ゲームセンターへ
ゲームセンターのお話です。
また少し、進展します。
ついに、この時がきた。
放課後。創也と教室を出ると、唐崎さんがカバンをしょって走って来た。
「お待たせ!」
「おお。野上は?」
「それが捕まっちゃって……先輩に。片付け手伝ってって。で、先行っててって──」
ん? ……もしかして、一緒に遊べない……?
「どうする? 先行くか?」
「由里葉はそう言ってたけど──」
「じゃあ、おれ待ってるよ。場所知ってるし。二人は先行ってて」
「お。なんだ? 二人きりになって何かしようってか?」
創也がニヤつく。
「そんなんじゃ……!」
「まあ、いいんじゃない? 松木どうせ何もしないし」
「それもそうか。んじゃ、野上と仲良く来いよ──」
そう言って、二人は歩いていく。
まったく……
「なんだと思ってるんだ──」
とりあえず、野上さんが来るまで下駄箱で待とう。
下駄箱に向かう途中で、家庭科室の前を通ると、甘い香りがした。
飴かな──?
野上さんが、調理している姿が頭に浮かんだ。
フライパンで砂糖を溶かして──
きっと、美味しいんだろうなぁ……
そんなことを考えながら──
*
ぼんやりと壁に背を預けて待っていると、野上さんが驚いた顔をしてこっちに来た。
「松木くん?! なんで?」
「場所、わからないんじゃないかなと思って。だから」
「あっ……そういえば──ごめんね」
野上さんが申しわけなさそうに謝ってくる。
「ううん。仕方ないよ。部活だしさ」
「でも……結構待ってたよね……あ。そうだ」
ちょっと待ってね。と言うと、野上さんはカバンを開けて、小さな小包を取り出した。
「はい。飴。今日作ったの」
コロンと手のひらに二つくれる。
「いいの……?」
「うん。待っててくれたらお礼──って言っても、美味しいかはわからないけど──」
一つをポケットに。もう一つを口にいれる。
うん……──
「スッゴく美味しい////」
初めてもらえたのが嬉しくて、思わず笑ってしまう。
「ほんとに? 良かった……//そう言ってくれると、嬉しい──//」
野上さんの頬が、うっすらと桃色に染まる。
あぁ、可愛い──
初めて見た照れた顔が、キュンッと胸を締め付ける。
「行こっか──」
「そうだね。祭ちゃん怒ってるかも……」
「大丈夫だよ。創也もいるし」
「それもそっか──」
野上さんはクスッと笑った。
それから、部活の先輩の話や友達の話、面白い話をしながらゲームセンターに向かった──
*
ゲームセンターに着くと、創也と唐崎さんは太鼓のゲームで勝負していた。
「はい。俺の勝ち──」
「あ〜! もう一回! 絶対次は勝つ!」
唐崎さんは悔しそうに太鼓を叩く。
「わかったよ。もう一回だけな──」
「やった! もう本気出すんだから!」
「さっきもそれ言ってたぞ?」
「本気の本気なの!」
楽しそうにやっていた。
野上さんの方を見ると、微笑んで二人を見ていた。
「……おれたちも何かやる?」
「そうだね。祭ちゃん楽しそう──」
「うん」
創也も楽しそうだ。まるで……
「カップルみたい──」
野上さんが呟いた。
確かに。カップルみたいだ。
もしかしたら、おれたちもそう見えるのかな……
「邪魔しちゃ悪いから、移動しようか」
「え? いいの?」
「あ……ダメかな?」
「そんなこと……! むしろおれでいいの?」
「うん。松木くんといると楽しいし」
「ほんとに?! おれも野上さんといると楽しいよ!」
「ほんと? 良かった……//」
「じゃ、こっち。可愛いぬいぐるみあるよ」
「ほんと? 見たい」
「うん──!」
よし! 野上さんにぬいぐるみプレゼントだ!
「わあ……可愛い……!」
「でしょ? 野上さん好きかなって思って」
「うん! 大好き──」
野上さんはキラキラした目でぬいぐるみを見つめている。
よし──
「どれが欲しい?」
「え? えっと……あれがいい! 黒ウサギ」
「わかった! ちょっと待っててね──」
小銭の投入口に二百円をいれる。
「頑張って!」
「うん!」
レバーを動かして、目的の黒ウサギの上にアームを動かす。
「……よし。いけっ──!」
アームがゆっくり下がって、黒ウサギを挟み込む。
「お──」
そして、黒ウサギを取り出し口に落とした──
「やった! はい、黒ウサギ」
「ありがとう! 大切にするね!」
「うん───」
昨日やりに来た甲斐があった。
良かった〜! 自分の部屋にあるぬいぐるみにかけたお金が、野上さんの嬉しそうな顔に変わったんだと考えれば、三千円なんて安いものだ!
気づかれないように、小さくガッツポーズする。
「よ。お二人さん──」
「創也」
「由里葉」
「祭ちゃん」
二人が後ろから来ていた。
「来たなら声かけろよ」
「そうだよ。メールしたのに」
「はは、ごめん」
「気づかなかった──ごめんね」
野上さんは携帯を見てから謝った。
「でも、邪魔しちゃ悪いと思って……ね?」
「そうそう。仲良くやってたから」
「……それは──//」
と創也が目をそらす。
……創也?
「たまたまよ! たまたまやってたの!」
唐崎さんもなぜか目が泳いでいる。
もしかして……
「そうなんだ……。ごめんね、声かけなくて──」
野上さんは気づいてないのか、シュン……と黒ウサギを抱きしめている。
まあ、いっか──
「そうだ。プリクラ! プリクラ撮ろうよ。今日の思い出っていうことで!」
「いいね! 撮りたい! 撮ろうよ。祭ちゃん、矢倉くん」
野上さんが賛成してくれる。
「いいよ! 撮ろう撮ろう!」
「そうだな──」
二人も賛成してくれた。
四人でプリクラを撮った。そして、時間もいい感じなのでそれでお開きになった。
今日は野上さんといっぱい話せて良かった。野上さんも楽しそうにしてたし。
一つ気になるのは、創也の態度だけど、まあ深い意味はないのかな──?
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