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生産の為に必要なもの

8話目になります。


気づいているかもしれませんが、なるべく『現実での話』と『効果音』は出さないようにしています。

 1日ぶりにやってきた東の森で、俺たちに向かって昨日と同じように巨大蜂が1匹だけ飛んでくる。そんな状況に俺はつい


「実はその日初めて東の森にやってきたプレイヤーの全員が、蜂と1回戦わないといけないのかな?」


 とこぼしてしまう。その言葉に3人とも苦笑しながらも同意してくれる。これで次にきたときも同じ状況になったとしたら、俺の予想も正しいのだろう。そう考えておく。


「あ~・・・そういえばステータス下がってるし、この1匹は俺が足止めしてみるわ」


 そういってマサトよりも前に出る。


「それじゃあ頼むは。後ろは任せとけ」


「頼んだ。1匹なら大丈夫だと思うけどね」


 俺は巨大蜂に対して《バインド》を使用する。この一発で動きが止まってくれるとありがたかったのだが、残念ながら失敗のようだ。ただ、特技を使ったおかげで巨大蜂のヘイト(プレイヤーへの敵愾心)を俺に向ける事ができた。ヘイトはそのモンスターへより多くの傷を与えたプレイヤーに向くのが一般的だが、それ以外にもプレイヤーが行った支援などでもヘイトがたまるので、しっかりとヘイト管理をしていないとパーティが戦っていた全てのモンスターが、支援を行ったプレイヤーへと向かってしまう事もある。


 今回の場合はそれを利用して、俺がまず先制攻撃を仕掛け俺に攻撃させる。その後は巨大蜂が攻撃するたびに自分のLPを回復するだけで、俺に対する巨大蜂のヘイトが他のパーティのメンバーよりも多くなるので俺は<補助>のスキルLvを、他の3人は思い思いに攻撃する事でそのスキルLvを上げる。


 今回は、マサトとミサトは剣で攻撃するようだ。俺の横から巨大蜂の後ろへ回り込み俺を頂点としたマサトとミサトの3人で二等辺三角形のような形をつくり2人が攻撃しているのが見える。マサトはあまりダメージを与えないためなのか今回は《ファイアエンチャント》は使っていない。というかマサトもミサトも特技を使わずに剣を振るっている。


 ミコだけは俺からみて左側、2mほど離れた位置から各属性のニードルをダメージを与えすぎないように間隔をあけながら放っている。というか、間隔あけるなら同じ属性でもいい気がするんだけど・・・クールタイム長いのかな?


 ちなみに《バインド》は効果時間が30秒しかないからか、確率で効果が出るからなのかクールタイムが10秒と短い。《ヒーリング》は大体全体の1割分を即時回復じゃなくて徐々に回復していくといったもので、こちらのクールタイムは5秒だ。


「さすがに防具が初期で、ステータスも下がった状態じゃ肉盾みたいなことはできないな」


 そのまま俺は更に3回の攻撃を受けて自分の受けるダメージと回復する量を比べる。回復しきる前に次の攻撃が来るので、目に見えて俺のLPが少なくなっていく。相手の攻撃は巨大なアゴによる噛み付きと、お尻にある針の攻撃だ。はっきりいって針の大きさが一番太いところで大人の男の腕ぐらいあるのはゲームだからいいが、実際にいたら大体の生物が即死してしまうんじゃないだろうか・・・


 このまま攻撃を受け続けると死に戻りしてしまうので《バインド》の効果が出るまで連続で使って、効果が出たら下がる。


「マサト交代してくれ!」


「あいよ!」


 マサトが今まで使っていなかった《ファイアエンチャント》を使う。マサトの攻撃が激しくなったからか、それとも俺が下がったからなのかミサトが後ろに下がり銃を構え《マナバレッド》を放つ。<銃>は特技が遠距離攻撃だが、通常の攻撃は銃本体で殴るしかない。なのでミサトはクールタイムが終わるまでは位置取りの調整のためなのか走り回っている。




 そのまま何度か攻撃していると、巨大蜂のLPが0になった。スキルのLvが上がったからか、今回は2分もかからずに巨大蜂を倒す事ができた。


「さてと、予定だと森の奥のほうへ入っていくつもりだったけど、アトムが予想以上に攻撃を受けてるし・・・。姉貴鎧か何かアトム用に作れないか?」


「素材は足りてるから、全員分鎧は作れそうだけど成功するかわからないよ?」


「できた分を全員で使えばいいだろ。かまわないから全員分できるまで作成頼むわ」


「わかったよ」


 そういうとミサトはウィンドウの操作に集中し始めたので、俺たちは周囲の警戒をしながら作業が終わるのを待つ。そして全員分の『兵隊蜂の殻鎧』が問題なく作成できたので全員で装備する。



 兵隊蜂の殻鎧:防御力8 重さ3 耐久力100/100

  兵隊蜂の甲殻を集めて作った鎧。木材のように軽いがその硬さは金属に近い。



「これなら大丈夫かな?だいたい5倍になったわけだし」


「一応外縁部で1匹だけのやつを探してみようか。それでアトムが大丈夫そうなら奥にいってみよう」




 5分ほど歩くと1匹だけ飛んでいる巨大蜂を発見できたので、前回と同じよう俺が攻撃を受けてみる。今回は攻撃を受けても一気にLPが減る事はなかったので《ヒーリング》の回復では少し追いつかないが、それでも倒しきるまで耐える事はできた。


「これなら1匹は平気かな?ただ2匹以上になるときついな」


「森の奥のほうは3匹とか4匹の群れが出る事があるからなぁ・・・4人じゃこの森の奥はきついか。どうするか?また森の周りで狩ってみるか?」


「それよりも私は南の平原だっけ?そこにいきたいんだけど」


「南の平原になにかあるのですか?」


「<作成>の素材を集めたいのさ。さっきので糸を全部つかっちゃってね、たしかヒツジがいるんだろう?そいつから取れるんじゃないかと思ってね」


「糸?でも俺の渡したアイテムに糸なんてはいってませんよね。何か別の物を作るんですか?」


「いや、糸はその鎧にも使ってるよ。ただホーンラビットのドロップの『角兎の毛皮』を10枚使えば毛糸を作れたから、それをつかったんだよ」


「10枚・・・4人が40枚ずつだして160枚だから16個できたわけだ」


「残念ながら成功率が50%しかなくてね~・・・できた糸が7個で殻盾と殻鎧4つも成功率もそこまで高くなくてね。全部使い切っちゃったんだよ」


「10枚も使って作るのに50%ですか・・・」


「たぶんヒツジから取れる素材よりも難易度が高かったんだろうね。その分特技をいっぱい使ったからスキルのLvだけは一気に5まで上がったけどね。というわけで、私は素材を集めるために南側の平原に行きたいのさ」


「5まで上がったのですか・・・そういえば、短い時間でそれほど特技を使えるものなのですか?クールタイムやMPの消費が厳しかったのでは」


「クールタイムは無かったよ。たぶん素材を集めないといけないからその分をクールタイムなしにしているじゃないかな?MP自体はそこまで大量に必要ってわけじゃなかったからね、時間の空いてるときにぽちぽちやってたのさ」


「そういえば、殻布を作るのも特技だもんな」


「そうそう。殻布作るのに甲殻が3枚必要で、さらに防具を作るのに殻布が5枚と糸が1つ必要だったわけさ。服の場合は糸と殻布の割合を逆にすれば作れるよ」


「服と鎧の違いは?」


「防御力の数値が違うだけだな」


「やっぱり鎧の方が数値が高いのか?」


「ああ。ただ、服と鎧は同時に装備できるから結局は合わせた数値で考えた方がいいけどな」


「両方着れるのか・・・ってよくみたら鎧の下に初心者の服がみえるな」


 装備したときは気づかなかったが黄色に黒のラインが入った鎧の下に若草色の服が見える。


「他にも複数装備できる場所は無いのか?というか鎧の重ね着とか」


「さすがに無理だったよ。鎧を2ついれると古い方が道具の方に戻されるみたいだ。後は手は盾だから2つ装備すると両手に盾をもてたかな。それ以外だと兜とフードが装備できたけど、フードの扱いはアクセサリーだからなあ」


「盾が両手にもてるんだ?」


「おう、だから姉貴も腰に武器が2つ付いてるんだろ。手に持つ物が2つになるようにすれば組み合わせは自由みたいだったぜ」


「もしかして、銃と剣を片方ずつ使う事もできるのかい?」


「どっちかの手で銃の照準を合わせながら、剣を振るなんて芸当ができるならやってみたらいいんじゃないかな?テスト時はそれをやろうとして、できなかったから泣く泣く両手に剣を持つ人とかもいたからな」


「できた人もいたのですか?」


「いた。銃は敵に向けて特技を放つだけ、剣にはエンチャントだけつけて特技なしで振り回す。ってやつらが何人か」


「いいね、せっかくだしそれに挑戦してみようか」


 そういってミサトが笑みを浮かべた。せっかくとった2種類のスキルの使い道ができたのがうれしいのだろう。というかだ


「それ昨日はなしてもよかったんじゃないか?」


「あ~・・・忘れてたんだよ。さっき装備を2つまで装備できるって話してて思い出した」


「忘れてたんならしかたないな」


 そういって笑いあう俺たちにミサトが不機嫌そうに


「それでさ、南の平原にいくはなしはどうなったんだい?両手で武器を使う練習もしたいから、ここよりも安全な場所でやりたいんだけど」


 忘れていたがそういう話をしていたのだった。確かにここで狩ってもいいが、奥に入るという当初の目的ができない以上昨日と同じことを繰り返す事になる。それに俺も南の平原へ一度いってみようと思っていたところだし、行くことは賛成だ。ただ今はパーティで行動しているから他の2人が行きたくないのならここは2:2で分かれる可能性もあるかもしれない。


「まぁ姉貴が服を作ってくれれば次回は奥までいけるだろうし。何より同じ場所に延々といてもつまらないしな!2人もそ南の平原へ行くでいいか?」


「俺は問題ないな。後で行ってみようと思ってたし」 「私も大丈夫です」


「それじゃあ、南の平原へいってみるか」


 俺たちは新しい蜂に見つかる前に森を後にした。

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