周りの話
15話目になります。
「これからだけど、どうする?俺はまた蜘蛛を狩ってもいいんだけど」
「俺は蜘蛛でもいいけど、兵隊蜂でもいいかな。向こうのほうが戦いやすいしな」
「私は蜂のほうがいいかな。蜘蛛を倒してあいつらの糸が手に入ったから新しい防具が作れるから作ったんだけど、蜂より弱かったんだよね・・・」
「私はどちらでもかまいません。まだあまり慣れていないのでお任せします」
「私も蜂がいいな~。それに東の森のほうが採集場所がいっぱいありそうだし」
「私も蜂がいいわん。どれくらい強くなってるのか気になるしねん」
「それじゃあ蜂を狩りに行くか」
今後の行動を話し合った俺たちは、リグーを目指すことにした。帰りはログアウトをすればアーカンに戻ってこれるので、30分ぐらいの移動はあまり気にならない。
ちなみに見せてもらったドゥームスパイダーの素材で作った鎧は『死蜘蛛の殻鎧』だった。
道具>>死蜘蛛の殻鎧 防御力5 重さ3 耐久力100/100
ドゥームスパイダーの甲殻で作られた鎧。鎧としての評価は動物の皮より上
確かに防御力で考えれば兵隊蜂の殻鎧のほうが3高い。特殊効果が付けばまた違うのかもしれないが、現状使うことは無い物だろう。
「・・・相変わらず多いねぇ」
ミサトの言葉に俺は苦笑してしまう。なぜならアーカンとリグーを結ぶ街道(といっても片方の町はなくなっているのでただの道でいいかもしれない)の周辺には朝よりは人が減っているが、それでも多くのパーティがヒツジやウシを狩っている。<作成>をメインにやっている生産プレイヤーだと思っていたのだが、装備が全員初期の剣を装備しているパーティもあるので、生産プレイヤー以外もいるのかもしれない。
「死蜘蛛の糸が手に入らなかった場合は、糸を作るためにここに混ざってたかもしれませんね」
「確かにな。こんなに人がいたら狩場を探すのも大変だろうなぁ」
そんな人たちを見ながら俺たちはリグーへと向かった。たまに俺たちを見ているプレイヤーもいたが、特に話しかけてくるわけでもなかったので気にしないことにした。
今回の目的は、リグーの東側にある森で兵隊蜂を狩ることと、いけるなら奥まで入っていってリカの<発見>のスキルで素材をいくつか集めることだ。
「そう言えば、2人のスキルってどうなってるの?」
「姉貴、それはさすがに聞かないほうがいいと思うぞ?知り合ってまだ半日なんだから」
「別に気にしないわん。それにパーティを組んでいるのだもの、ある程度できることがわかっていたほうがいいものん。リカもいいわよねん?」
「私は別に気にしないわ。それにスキルを言わないほうがいいことってあるの?」
「あ~・・・まぁ・・・」
そう悩みながら俺のほうを見るマサト。それは俺が何か隠しているといっているようなものだぞ?
「俺は別に言ってもかまわないさ」
「そうか?まだ出回ってないからせめて自分が手に入れてから広めたかったぜ・・・」
そう冗談なのか本気なのかわからないことを言う。
「まずは私ねん。私は<斧>と<鎧>と<補助>と<感知>と<STR>と<VIT>と<火>よん。<斧>と<鎧>と<VIT>は10を超えているわん」
「私は<杖>と<火>と<作成>と<発見>と<INT>ね。もうすぐ<作成>と<INT>が10になりそうだから、<鎧>をとろうと思っているわ」
リカはミサトと同じように<作成>を持っていて、素材を集めるために<発見>をとっていたそうだ。蜘蛛の巣については<発見>持っていて助かるとは思わなかったそうだ。
2人で基本的に素材を集めながらスキルのLvを上げて装備を整えてから次の狩場へと進む。1日目はそういう風に楽しんでいたそうなのだが、今朝俺たちを見かけてアーカン周辺の敵の素材で作った装備ではなく、マツに聞くとファイタービーの装備をしていると聞いて、俺たちに声をかけてきたのだそうだ。
リカたちによると、初日にみかけた6人パーティはやはりテスターだったようで、スキルのLvも特に上げずにテスト時と同じモンスターなら狩れると考えて突撃し、強化された兵隊蜂の群れに囲まれてすぐに死に戻りしてしまったそうだ。
その情報が早いうちに出回った結果、東の森で狩りをやろうと思う人はいなくなり、リグーとアーカンの間にいるヒツジやウシを狩るか、リグーの西側で狩るのが一般的なのだそうだ。ちなみに、リグーの北側とアーカンの南側はリグーの東の森よりも敵が強いらしく、アーカンの東側はモンスターが出現する場所までが遠い上にリグーの東の森と同じぐらいなため狩りに行く人は今のところいないそうだ。
ならば自分たちが午前中狩りをしていたアーカンの西側はどうかというと、自分が引っかかったように<発見>もちがいないと巣に引っかかってしまい、モンスターの不意打ちを確実に受けてしまうので<発見>もちがパーティにいるときだけそちらに行くそうだ。
俺が攻撃を受けても1割も減らなかったのでそこまで気にする必要はないと思ったのだが、どうやら今現在出回っている装備はウシの皮で作った皮鎧と初心者の服が普通であり、合計しても防御力は2にしかならないらしい。全身にウシの皮で作った装備を着ければいいんじゃないかと思ったが、素材の数が出回っていないうえに現状の狩場の過密さを見ればわかるが、そういう装備が作れた人は1部を除いて蜘蛛を狩らずに転売目的でさらにヒツジやウシを狩っているのだそうだ。
「それにん、普通テスターのフルメンバーが無理だった狩場でん、4人のパーティが狩りをしていたなんて誰も信じられないでしょうん?」
そして、今日街でいろんな人に見られていたのは、俺たちの鎧を見てテスター6人が狩れない敵を4人で倒したのかと疑惑の目が多いのだろうとマツが説明してくれた。
2人のスキルを聞いたので俺も今のスキルを教えることにする。
「俺のスキルは<補助>と<妨害>と<罠>。そして<ステータス上昇:小>だ」
「<ステータス上昇>?」
「ステータスが上がるスキル6つを10にしたら出た合成スキルで、6つのスキルが1つになって上昇量が2になってます」
「6つ!<罠>って確か今朝取ったってことは、最初<補助>と<妨害>だけ?よく戦えるね」
「えぇ。3人がいなかったら何もできなかったでしょうね」
「それでん、その情報を周りには出さないのん?」
「他に気づいた人が出たら情報が出るかもしれませんし、マサトがとったら情報を流してくれるって話だったからそれまでは考えていませんでしたね」
「それにテンプレ、テンプレって情報だけ見てやってる人も多いしな。たぶん初日に蜂を狩れなかったのも情報をもらって狩ってたやつらだろうし、そういうやつらは自分らでは何も情報を出してくれないからな。少し苦労したほうがいいんだよ」
「まぁそういう考え方もあるわねん。それなら私も知り合いに教えるのは待ちましょうかねん」
「いいんですか?」
「いいわよん。それにん、自分が持っていない情報を渡しても信じてくれるかわからないしねん」
「それは・・・確かにそうですね」
そんな話をしていたら、東の森の外縁部に着いた。そして今回は兵隊蜂の洗礼はなかった。4人の場合は襲ってきたのに何か理由があるのだろうか。
採集場所は森の少し奥に入らないとないらしいので、奥へと入っていく。本当は最初の1匹で試したかったのだが、出てこなかったので俺たちは諦めて奥に行くことにした。
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