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セブンス  作者: 三嶋 与夢
逸話とかかなり曲解されて伝わっているかもね十二代目
203/345

ルールブック

タイトルを変更してみました。


 ルソワースからロルフィスへと戻った俺たちは、小さな村にあった空き家を借りる事にした。


 小さな田舎の村という感じの場所だが、最近ではセルバからロルフィスに統治が移行して小さな混乱を迎えている。


 そんな小さな村に滞在している理由は、ガレリアとルソワースに対応するためであった。


 小屋のような空き家の横にはポーターが置かれ、モニカがヴァルキリーズと修繕を行なっている。


 というか――。


「なんという酷い作り! チキン野郎がこんなところで寝泊まりしたら、風邪を引いて寝込んでしまいます!」


 手には見慣れない道具を持ち、壁を次々に剥がしていく。


 釘や板をヴァルキリー一号が受け取ると、それを並べていた。


「駄目ですね。なんというか板も釘も揃っていません。誰か資材の買い付けに行かせませんか? おい、量産機共、走って買って来いよ」


 モニカと同じ金髪ツインテールの一号は、ない胸を張って近くを歩いていたヴァルキリーズに命令していた。


 ただ、ヴァルキリーズは笑顔で首を傾げ。右手は親指を下に向けて突き立てていた。首を斬るジャスチャーも加えている。


「テメェに命令権はない。勘違いするなよ、試作機の金食い虫が」


 そう言って自分の仕事に戻るのだった。なんでこんなに仲が悪いのか気になるところだが、元はモニカと同じ古代人が作り出したオートマトンだ。コアを流用しているので、影響が出ているのかも知れない。


 一号が舌打ちをする。


「ちっ、性能の違いを見せつけるべきでしょうか」


 屋根の取り外しにかかったモニカは、全てを解体する勢いだった。


 俺はそれを見ながら。


「いや、別にポーターで寝泊まりしてもいいけどさ……せっかく借りたのに、意味がなくなるだろうが」


 以前はガレリア、ルソワースと交流していた街があったのだが、立地の悪さからロルフィスは利用しないことにしていた。


 セルバの領主はほとんどが処刑され、国外追放を受けた者たちも多い。そのため、統治に問題が出ている。


 以前、アデーレさんがベイムの屋敷で処理していた書類の中には、そういった事情のものも紛れ込んでいた。


 周囲を見れば、俺たちに怯えるような、そして忌々しそうな視線を向ける村人たちがいた。


 俺はその光景を見て。


「なぜでしょうね。ロルフィスは税を下げ、上手くやっているように感じるんですけど」


 セルバの統治時代よりも、税は低い。元が高すぎたというのもあるが、生活は楽になっているはずだ。そして、ここはガレリア、ルソワースと繋がる重要な村だ。街道整備も積極的に進められている。


 四代目が、俺の疑問に答えてくれた。


『それは簡単だ。人は状況が変るのを嫌うからね。極端な話をすれば、前にいた領主が少し悪い程度の奴なら、ロルフィスの統治なんか領民は受け入れないよ。ロルフィスに統治される方が幸せになれるとは限らない。税だけじゃない。戦争、風習、その他諸々と面倒も多いわけだ。彼らにしてみれば、ライエルは余計な事をした張本人だからね』


 生活が豊かになるのを喜んで受け入れると思ったが、そうではないようだ。


 俺は少し村を歩いてみることにした。


 小さな村だが、歩けばそれなりの距離がある。日は傾き始め、すれ違う村人たちは額に汗を流して働いていた。俺が近付くと、警戒したようにこちらを見てくる。


 確かに、セルバを侵略する際に協力した。


 恐れられても仕方がないと思いながら、俺は村を見て歩いた。


 すると、三代目が村を見ながら。


『あれだね。割と土地に恵まれているね。今まで税を搾り取られても、生きるだけなら問題なかった。領主が何を考えたのか分からないけど、この規模をもしかしたら維持していたのかも知れないね』


「維持ですか? 発展した方が実入りもいいのでは?」


 周囲に誰もいないのを確認して、俺は三代目に質問した。


 三代目は、俺に溜息を吐きつつ。


『はぁ、分かってないね。同じ国でも周囲が攻め込んで略奪をする事もあるんだよ。しかもここはガレリアとルソワースに近い。規模が大きくなれば、真っ先に狙われると思わないか? しかも、規模が大きいとそれだけの働きを求められるんだ。僕ならそれなりの規模にするけど、前の領主はわざと村を発展させなかったのかも知れないよ。小さいと身動きも軽くなるし、都合が良いときもあるんだよ』


 五代目が俺に言う。


『街道整備も、いざとなれば敵だってその街道を使って素早く攻め込んでくる。整備が進めば不安も出てくるんだよ。しかも、上は事情を知っているのか、知らないのか分からないロルフィスの人間だぞ。村の連中も不安だろうさ』


 ただ、大きくする。発展するだけでも、反発する領民はいるというのを知った。


 違った考えもあるのだと思っていると、シャノンが俺のところにヨタヨタと走ってきた。いや、走るよりも歩く方が早い感じだ。


 ミレイアさんが、シャノンを見ると。


『歩くより遅いとは……なんて頼りない。でも、そこが可愛く見えませんか?』


 七代目がいつものように失言した。


『叔母上よりは可愛いでしょう……ね?』


 宝玉からは、銃を撃ったときのような音が聞こえてきた。「ターン」という音だ。そしてなにも聞こえなくなると、五代目が。


『……ライエル、シャノンのところに行ってやれ』


「は、はぁ」


 俺は追いかけてきたシャノンのところに行くと、シャノンは息を切らしていた。誰かに急げとでも言われたのかも知れない。


 ただ、ミランダ、アリア、クラーラはベイムに戻っている。依頼の達成はベイムまでの商人たちの護衛も含まれ、大型ポーターにはガレリアとルソワースで購入した品物も積んでいるのだ。


 俺たち全員が抜けるというのは出来ない。


(ノウェムに言われたか?)


「どうした」


 呼吸が整い出すまで待ってから、俺はシャノンに聞く。シャノンは、俺を見ながら汗をぬぐい。


「か、買い付け」


「ん?」


「……た、足りない道具を買ってきて欲しい、って。でも、ポーターを使えるのはライエルだけだから、すぐに呼んでこい、って」


 足りない道具と聞いて、首を傾げるとメモをシャノンが手渡してきた。そこには、食材や木材に釘といった道具まで書き込まれていたのだ。


「食材は足りているだろう? 随分と持ってきたはずなんだが」


 メイが大量に食べるといっても、それを考慮していない訳ではない。なので、大量の食材も持ってきている。


「ついでに、情報でも集めてきてほしいとか、なんとか」


 なんとか、とはなんだ? その辺はハッキリさせて欲しい。ミレイアさんも同じ気持ちなのか、呆れていた。


『もう、ミランダが甘やかすから。やはり、私が鍛えてあげないと駄目ですね』


 五代目はミレイアさんの表情を見ているようだ。そして、呆れてもいた。


『嬉しそうに言っているのが逆に怖いけどな』


『いやですね、父上。ひ孫との触れ合いを楽しみにしているだけですよ。ほら私は――』


 七代目が、懲りていないのか。


『曾お婆さんですからね』


 ミレイアさんの笑い声がすると、またしても発砲音が聞こえるのだった。


 シャノンはそんな俺の騒がしい宝玉を見ながら。


「ねぇ、さっきから活発に光っているんだけど?」


 俺は左手で顔を押さえつつ。


「気にするな。戻って買い出しの準備をするぞ」






 ――ベイム、ギルド東支部。


 ライエルがいないので、ミランダがギルドへ顔を出していた。しばらく依頼は受けられないというのも伝える必要があり、依頼の達成と合わせて報告するつもりだった。


 ギルド側の口車に乗せられそうなアリアは、今回は屋敷でアデーレたちに状況の説明をして貰っている。


 個室で対応してくれたのは、タニヤだった。


「一階とか三階とか分かれているけど、両方で顔を見るのは貴方だけね」


 ミランダがそう言うと、タニヤは苦笑いをする。


「そうなんですよ。職員も人手不足でして。もう少し給料を弾んで欲しいですよね。さて、依頼の達成、お疲れ様です。次の依頼はどうされますか?」


 ミランダは椅子の上で足を組み、机に肘を乗せて。


「あ、しばらく無理よ。ロルフィスで個人的な依頼を受けるから」


「ロルフィスの? まぁ、無理を言って依頼を受けて頂きましたから、いいですが……あの、期間は?」


 ミランダは笑顔で。


「ライエル次第かな」


 そう言うのだった。タニヤが、困った表情で。


「明確な期間がない、と? また何をするつもりですか? ロルフィスの王女殿下でもたらしこむおつもりで?」


 ミランダは、ライエルの行動を思い出す。否定しても、信用されないだろうと思いながら。


「ま、王女殿下には手を出さないわよ。なんでも、ウォルト家の家訓から外れているみたいだし」


「家訓?」


 タニヤが少し思案していたが、報告を済ませたミランダは立ち上がるのだった。


「何かあれば屋敷に連絡して貰えればいいから」


 そう言って、ミランダは部屋を後にするのだった――。






 かつて、ガレリアとルソワース、そしてセルバの交易地だった街は、荒れに荒れていた。


「いたか!」

「くそっ、あの野郎、ふざけやがって!」

「見つけ次第殺せ!」


 物騒な事を言う連中は、手に武器を持っていた。かつて栄えていた街は、今では活気が失われている。


 場所が微妙な位置にあり、交流する場所としては面倒な位置にある。


 そんな街の中で、武器を持った男たちが走り回っていた。


 一緒に街を訪れたエヴァは、その光景を見て頬を引きつらせている。


「なによ、これ。こんな状況で歌えるわけがないじゃない。しかも、同族とかいないし!」


 活気がなく寂れた街には、旅芸人の一座もいなかった。


 メモにある食材に資材などが購入出来るか怪しくもあるが、俺たちは買い物へと向かうことにする。


 シャノンがはぐれないように、俺とエヴァで気にかけつつ街を歩いた。


 街を歩き、そして店を覗く。品揃えの悪い店の中で、俺は食べ物を購入するとおつりを断って店主に話を聞いた。


「街が騒がしいようだが?」


 疲れた表情をしている店主は、ポツポツと語り始める。


「ルソワースから指名手配の書類が届いたんだ。前からこの街を利用している冒険者がいたんだが、どうやらガレリアとルソワースを頻繁に移動していてね。ギルドに虚偽の報告をしていたらしいんだが、どうやらガレリアの人間だとか。信用問題とか騒ぎ出して、ギルドの冒険者たちが暴れているんだよ」


 街には小さなギルドがあるそうだ。そこに所属している冒険者が、両国に関わっているらしい。


「手配書は見られるかい?」


「そこら中に張ってるぜ」


 俺はお礼を言って外に出ると、その依頼書を探すのだった。一枚をはぎ取り、そしてスキル―― マップ・サーチ・フィールド ――を使用して、街の人の動きを調べた。


 シャノンは俺を見て。


「ねぇ、なにする気? 早く戻りましょうよ」


 俺はその声を聞き流し、不自然に動く反応を見つけた。激しく動き回る反応から逃げ回り、なんとか街から脱出しようとしているようだった。


 その反応を覚えると、俺はエヴァに。


「シャノンを頼む。俺は少しだけ用がある」


 二国を行き来していた人物に接近すれば、何か手がかりが掴めるかも知れない。そう思って走り出すと、俺は逃げ回る反応を追いかけた。


 たが――。


「見つけたぞ!」


 弓矢を持った冒険者が、屋根の上を走る人物に狙いをつけていた。急いで追いかけようとするが、矢は放たれて逃げる人物の足を貫いた。屋根から落ちる人物は、地面に落ちると足を引きずりながら逃げようとしていた。


 周囲に冒険者が集まってくる。


 俺は逃げ回る人物に追いつく。すると、相手が問答無用で剣を抜いてきた。


 宝玉からは、三代目が。


『そこまで隠したい何かを持っているのかな? これは、二国につけいるネタになるかも知れないね!』


 ノリノリの三代目と意見が合うのは嫌だが、今は二国に入り込む、またはつけいれるなら情報が欲しかった。


「悪いが、ついてきて貰おうか」


 カタナを抜いて、そのまま柄で相手の鳩尾を強打した。そのまま男性を担ぐと、俺は周囲に集まる冒険者の死角を利用しながら逃げるのだった。






 滞在している村に戻ると、俺たちは捕まえた男性を取り囲んだ。


 足の怪我はノウェムが治療しており、男性は口をつぐんでなにも喋ろうとしない。なので、猿ぐつわを噛ませている。ただ、気を失っているときに身体検査は済ませていた。


 ポーターの中で、俺たちは男性の荷物を調べていた。


 モニカが、荷物の中を調べているが、目で見ているだけで中身を探ろうとはしない。


「特に変ったものは持っていませんね。何やら手紙を隠しているようですが、気になるのはこれでしょうか?」


 荷物の中から取りだしたのは、水筒だった。モニカから受け取ると、俺は水筒を振る。


 中には液体が入っている。


「これのどこに……あぁ、こういう事か」


 液体が入っているが、下の方を触ると仕掛けがあった。そこから手紙を取り出すと、猿ぐつわをした男性が暴れ始める。ロープでグルグル巻きの男性が、体を必死に動かしてポーターの中で跳ねていた。


「んー! ん~!」


 モニカが男性を見て。


「おや、随分と反応を示しますね。どうやらこれが正解のようです。しかし、なんでこんな人を連れて来たんです? リスクが大きいと思うのですが?」


 俺は手紙の中を確認しながら。


「今は少しでもガレリア、ルソワースの情報が欲しい。それに、その二国で動き回っていた冒険者だ。何か情報を持っているかも知れない。ついでに言えば、それなりに稼いでいるみたいだし」


 男性を見ると、着ている服に装備と割と金のかかるものが多かった。財布にも金貨が何枚も入っており、金に困っている様子がない。


 ただ、手紙を俺が読み進めると、男性は力なく横たわるだけになった。


「……そういう事か」


 ノウェムが俺の方を見て。


「どうしました、ライエル様?」


 俺は手紙をノウェムに預ける。少しだけ、モニカが悔しそうにしていた。


「くっ、最初にこのモニカに渡してくれれば、喜んで小躍りしたのに!」


 そんなモニカを放置すると、ノウェムは手紙の内容を確認して目を少しだけ見開いた。


「……あの、両国は本気で戦争をしていたんですよね?」


 俺は頷く。メイも同意した。


「あれで本気じゃないとか言われても、僕は嘘だと思うけどね。時々いるよね、あの手の規格外の人間、ってさ」


 メイも俺も、ガレリアとルソワースの戦争を見ていた。激しく戦う両者の戦闘は、結果的に一騎討ちの引き分けで終わっている。


 だが、そうではなかったようだ。


 五代目が呆れるように。


『マジか……あいつら、あれで馴れ合いだったのか』


 三代目もドン引きだった。


『ないよね。というか、この手紙は予想以上の収穫だけど、これが本当なら武力で両国を押さえるとかちょっと難しいかな』


 手紙には、ルソワースの女王であるエルザさんが、グレイシアさんに宛てたものだ。


 内容は――。


「今回の戦、本当にお疲れ様です。申し訳ない。思ったよりも被害が少ないと、部下たちから再戦の声が上がっています。数ヶ月以内に攻め込むと思われますが、時期はいつが宜しいでしょうか? それと、以前貰った肌荒れ用の対策のクリーム、良い感じです」


 ――それと供に、予想される侵攻ルートが書き込まれていた。


 どれくらいの規模で攻め込み、どのような行動をするから対処して欲しいと書かれていたのだ。


 七代目が頭を抱えているような声で。


『これがルールブックのつもりか? 取りあえず攻め込むから、後はなんとかして欲しいとしか書いてないぞ。これだから規格外の人間共は……』


 ミレイアさんも、困った様子だった。


『ザインとロルフィスを動かして勝てないことはありませんが、これでは双方がかなり疲弊して意味がないですね。さて、どうしたものか』


 まさか、捕まえた冒険者が、想像していた以上の情報を持っていた事に俺は驚きを隠せなかった。


「まさか、ルールブックとかどういう事だよ」


 そう呟くと、開き直ったのか男性はもうどうにでもなれという感じで、太々しく横になっていた。


 この情報をどうやって利用するか考えていると、四代目が一人だけ面白そうに。


『おや、これは俺の出番かも知れないね。戦うだけで解決しない問題もあるからね。うんうん、こういうのは結構大好きなんだよ』


 ノリノリの四代目が、俺に言う。


『ライエル、ヴァルキリーズをあるだけ持ってきて貰おうか。それから、ザイン、ロルフィスの紹介状と、ベイムの……フィデル君でいいや。防衛戦で頑張ったという証拠を書いて貰おう』


 紹介状を書いて貰い、何をするのかと思っていると四代目が言うのだ。


『ガレリアとルソワースに仕官といこうか! 外から駄目なら、中から攻めればいいんだよ!』


 ……それ、やったら駄目な行動ではないだろうか?


四代目(-@∀@)「よし、ついに俺の出番だね! 中に入り込めれば、こっちのものなんですよ! つけいるネタも仕入れた。ここからはウォルト家のターンだwww」


らいえる|-`).。oO(……僕、忘れられてない?)


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