体育祭前日
体育祭前日です。
体育祭前日……の昼休み。
教室で、皆明日のことについて話していた。
もちろん、おれたちもその話題を話していた。
「リレーと騎馬戦が主になるな」
「騎馬戦ツラい……」
「松木くん下?」
野上さんが訊いてくる。
「ううん。上……」
「じゃあ楽じゃない?」
「帽子取らなきゃいけないじゃん? 取らないとダメだし、取られたら……」
負けちゃうし……
「あぁぁ……」
「考えすぎだろ」
「創也は下だから……」
「下は下で大変なんだよ──」
と創也は苦い顔をする。
「人を担いで走るんだから」
「それもそっか……」
すると唐崎さんが思い出したように、野上さんに話しかける。
「由里葉、リレーアンカーでしょ? 頑張ってね」
「え? あ……うん……」
「頑張りなさいよ? やるからには勝たなきゃね!」
「うん……そうだね──」
野上さんは、笑ってから暗い顔をした。
……大丈夫かな──
それから、どことなく野上さんは暗かった──
*
「……野上さん?」
放課後、トイレから教室に戻ると、野上さんはぼんやりと外を見ていた。
「ぁ……松木くん──」
振り向いた野上さんは、困ったように笑った。
「野上さん、部活は?」
「今日は──……」
「……もしかして、サボり?」
「祭ちゃんには、内緒ね」
シーっと人差し指を口元に持ってくる。
「うん……//」
あぁ……//可愛い──
思わず、顔をそらす。
「明日、本番だね」
「そうだね」
「……わたし、アンカー心配なんだ。練習のときだって、いつも皆の足引っ張っちゃって……」
「そんなことないよ。野上さん、頑張ってる──」
「え……?」
野上さんが、不思議な顔をしてこっちを見る。
「あ、ほら! 体育の授業のとき、練習してる姿見かけたから……//」
「あ……。そっか……//」
「うん。だから──おれだって心配だし、不安だらけだけど、皆がいるから。野上さんだって、リレーアンカーでも、前の人たちが頑張って繋げてくれるんだから、大丈夫だよ」
「……うん──そうだね……//!」
「でしょ? おれも頑張るからさ! 野上さんも頑張ろ?」
「ふふ……//」
野上さんは小さく笑う。
なんだろ……
「松木くんが初めてだよ。そんなこと言ったの──」
「え? あ、そう? おかしい?」
「ううん──おかしくない」
と野上さんは首を振る。
良かった……
「ありがとう──//」
「っ……//うん──//」
野上さんは、晴れやかに笑った。
明日は体育祭。上手くいくように、おれは心の中で願った──
次回、体育祭。
投稿遅くなるかもしれません(_ _)