アイテム作成
7話になります。
亀進行ってタグ入れるべきかな・・・
ゲーム開始から2日目の朝
いつもなら休日は昼近くまで寝ている俺だが、予定が入っているときはきちんと朝早くに起きる。今の時間は7時半を回ったぐらいだ。集合時間は9時なので朝食を食べて少しゆっくりしても時間があるのだが、1人で最初の町を見て回った事がなかった事を思い出した俺は、8時過ぎにはフリスタにログインしていた。
「ミコの言うとおり人が少ないなあ・・・」
フリスタにログインした俺は、いつもの噴水前?に立っていた。フレンドリストを確認するとすでにマサトはログインしているようなので『TEL』をしてみる。ウィンドウに相手の名前が出た後、電話と同じような呼び出し音がしばらく続き、その音が終わるとマサトの声が聞こえてきた。
「アトムか?どうした」
「昨日聞きたいことがあったんだけど忘れててさ、今大丈夫か?」
「大丈夫だ。北門の方にいるからそっちに行くわ」
「了解。こっちは町の中心より少し下(南側)にある噴水っぽい物の辺りにいるから」
「おう、それじゃあ後で」
そういうと『TEL』が終了しウィンドウが閉じた。マサトが来るまで少しあるだろうから周りの様子をもう一度確認しておこう。
やはりと言うか、人数が少ない。これは間違いない。1万本のソフトが売れているはずなので、プレイヤーの人数も同じく1万のはず。だが俺がログインしてから見える範囲に現れたプレイヤーの数は10人に満たない。狩りに出ているからこの町に滞在している人数はもう少し多いとは思うが、100人もこの町にいるとは思えない。それに、なぜかプレイヤーの商店が出ていないのだ。
人のいない町、活気の無い町、色の無い(白い)町。人々は何処に行ってしまったのか・・・。そんな事を考えながらマサトを待つ。
「よっす。待ったか?」
「・・・マサトか。特に待っては無いさ」
「そりゃよかった。それで、聞きたいことって何だ?」
「ああ・・・うん、そうだな」
俺は先ほどまで考えていた事を一度捨てる。気分を変えて昨日の疑問をマサトに問う
「町の外でログアウトしてからもう一度ログインすると町に戻るだろ?しかも同じ場所からスタートだし、どういうことなんだ?」
「そのことか~。テスト時もそうだったんだけど、この町さNPCがいないだろ?町に戻るためのアイテムがあるわけでもないし、ログアウトするために何も無い町までいちいち戻ってくるなんてしたくないだろ?EF社がその面倒をなくしてくれたんじゃないかって結論がテスター側で出た。真実はもちろん知らない」
「確かに何も無いもんな。ストーリーもなければお店も無い。ネトゲとしてどうなんだろうってレベルで何も無いな」
「だよな~・・・。もしかしたら俺たちが知らないだけで、実は攻略の方には何か情報出てたりして」
「そういえば昨日から俺は確認してないな。マサトは?」
「俺もしてない。さすがに昨日は疲れてたからすぐ寝たし、さっきも北門の外がどうなったのかちょっと気になったから見に行ってただけだし。ちなみにテスト時と同じだった」
マサトはそういうと両手を挙げ軽くバンザイをする。まるでお手上げと言うかのようだ。
「そっか、んじゃ今のうちに攻略に何か書かれてないか見てこようかな」
「いてら~」
そういって片手をふらふらと力なく揺らしている。それを見ながら俺は一度ゲームをスリープモードにする。『アウターギア』ではパソコンの情報を見る事はできない。なので攻略ページを確認するためにはフリスタを終了するか、スリープモードにしてパソコンを使って情報を見ないといけない。
スリープモードというのは、キャラクターがゲームに残った状態で一時的にゲームを中断する機能のこと。ただしキャラクターがその場に残るので、フィールドでこの機能を使う場合は周りに注意しないといけない。戻ってみたら死に戻りしていました、と言う状況になるからである。
少しの間攻略ページの情報を確認してみたが、特に誰かが書き直したりはしていないようだ。もしかしたら別のサイトが立ち上がっているのかもしれないが、掲示板を確認する時間もないのでフリスタに戻ることにする。
ログインすると、目の前にマサト以外の2人もいた。
「おまたせ。集合場所って東門じゃなかったっけ?」
「ログインはここの周辺になるからな。お前が帰ってくるのをここで待ってたらたまたま2人もログインしてきたからさ、移動せずに戻ってくるの待ってたんだ」
「そういうこと。何か探し物してたんでしょ?何か見つかったかい」
「いや、攻略ページの方は特に新しい情報は無かった。もしかしたら掲示板の方ならあったのかも知れないけど、集合時間が近かったからね見ないで戻ってきた」
「そか、それじゃあ昨日話したとおり東の森でいいか」
「その事なのですが、兄さんのステータスは下がっているらしいのですが大丈夫なのですか?」
「大丈夫だろう。それに無理ならマサトが1人頑張ればいいんだし」
「さすがに1人で数匹相手にするのはきついぞ・・・」
「頑張りな!」 「・・・頑張ってください!」
明らかにからかっているとわかる笑顔で言うミサトと、ミサトに合わせたのだろうミコの声援に
「・・・がんばるます」
そう行って肩を落とすマサト。話も終わったので、俺たちはパーティを組み4人で移動する。その道中で他のプレイヤーとは1人もすれ違う事はなかった。なので俺たちは歩きながら話していたのだが
「やっぱ人が少ないな・・・」
「そうか?森の中にいっぱいいるとかだと思うから気にする事はないと思うが」
「それにしたって、町にプレイヤーのお店が出てなかったのも気になるね。それなりに生産プレイヤーもいるんでしょ?」
「そういえば、物を売っているような人は見ませんでしたね」
「ふむ・・・。そう言われると、確かにおかしいな・・・」
「まあ気にしても仕方ない事だし、今はスキルのLv上げと<作成>のための素材を集めましょう」
「姉貴は両方スキルのLv上げだけどな」
「そういえばそうだ」
そういって笑うミサト。確かに情報が特に無いのだから考えても仕方が無い。ここは時間が空いたときに南門の方へいってみよう。
「そうそう<作成>で思い出したけど、せめて剣ぐらい作った方がいいんじゃない?」
「残念ながら、それは無理なんだよなあ」
「そうなのかい?じゃあやり方だけ教えておくれよ」
その言葉にマサトが立ち止まった。ミサトへの説明のために足を止めて話をするのだろう。これ以上進んで、話の途中に襲われないようにするためだろうと判断して俺も立ち止まりどうせだから地面に座る。俺が座ったのをみて全員も座る。
「基本的に特別なことをしたいときは特技だから<銃>の特技を確認したみたいに<作成>を見てみなよ、そこにあるはずだから」
マサトの説明を聞いてウィンドウを操作するミサト。少し操作すると指を止める。
「・・・防具のスキル持ってないと<作成>の特技がでないんだよね?」
「生産をやってたプレイヤーにそう聞いたぞ?それがどうかしたのかよ」
「ん~・・・これ、どう見ても作成できるよね?
そういって自分の操作していたウィンドウを俺たちに見えるように前に出す。そこには・・・
装備>>スキル
<作成>Lv0 武器作成:素材を消費して武器を作り出す。
防具作成:素材を消費して防具を作り出す。
素材作成:素材を消費して特殊な素材を作り出す。
そこには確かに《防具作成》の文字があった。
「あれ?何で防具作成の特技が出てるんだ?」
「私に聞かれても困るんだけどね・・・。このゲームは2人のほうが詳しいんだし、あんたはテスターだったでしょ。何か知らないのかい?」
「テスターでも知らない事は知らないぜ・・・。もしかしたらEF社がバランス考えて作れるようにしたのかもしれないな。<作成>と武器・防具のスキルを全部取らないと作れないのはさすがにきつかったし」
「う~ん・・・」
「兄さんどうかしましたか?」
「いや・・・さ。これまでテスト時と仕様が変わった違いが無かったから、本当にスキルを取らなくてよくなっただけなのかなって思ってさ」
「確かに一理あるな。姉貴、今の素材で盾作れるか?」
「えっと・・・素材に殻布ってのが必要みたいで作れないね」
そういって操作したウィンドウを前に出す。そこに書かれていたのは<殻布類×3が必要です>というメッセージだった。
「姉貴・・・それ素材作成でできるはずだから」
「そうなのかい?それじゃあちょっと待っておくれ」
自分の手元に戻したウィンドウを操作するミサト。しばらくウィンドウを操作、というか指で連続にボタンを押していたのだが、その作業が終わり顔を上げる
「とりあえず、兵隊蜂の殻盾ってのができたけどどうするんだい?」
「アイテムの取引・・・メニュー画面の『道具』にある取引を選んでくれ。そうしたら取引したいアイテム選んで相手に渡す。そうしたら相手からアイテムをもらう場合はそれを今度は受け取ってウィンドウの完了を押して終了だ」
「ややこしいね・・・」
「ゲームだし、しかたないって。店を出せば操作も変わるんだけど、今は関係ないから説明はしないでおく」
「あいよ。それじゃあ早速渡すかな」
ミサトが出した兵隊蜂の殻盾という名のアイテムをマサトが受け取り、今回はマサトからは何も出さずに取引終了。そうして新しい盾を装備したのだろう。左腕の盾が巨大蜂と同じ色の黄と黒の素材でできた盾に変化していた。
「・・・・・・」
盾を変えたマサトがウィンドウを見ながら何か考えているようだ。考え事が終わったのか、しばらくすると顔を上げて指でウィンドウを前に出す。そこにかかれていのは盾のアイテム情報だった
装備>>道具
兵隊蜂の殻盾:防御力5 重さ2 耐久力100/100
兵隊蜂の甲殻を集めて作った盾。木材のように軽いがその硬さは金属に近い。
なかなかのいい防具のようだ。初期の初心者の服とズボンはともに防御力1だった事を考えると、マサトの防御力はこれ一個で倍以上になった事になる。
「全員みたな?それじゃあこれがさっきまで使ってた盾だ」
そういってもう一度操作したウィンドウを俺たちに見せる。そこに書かれていた内容に俺たちは驚いてしまう。なぜなら
装備>>道具
初心者の盾:防御力1 重さ1 耐久力∞ 特殊効果:衝撃耐性(小)
最初に与えられる盾。
特殊効果。つまり装備しているとその効果の恩恵を受けると言う事だろう。衝撃耐性というのは体当たりや棍棒などの攻撃の事をいう。<銃>の《マナバレット》の攻撃も衝撃耐性で軽減できたはずだ。
「見てわかったと思うけど、初期装備の盾には特殊効果がはいってる。さらにいえば、テスト時の防具にも特殊効果が入っていたんだ」
「つまり、弱体化している?」
「いや、たぶんだけどこれが防具のスキルを持っているときと持っていないときの違いなんだと思う」
「・・・つまり、<手>のスキルを持っていない状態で盾を作成すると特殊効果が付くことはなく、スキルを持っていれば特殊効果が付いた盾が作れるようになる?」
「そういうことだろうなあ。ちなみにテスト時のこの盾の能力は毒耐性(小)だったからあまり人気は無かったけどな」
そういって笑うマサト。だがこの変更は悪い事ばかりでもないだろうと俺は思う。なぜならかなり早い状況で装備を作る事ができるのだから、生産をメインに考えていたプレイヤーは特殊効果の付いていない装備を作りながらスキルLvを上げて、徐々にスキルをとっていけばいいのだから。
「まぁ何でも作れようが作れまいが、私のとるスキルは変わらないからいいんだけどね。まずは<発見>をとって武器も作れるようになる。そして次は防具スキルをとってしまう」
「姉貴がそれでいいんならいいけどさ・・・」
「武器の方も同じような事になっているのかもしれませんね」
ミコの言葉に全員が頷く。ただ俺たちにはあまり関係が無いだろう。マサトの武器は剣、ミサトの持っているのも剣、俺は武器が無いしミコの杖は他のプレイヤーから買えばいいのだから。
「武器も同じだろうけど、あまり気にする必要もないしそろそろ行こうか」
俺たちは4人でパーティを組んでフリスタをやってはいるが、4人だけで続けるつもりはないのだから。最初のうちは気心の知れた知り合いで、次は知らない人とパーティを組んだり取引をしたりする。ネットゲームはいろいろな人と関わった方が楽しめるのだから。
使い道の無い素材アイテムを全てミサトに渡した俺たちは、昨日と同じく東の森の昨日は行かなかった奥へと入っていくのだった。
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