買い物
買い物に出た幸多。
「重っ……暑いし……」
セミがガンガンに鳴いている。
そしておれは、両手にビニール袋を持っていた。
なぜ、両手にビニール袋を持っているのかと言うと、母さんに買い物を頼まれたのだ──
『ちょっと幸多、買い物行って来て』
『ええ? 暑いじゃん』
『だから頼んでるんでしょ』
『……』
『よろしくね。お釣りでアイスでも買って良いから。ね? お願い──』
とアイスにつられたのに、
「足らないし……」
お釣りは五円だった。
どんだけ正確なんだよ……
「はぁ〜……アイス食べたい──」
呟いても、意味はない。
ただ、アイスが食べたい気持ちが膨らむ一方だ。
「ガリガリ君……バニラアイス……チョコレート……ストロベリー……」
頭の中がアイスでいっぱいになる。
あー食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい……
「松木くん?」
顔をあげると、野上さんと唐崎さんがいた。
「何? 松木買い物?」
「うん……。ちょっと頼まれて──」
さっきの聞かれてないよね? 大丈夫だよね?
内心ドキドキしながら、二人を見る。
「そういえば、矢倉からメールきたんだけど、松木見た?」
「メール?」
……よかった。聞かれてないみたいだ。
見てないな……というか──
「携帯家だ……」
「そうなの? じゃあ知らないんだ」
と唐崎さんが携帯を取り出して、内容を読み上げてくれる。
「明日夏祭りがあるから、皆で行こうっていう内容なんだけど」
「松木くんも来るでしょ?」
「うん。もちろん! 創也に後で連絡するよ」
「よかった。楽しみ」
野上さんがふんわりと微笑む。
これだけで買い物に来てよかったと思える……!
「で、明日浴衣で行くから、楽しみにしててね」
「浴衣?」
「うん。これから浴衣買いに行くの」
と野上さんと唐崎さんが笑って頷く。
「へえ! きっと似合うよ!」
野上さんの浴衣姿……! 可愛いんだろうな──
「ふふふ。楽しみにしててね! 由里葉と可愛いの選んでくるんだから──」
と唐崎さんが腰に手を当てて笑う。
気合いが入ってるんだな──
「松木くん」
「うん?」
「わたし、何色が似合うと思う……//?」
「何色でも似合うと思うよ。野上さんなら──」
「そうかな//?」
「うん!」
青でも、赤でも黄色でも。だって、おれの見る野上さんは、いつもキラキラしているから──
「じゃ、選びに行きますか」
「うん! じゃあ、明日ね」
「うん。明日──」
野上さんと唐崎さんを見送って、おれは歩きだした。
アイスのことなど、明日のことでいっぱいで頭から消えていた──
*
「ただいま──」
「お帰り。ありがとね」
「はい。これ──」
ビニール袋を渡して、テーブルに置きっぱなしにしてた携帯を手に取る。
「暑かったでしょ?」
「うーん……」
創也からのメールに返信しながら、母さんに言っておく。
「母さん」
「ん?」
「ありがとう」
「……へ?」
「気にしないで。いいことあったんだ」
「そう……」
母さんは、首を傾げながら袋から商品を取り出していた。
「はあ〜。楽しみだな──」
とりあえず、明日の準備をしよう──
次回、夏祭りのお話。
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