


「安心しなよ。ある意味で、ライエルは常に特等席だと思うよ。僕、最近になって色々と分かってきたんだ」


 巨大な九つの頭を持つ大蛇、そして八本腕の獅子の武人。隣では炎の巨大な武人が、氷で出来た女性のような姿をした魔物と戦っていた。こちらもノウェムたちの魔法を見て、威力があると思ったのか試している様子だった。


(魔法関係に関しては才能があるな。アリアが接近戦特化なのに対し、二人は魔法での遠距離戦も得意か)


 これは実に楽しみだと思いながら、慌ただしいガレリアの天幕に到着するとレオルド君が俺を見て。


「ライエル殿ぉ!!」


 抱きついてきた。涙目で、今にも倒れてしまいそうなほどに青い顔をしていた。


「あぁ、俺がライエル殿だ。さて、レオルド君……初陣で手柄を立てないか?」


 俺は親指を突き立てて、レオルド君に近くにルソワースの部隊が接近しているのを知らせるのだった。どうやら、一部の領主がわざとルソワースの兵士たちを通してしまったらしい。


 その様子を観察しており、俺はガレリアの天幕へと来ていたのだ。周囲が派手な戦場に目を奪われている時に、こちらは地味に武功を稼いでおくつもりだった。


「いや、あの! 姉上たちを止めてからの方が!」


 俺は笑いながら。


「いや、あれは面白いというか、必要だから続けさせる。ガス抜きも必要なんだよ。それに、疲れている方が俺には都合が良いからな」


 そう言ってレオルド君に周囲の兵士たちを集めさせ、ルソワースの部隊を待ち受ける体勢を整えるのだった。


 俺はサポートに徹し、質問されれば答える程度に留めてレオルド君の指揮を見ていた。別段悪くはなかったし、無難という感じだ。


 基礎は出来ており、悪くないのでそのまま任せて奇襲をしようとする敵を囲み、そして出て来たところで挟み込んで討ち取った。


 派手な戦場で、ここだけ地味な戦いをしたが武功は武功である。


 例え、決死の覚悟で侵入した五十名を三百名近くで囲んで倒しても武功は武功である。


「初陣で手柄を挙げたね。よし、これでレオルド君も立派な騎士だね」


 俺はレオルド君に手柄を立てさせ、その片付けをさせると巨大なゴーレムたちが戦う戦場を見た。


「……四代目なら、金が取れるとでも言いそうだな」


 そう呟いて、俺はメイを呼び寄せるのだった。






 ――グレイシアは、炎で作り出した巨人を操っていた。


「なる程、これなら威力も増して範囲も広がるな!」


 同じように氷で巨人を作り出したエルザは、女性型の巨人の髪飾りを掴んで頭部の上から巨人を操作していた。


 巨人の肩に乗っているグレイシアは、横から飛んできた魔法を避けるとそちらに視線を向ける。


 大蛇の一体が、グレイシアの方へ頭部を向けていた。正確には、ミランダのゴーレムによって向けさせられていたのだが、攻撃されたのは事実である。


「邪魔をして――」


 やり返そうとすると、エルザの作り出したゴーレムが体当たりをかけてきた。炎で出来たゴーレムを通り抜けると、氷のゴーレムは溶けて細くなっている。


 しかし、エルザの姿が見当たらない。


「――上!」


 グレイシアが上を見上げると、エルザが杖に氷の大剣を作り出して振り下ろしてきていた。


 だが、そんなエルザは空中で身を翻すと遠くへと離れて行く。グレイシアがノウェムたちの方を見れば、大蛇が獅子の武人に巻き付いて開いた口をこちら側に向けさせていたのだ。


 魔力が集まり、そのまま獅子の武人が口から風の塊を撃ち出してきた。


 風に巻き込まれ、グレイシアの炎のゴーレムはその形を崩してしまう。まだ操作とゴーレムの維持になれていない証拠だった。


 すると、後ろから溶けた細い女の腕を持った氷のゴーレムがグレイシアを握りしめる。


 エルザが自分のゴーレムの腕を駆けながらグレイシアに近付くと。


「捕まえたぁ!!」


 グレイシアの首を狙って大剣を一閃させようとしたのだ。ただし、エルザの方もまだ操作が甘いのかグレイシアは体に炎をまとってゴーレムの手を溶かすとそのまま下へと落下する。


 溶けて抉れたゴーレムたちが荒らした地面に着地をすると、グレイシアが息切れを起こしていた。


 エルザのゴーレムも氷が割れるように崩れていき、そしてグレイシアの前に着地をした両者共に息切れを起こしていた。


 慣れない事をしたのもあるが、全力を出して戦い続けたのはこれが互いにはじめてなのである。ペース配分が乱れていた。


 近くでノウェムとミランダがゴーレムで戦っている状況下で、二人は向き合うと自分の武器を構えた。


 この一撃で終わらせようと……したところで、空から声がかかる。


「双方、武器を下ろせ! 周りを見ろ!」


 ライエルだった――。


 ――アリアは、エルフたちが戦場を見物している場所まで到着した。


 スキルを連続で使用して、戦場を駆け回ったアリアは息を切らしてエヴァの前で倒れるのだった。


「……ライエルは?」


 汗が流れ落ちるアリアに、エヴァは水筒を差し出しつつ空を指差した。無情にも、アリアに遅かったと告げるのだった。


「今はあそこ。ほら、もうクライマックスよ」


 エヴァの自棄になった笑顔を受けて、アリアは指し示された方向を見た。そこには、雲間から差しこむ光を受けた麒麟に乗るライエルの姿が見えた。


 アリアはそのまま地面の上で意識が途切れていく。そんな中で。


「絶対に許さないからね、ライエル……」


 ライエルへの怒りを口にするのだった――。







 全員が麒麟姿のメイに跨がる俺を見ていた。


 戦場の兵士たちの視線を受けながら、俺はゆっくりとメイに降下するように指示を出した。


 皆の視線を集めつつ、巨大なゴーレムを作り出したノウェムやミランダは互いにゴーレムをただの土塊に戻していく。


 戦場は酷かった。


 以前よりも“成長”を経験したノウェムやミランダの実力が、ここまで上がっているのは嬉しい誤算であった。笑いがこみ上げてくるが、ノウェムもミランダも俺を見る視線がいつもより冷たい。


 ノウェムは本当に怒っているようで、そしてミランダはまだ不満そうにしていた。ノウェムに勝つつもりだったのだろう。


 地上に降り立つと、俺はメイの背中から声を張り上げた。


「周りを見よ!」


 そこには、エルザやグレイシアだけではなく、ノウェムやミランダの戦闘に巻き込まれた各陣営の兵士たちが倒れている姿があった。


 確かに酷い光景だが、これを狙ってやっていたのも事実だ。


(裏切り、踏みにじって美味しい思いをしてきた連中だが、こうなると憐れでもあるな)


 恐がり、そして動かなくなった者たちも大勢いた。これまで彼らがしてきたことを考えれば、随分と甘い処置かも知れない。


(自分たちも弱者を踏みにじって来ただろうに。さて、四代目の教えを実戦するときが来た!)


 俺は周囲を見ながら。


「なんたる無様か! 敵だけではなく味方をも巻き込んで! この戦争、双方に勝者なし! これ以上戦うというのなら、このライエル・ウォルトが相手になる!」


 アリアから預かった剣を抜き、メイの背中で剣を天に突き立てると両陣営の兵士たちが膝を屈していた。


 ここまでの戦闘になるとは思ってもいなかったのだろう。そして、同時に自分たちが利用してきた存在が、ここまでとは思わなかった。


 更に言えば、そんな存在が外の世界にはまだいると見せつけることも出来た。


(完璧だ。完璧だぞ、俺!)


 グレイシア、エルザ――両名が協力して、ノウェムやミランダと戦えばどうなっていたか……もしかすれば、負けていたかも知れない。


 だが、現状では先に二人がペース配分を見出して倒れたように見えた。タイミング的にも最高ではないだろうか?


 色々と裏で動けて、レオルド君にも小さいながらに手柄を立てさせることも出来た。今回の結果は満足いくものになった。


 両陣営の兵士たちの中から、武器を手放すものが現われる。一人、また一人と武器を手放していく兵士たち。


 俺はメイから降りてぬかるんだ地面を歩くと、膝から崩れ落ちた二人の女性を見下ろすのだった。


「……まったく、こんな事をして」


 呆れたように言うと、俺よりも年上の二人が気まずそうに視線を下げていた。男に免疫がないとは思っていたが、実に良い感じだ。


「計画にはなかったはずでは?」


 グレイシアさんがポツポツと話し始めた。


「いや、最初はレオルドの晴れ姿を見て貰おうと思って……それだけだったんだ。なのに、オートマトンが引き上げて連絡もつかず」


 エルザさんが俺を見上げながら。


「ち、違う! 私は使者に連れ去られたと……そ、それで……」


 俺は首を横に振る。その後も、俺が奪われたから使者を出したら、互いに疑心暗鬼に陥ったような事を言うのだ。想像通りで自分の才覚が怖くなった。


(さて、最初は落としておくか)


 そして冷たい視線で二人を見下ろし、冷たい口調で言うのだ。


「いつから俺が貴方たちの部下になったと? それに、その様子ではまるで恋人のような感じではないですか? ハッキリ言いましょう。俺は貴方たちのものではない」


 堂々と、そして自信を持って言い切る。グレイシアもエルザも、俯いて悔しそうな表情を浮かべる前に、己を恥じているような感じだった。


 確かに浮かれていたと自覚があるのだろう。


(ここだな)


「俺はお前たちのものじゃない。だが、お前たち二人はもう俺の所有物だ。勝手に怪我をすることは許さん。ほら、顔を見せろ」


 しゃがんで二人の顔から泥を拭いてやると、二人がポカーンとしていた。そして、頬を染めていた。やはり、俺の顔の良さは大陸でもトップクラス。


 微笑めば大体の事はどうにかなる。二人を立ち上がらせると、俺は二人に言う。


「お前たちの全ては俺のものだ。今後は俺に尽くせ。そうすれば……この大陸を手に入れる男である俺の未来をくれてやる」


 疲れており、判断力が鈍っているのも大事なポイントだ。この微妙な流れに違和感を覚えないほどに、疲れとショックを与えた後に優しくする。


(四代目……今、俺は貴方の教えを実戦しています。ムードを作り、疲れさせ判断力を奪い、女性に優しくする……四代目の教えのおかげです)


 ムード作りは大事だと言っていた。だが、判断力を鈍らせるために疲れさせ、そして焦らせるのは戦闘での話だった。女性に優しくする前に冷たくしろとは聞いていないが……応用だと思えば問題ない。


 すると、二人とも感動した様子で――。


「はい。この槍にかけて」


「私はこの杖にかけて、ライエル殿……様のために働きます」


 男に免疫がないのか、二人とも俺をキラキラした目で見てきた。可愛いではないか。しかし、そんな俺たちを周囲は違った視線で見ているのだった。


 だが、結果だけを見れば……。


(よし、ミッションコンプリートォォォ!!)






 俺が両陣営にエルザとグレイシアをメイに乗せて運んだ。


 そこでは、ルソワースの高官たちに囲まれて、俺は問い詰められた。


『言いましたよね! 女王が自分のものだって言いましたよね!? 責任取ってくれるんですよね!!』


 ガレリアでも同じだ。レオルド君を囲んだ諸侯に。


『貰ってくれるんですよね? 嘘だったら本当に困りますからね。困りますからね!』


 そう言われた。あれだけ派手に暴れたのだ。どちらも自分たちがどれだけ危険な状況だったか理解しただろう。


 そして、はじめて本気でぶつかり、エルザもグレイシアも自分の実力を測れたはずだ。


 色々と終わって自分の天幕へと戻ろうとすると、そこには俺の仲間が微妙な顔で待ち受けていた。


 ノウェムは心配させたようで、いつもより厳しい目つきをしていた。


 ミランダは笑顔だが目が笑っていない。きっと、途中でいなくなったのを怒っているはずだ。


 アリアは疲れた表情をしながら、俺の方を睨んでいる。きっと、俺を捜し回って捕まえられなかったのだろう。


 シャノンは周囲を見てオロオロとしていた。雰囲気が悪いので誰にも甘えられないのでどうしたらいいのか分からないようだ。


 クラーラはブツブツと文句を言っていた。チラチラとミランダを見ていたので、きっとゴーレムの魔法を使用出来るのを隠していた事に腹を立てているはずだ。


 エヴァは……メモを確認して、周りの空気を無視している。


 メイも同じだ。というか、俺と一緒に逃げた共犯者である。


(まったく、こいつらはこの程度で怒って……可愛いじゃないか)


 モニカがプルプルと震えながら、俺の方へとやってくる。


「チ、チキン野郎ぉぉぉ!! ラインが! チキン野郎とのラインが回復しないんです! 私とチキン野郎の絆がぁぁぁ!!」


 そんなモニカに、外部バッテリーを持つ一号がボソリと。


「儚い絆でしたね」


 そうモニカの後ろで呟くのだった。二号も三号も、モニカを見てそう思っているに違いない。


 モニカの動きがどうにもおかしいと思っていたら、俺は魔具を使用したままだった。柄を握って、全てが終わってしまった事を考えると、歴代当主とミレイアさんの怒りはどうなるかを考え……。


(しまった。忘れていた。まぁ、結果に対して影響がないからいいか。それにしても、このまま怒られるだけというのも芸がない)


「よし、お前らちょっと並べ。ご褒美の時間だ」


 ……秘策を思いつくのだった。


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