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夏祭り!

夏祭です。

 夜。創也(そうや)と待ち合わせ場所の朝丘(あさおか)神社に向かっていた。

 行く途中も、何買う? わたがし買って! など、カップルや親子が楽しそうに話している姿が見られた。


「もう来てるかな?」

「来てるだろ」

「待たせちゃダメじゃない?」

「そうだな。でも──」


 と創也は視線を前にやった。


「楽しんでるぞ?」

「え? あ──」


 創也の視線の先には、野上(のがみ)さんと唐崎(からさき)さんが、リンゴ飴を食べているところだった。


「遅い! もう食べちゃってるんだから!」

「悪い悪い──」

「ごめんね」


 二人は顔を見合わせて、こっちを見る。

 なんだろう……


「どう? 浴衣」


 唐崎さんがくるりと回る。

 赤に黄色や青の花火柄。

 野上さんは、水色に金魚が泳いでいる。


「似合ってるよ!」

「ありがと! 矢倉(やぐら)は……//?」

「え? あぁ……うん、いいんじゃね//?」

「そっか──」


 創也は目をそらす。でも、唐崎さんは嬉しそうだ。


「……野上さん」

「うん? あ、(まつり)ちゃん、良かったね」

「え? あ、そうだね」

「祭ちゃん、楽しそうに選んでたんだよ」

「そうなんだ」

「うん──……」

「似合ってるよ」

「ぇ……//?」

「浴衣。野上さんにぴったり──」


 本当にそう思った。だから、そう言った。


「……うん、ありがとう。嬉しい……//」


 野上さんは、はにかんだ。

 そんな野上さんに見とれていた。


「じゃ、行こう! ──松木(まつき)?」

「え……? あ、うん──」


 少し浮つきながら、おれは三人について行った──


         *


 途中、焼きイカを買ったり、わたがしを買ったりした。

 そして、金魚すくいを見つけた。


「金魚……」

「野上さん、金魚すくいやりたい?」

「ちょっと……」


 と野上さんは控えめに言う。


「じゃあやろう! いいよね」

「ああ」

由里葉(ゆりは)頑張れ!」

「ぁ……うん//」


 お店の人にお金を渡して、野上さんは真剣に金魚を見つめる。


「よし……!」


 一言呟いて、ポイで金魚をゆっくり隅に追い詰める……


「あっ──」


 ポイが破けた。でもまだ、二つ残っている。頑張れ! おれも内心応援する。


「…………」


 野上さんが二つのポイを見つめている。


「……どうしたの?」

「松木くん、一回やってくれる?」

「え? うん。いいけど──」


 一つ受け取って、野上さんと並んでやる。


「よし!」


 一匹は絶対とるぞ!


「ぁ……」


 横で、野上さんが小さく声をあげた。

 見ると、ポイが破けていた。

 しょんぼりと野上さんはポイを見つめる。


「ふぅ……──」


 ゆっくり、ポイを金魚の下に忍ばせ、入れ物に滑らせる。


「やっ……た──」


 金魚が入れ物の中で泳いでいる。

 それをお店の人が袋に入れてくれた。


「はい──」

「いいの?」

「だって、野上さんのだから」

「ありがとう……」


 遠慮がちに野上さんは受け取った。

 金魚を見つめる目が、いつもより幼く見えた。


 その後、花火を買って遊んだ。

 花火をする時も、野上さんは金魚を離さなかった。

 それだけ嬉しかったのだろうか。

 そしたら、おれもスゴく嬉しい──


 




どうだったでしょうか、

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