【おまけ】それだけで
おまけです。
本編ではないので、書き方が違います。
ゆずるのお話。
幸多から、由里葉に告白したということを聞いてから、ゆずるは静かに毎日を過ごしていた──
*
「……ふぅ。面白かった」
ある日の放課後、ゆずるは読んでいた本の最後のページを閉じて、席を立った──
*
図書室に行くと、数人の生徒しかいなかった。
ゆずるは返却ボックスに本を入れて、借りる本を探すため棚に向かう。
「……ぁ」
そしてゆずるは、いつも見ていた人物を見つけた。
その人物もゆずるに気づいたのか、笑って近づいてくる。
「実川さんも本借りに来たの?」
「うん。……幸多くんも?」
「そう。ちょっと調べ物──実川さんは何借りるの?」
「私はまだ探してる途中」
「そっか──」
と幸多は頷いてから、思いついたように言う。
「じゃあ、おれがオススメの本紹介しようか。もう読んでたらあれだけど……」
「え? でも今探してるんじゃ?」
「いいのいいの。もう見つけたから──」
と本を見せる。そして、
「じゃあ、ちょっと探してくるから、待ってて──」
と行ってしまう。
「待っててって……」
ゆずるはどうしようか考える。
とりあえず、近くの棚から目をとおし始める。
「…………」
しかし、自然と幸多に目がいってしまう。
幸多は、どれだっけ……と言いながら背表紙に手を当てながら探し、時折本を手にとって確認していた。
「お──実川さん、こっちこっち! あったよ──」
と見つけたのか、幸多が笑顔で呼ぶ。
「幸多くん、ここ図書室だから……!」
ゆずるは数人の生徒から鋭い視線を感じながら、幸多のもとに駆け寄る。
向かいながらちょっとだけ、カップルに見られたりして……//と思いながら──
「はい。これ」
とんっと、ゆずるの手に幸多は本を乗せる。
「面白いから、きっとハマると思うよ」
「ありがとう……//」
「うん。じゃ、おれもう戻るから」
「ぇ……?」
「うん?」
「……そうだよね、何でもない──」
とゆずるは本を抱きしめる。
これから先、こうして話せる時間は限られているだろう。
「じゃ、またね」
「幸多くん……!」
とゆずるは、ドアに向かい始めようとした幸多に声をかけた。
「……また、オススメの本、紹介してくれる……?」
「もちろん! じゃ、またね。実川さん」
「うん──//」
幸多はひらひらと手を振って、今度こそ出ていった。
ゆずるは、本を抱きしめたまま呟く。
「わかってる……」
私はもう、彼女になれないから。
……だから、そっと陰から見たり、たまに会話を交わせるだけで──
「十分……」
そう呟いて、ゆずるは小さく微笑むのだった──
次回、またいつか。




