ボス部屋
17話目になります。
そろそろ晩御飯のためにログアウトをするかと思っていた俺たちの目の前に、アーカンの公園にあった水晶を小さくしたような青い50cmほどの水晶が浮いた石畳の空間が表れた。
石畳は半径5mほどの円形で、水晶の横に2mほどの大きさの石の扉も浮いている。
「なんだここ?今までと雰囲気が違うみたいだけど」
「お?どうやらここはボス部屋に行く場所みたいだな」
「ボス部屋?」
「おう。東の森のボス『クイーンビー』のいる場所へ、その扉からいけるんだ」
「でもん、テストのときは水晶は浮いていなかったわねん」
「つまり、こっちの水晶は製品版の追加要素ってこと?」
「あ、姉貴いきなり触ろうとするなよ・・・」
俺たちが怪しい石畳の手前で話し合っている間に、ミサトが水晶のところまで行って手をかざしていた
「別にいいじゃない。それに触ったらメニューが出てきたわよ。どうやらログインしたときここに戻ってこれるようになるみたいだよ」
そういって俺たちに触るように促す。俺も触ってみると、ホームポイントの設定に似たものが出てきたのだが、どうやら町に立ち寄るとこの設定は消えてしまうようだ。
「死に戻りするまではログアウトしてもここに戻ってこれるってことかな?」
「たぶんそうだろうな。テストのときは休憩場所とかなかったから面倒だったけど、これがあれば休憩した後でボスに挑めるし、町に戻らないで狩り続けることもできるわけだな」
「パーティ全員で集まらないと町へ戻ったほうがいい気がしますけど?」
「そういう狩り方をする人わん、ソロっていう1人で狩りをする人や1人で戦える人なんじゃないかしらん」
「ソロってこのゲームだと微妙だと思うけど、いるんだ?」
フリスタのモンスターが全体的にLPが高く、一撃の威力も高いので1人で戦うとしたら相当スキルのLvが高くないとできないような気がするのだが・・・
「いるわよん。スキルのとり方次第では1人で何でもできるからん、パーティで戦うよりも上がりやすいって人は多いわよん?」
「それに、アトムは<鎧>でもとったらMPが尽きるまで敵の攻撃に耐えながら<補助>と<妨害>のスキル上げることができるんだし、スキルのLv上げだけって言うのなら似たことができると思うぞ?」
「確かに<ステータス上昇:小>と<鎧>と<補助>と<妨害>の4つがどんどん上がるわけだから、防具そろえてここで蜂に囲まれてみたら?」
リカの提案に俺はげんなりとする。
「そんなLv上げのためだけに殴られ続けるなんて嫌過ぎる・・・」
「ですよね~。それでログアウトするわけだけど、どうする?ここに設定するの?」
「俺はかまわないけど。みんなは?」
リカの質問にここに戻ってくるのに肯定的なのは俺とマサトとミコ。他の3人は否定的だった。
「私とマツはそろそろログアウトして、今日はもう終わりかな?」
「そうねん、明日は朝からまた仕事で忙しいしねん」
「私もログインはできるけど、夜は狩りをするために何時間もログインってのは無理かな」
と、社会人組みは忙しいそうだ。
「それじゃあ仕方ないか、どんな敵なのか見てみたかったんだけどな」
「それじゃあ俺と2人で入るだけ入ってみるか?」
「俺はうれしいが、いいのか?」
「かまわないさ。それにどれくらい強くなってるのか確かめとけば、次挑戦するときの目安になるかもしれないだろ?」
「それじゃあ飯食った後の9時ごろでどうだ?」
「わかった。それまでに用意しとく」
「私もついていっても大丈夫ですか?」
俺とマサトがボスに挑む方向で話していると、ミコが話に加わってきた。
「ミコもくるのか?」
「問題がないようでしたら、私も戦ってみたいのですけど・・・かまいませんか?」
「ああ、大丈夫だぞ。いいよな?マサト」
「むしろ歓迎ってやつだな。ただ、死に戻りすると今日の狩りで手に入ったアイテムが無くなっちまうからなぁ」
「それなら私が預かってようか?」
ボスに負けることが前提なので、俺たちとしては町にそのまま帰るミサトが持って行ってくれるのはありがたい。
「ああ、そうだな。それじゃあ姉貴ログアウトする前に装備作ってくれよ。残りは持って行っていいからさ」
「はいはいっと。糸もいっぱいあるからとりあえず、頭と腰と足の3つでいいのかな?木材もらったから剣も作っちゃおうか」
「それじゃあ私がミコの分の杖を作ってあげるよ。・・・素材はもらうけど」
そうリカがミコに悪そうな顔をしながら提案する。しかしミコは特に指摘することもなく
「お願いします」
そういって素材をいくつかリカに渡している。さすがに冗談だったのだろうが、流されるとは思っていなかったのかリカの反応が少し遅れていた。その様子に苦笑しながらもこっちはこっちで素材を渡して装備を作ってもらう。
俺は武器は特にないので防具の新調だけだ、できた新しい防具は『兵隊蜂の頭巾』『兵隊蜂の腰布』『兵隊蜂の靴』となっていた。それぞれ頭巾の防御力が3、腰布の防御力が5、靴の防御力が3となっていた。鎧が8で一番高いようだが、どの装備も蜂のお尻部分のように黄色と黒の縞模様になっている。ちなみに手に手袋はないようで、盾が出来るそうだが俺は持っても邪魔になりそうだから作ってもらわなかった。
「そうだ、10時ぐらいに一度入るから修理だけさせてね」
「わかりました。それじゃあログアウトしますか」
マサトとミコも装備を新調したところでそろそろログアウトする。今日はもうフリスタをしないというリカとマツには別れの挨拶もした。といっても時間が合えばまた一緒にパーティを組むこともあるだろうからさっぱりしたものだった。
俺はログアウトをして、風呂の用意をしてしまう。晩御飯を食べた後、命と俺がそれぞれ風呂に入ったら9時ぐらいになるだろう。
風呂から上がり、明日の大学の準備も終わり9時前だがフリスタにログインする。すると、すでにミコとマサトはログインしていたみたいで俺が最後だった。
「2人とも早いな。まだ20分はあるぞ?」
「気にするなよ、することもなかったし早めにきてたのさ」
「明日からテストだろうが・・・。ミコも早かったな」
「私は兄さんがお風呂から上がってからですから、そこまで早くから入っていたわけではないですよ」
「そうか・・・・・・どうした?マサト頭なんて抱えて」
俺と話していたら急にマサトがしゃがみながら頭を抱えていた。
「・・・テストのこと忘れてた」
しばらくしてから呟いたマサトの言葉に俺は呆れてしまう。
「お前・・・フリスタのテスターやってて授業もあんまり聞いてなかっただろ?大丈夫なのかよ」
「・・・結構まずい。すまんが明日授業範囲写させてくれ!」
「それぐらいならいいけどさ。それじゃあ明日は早く大学こいよ?」
「わかった。それじゃあ早速ボスに会いに行くか!」
マサトは嫌なことを忘れようとするかのように元気な声で俺たちを促す。特に断る理由もないのでマサトに続いて石の扉の前まで移動する。
マサトとミコも俺と同じ兵隊蜂の防具で身を固め、新しい武器を手に持っている。特に忘れていることもないので、マサトがそのまま扉に手をかざし押し開ける。
すると、石の扉が開きその内側は白い空間が広がっている。どうやら、この白い霧のような場所に入ればボスのいる場所へと移動できるようだ。
「それじゃあ行くか」
マサトが入っていく。その後に続いて俺、ミコの順で扉をくぐる。するとそこには今までいた森とは違う30mほどの円形の空間に出た。
森が円形に開けたような場所で、木々の向こう側はよく見えない。空を見ると赤黒い空が見える。どうやら普通のフィールドとは違う場所のようだ。
俺たちが周囲を確認していると、俺たちの前方10mぐらい(この開けた空間のちょうど中心辺り)に大きな蜂がいるのが見える。大きさは大体5mほどの蜂だ。その蜂を守るかのように兵隊蜂が周囲に3匹飛んでいるのだが、大きさが違いすぎて同じモンスターには見えない。
「あのでかいのがボスのクイーンビーだ」
誤字・脱字・質問などございましたらお気軽に
申し訳ないですが、時間が足りずにボスとの戦闘は次回に持ち越しとなってしまいました。