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体育祭!

体育祭です。

遅くなりました(_ _)

 体育祭当日。天候にも恵まれて、風がいい感じに吹いている。


 創也(そうや)野上(のがみ)さん、唐崎(からさき)さん。それにおれ。頭には、はちまきを巻いている。ちなみに、赤──


『さて、次の競技は、一年女子によるリレーです! 張り切って参りましょう!』


 放送から流れる、放送委員の声。


由里葉(ゆりは)、行くよ!」


 唐崎さんがグッと拳を作る。


「うん……」


 野上さんは苦笑いで頷いた。

 唐崎さんはスタート地点に向かっていく。

 ……野上さん……。


幸多(こうた)、声かけてやれよ」

「創也……」

「俺は、さっき唐崎に声かけたぞ//」


 と創也は顔を背けて言う。


「……! そうだね──」


 おれは、尻込みしている野上さんに声をかけた。


「野上さん」

松木(まつき)くん……」

「頑張れ! おれ、応援するから──」

「うん……//ありがとう。頑張るね!」

「うん──」


 野上さんは微笑んで手を振ると、唐崎さんを追っていった──


『さて、準備が整ったようです。それでは、位置について……よーい──』


 ──パンッ


「始まった──」


 四人の女子たちが、一列にきれいに走っていく。

 もしかしたら、おれより速い……?


「唐崎ー! もっと行けるだろ!」


 いつの間にか、唐崎さんが走っていた。

 唐崎さんは三番手だ。創也は両手をメガホンのようにして、唐崎さんに声援を送っていた。


「頑張れー!」


 おれも声援を送った。

 唐崎さんは、片手を少し上げると、速度を上げた。


「すご……」


 思わず、呟いていた。

 創也は、行けー! と笑っていた。

 唐崎さんは二番目を抜いて、二番手になった。

 そして、アンカーの野上さんにバトンが渡る──


「幸多──!」


 創也が肩を叩く。

 野上さんがコーナーを回って、こっちに来る。

 おれは、口を開いた。


「野上さーん! 頑張れーっ! いけるーっ!」


 野上さんはパッとこっちを見ると、カアァッと顔を赤くして、うつむいた。


「……あれ?」

「お前、異性に叫ばれたらああなるだろ」

「あ……確かに──」


 余計なお世話だったよね……引かれたかな……

 一人うなだれていると、創也が含み笑いで言った。


「でも、いいんじゃね? ──見てみ」


 野上さんの方を見ると、野上さんはグングン速度を上げて、ギリギリ一番を抜いた。


「や……ったあっ! やったやった!」

「良かったな──」


 野上さんは、唐崎さんと手を取り合って喜んでいる。

 良かった……。


『それでは、一年男子による騎馬戦です! 準備してください──』

「よし。幸多行くぞ」

「そうだね──」


 創也と準備をしに、校庭に向かう。

 途中、野上さんと会った。


「松木くん──」

「野上さん。さっきはごめんね……恥ずかしかったよね──」

「あはは……//ちょっと、ね……。でも、嬉しかった。ありがとう、松木くん。頑張ってね」

「うん──//!」


 おれは笑って、野上さんと別れた。

 今度は、おれが頑張る番だ。

 頭のはちまきをグッと締め直した──


『準備が整ったようです! 男子たちの勇姿、見せてもらいましょう! それでは、よーい──』


 ──パンッ


 ピストル音と共に、動き出す。


「松木、とりあえず動くから、取れそうなやついたら取れ」

「わかった──!」


 近くを通り過ぎようとした、一組目のはちまきを取る。

 そして、次に自分より低いやつのを取った。ちょっと卑怯……?


「頑張れー!」


 ふと見ると、野上さんが応援してくれていた。

 それがいけなかったのかもしれない。

 よそ見をした時、逃げてきていた騎馬がおれたちとぶつかり、おれたちは崩れた。

 下に落ち、背中に鈍い痛みが走った──


「ぐぁっ……っ──」

『おっとお! 騎馬が崩れたー! 大丈夫か?!』


 放送委員の声が聞こえてくる。

 立たないと……立たなきゃ──

 そうこうしてる内に、放送が聞こえてきた。


『……終了です──落馬した生徒、大丈夫ですか?』


 のろのろと立ち上がり、片手を上げる。


『大丈夫なようです。──では……』


 下の人たちは、痛む所を撫でながら戻っていた。

 

「幸多!」

「ごめん……水道行ってくる──」


 駆け寄って来てくれた創也に一言残し、おれは水道に向かった──


         *


「最悪だ……」


 水で腕や膝を水で洗い流しながら、ふと思う。

 野上さんは、頑張ってたのに……おれは──


「だめだめだ……──」


 顔も洗う。冷たい……


「はい、タオル──」

「ありがとう──……野上さん?!」


 顔を拭いて見ると、隣に野上さんがいた。


「大丈夫?」

「大丈夫……てか、なんで?」

矢倉(やぐら)くんが教えてくれたの……ごめんね」

「なんで?」

「わたしが、声かけたりしたから──だから、松木くんが……」

「違うよ!」


 うつむく野上さんに、おれは反論する。

 だって、それはおれのせいだ。


「おれがよそ見したからだよ。だから、野上さんは悪くない。それに、嬉しかったんだ……//野上さんが、応援してくれたのが──だから、野上さんが謝ることじゃないよ」


 本当に。

 野上さんの悲しい顔なんか見たくない──


「……ありがとう//」

「え?」

「わたし、初めてあんなに声出したの。だから、嬉しかったって言ってくれたから。ありがとう──//」


 野上さんは、いつもみたいに笑った。

 

「……うん──//」


 野上さんと一緒に笑い会う。

 もし落ちてなかったら、きっとこうならなかった。

 少しだけ、落ちて良かったと思ってしまう。

 

 そして、背中が痛いのに気づいたのは、野上さんが背中の汚れをはたいてくれた時だった……

 この痛みは、きっと忘れないだろう──


 

 



 






休日投稿になります(_ _)

お知らせまで。

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