目覚めの地獄飯③
「カーネ族見たことないの?この国そんなに少ないわけないよね?…あ、違う国の人?人間さんの髪色珍しいよね」
かたりと机の上に湯気があがる盆をのせる。
どうやら中身は粥のようである。
よい香りはそこから漂ってくる。
自然と裕二の腹がなった。
「お腹すいたよね。丸3日寝てたら当たり前だよ」
「悪い…金ねぇ」
「いいよ。あまり物だし。でもちょっと待ってね。
窓閉めなきゃ…きゃっ」
ずるりと少女の身体がぶれた。足元のマットがずれたらしい。
彼女はしばらく抵抗していたが、やがて倒れた。裕二を押し潰すように。
「ぶっ」
「あぁっごめんなさいー!」
少女の小柄な身体に似合わぬ大きな胸が裕二の顔を挟み込んだ。
それなんて言うラノベ?なんて突っ込みがはいりそうだが、裕二自身はライトノベルなど読んだことがなかったのでただただ目を白黒させている。
「本当にごめんなさいー!私ドジだからよく転ぶの!すぐ退くから!ーーきゃっ」
少女が掴んだカーテンは嫌な音をたてて破ける。
手をついた先は裕二の下半身。
薄いシーツは彼女の肌の柔らかさと温もりを直に伝えてくる。
空腹以外健康的な青年である裕二は当然そうなるわけで…
「…早く退いてくれ」
顔を真っ赤に染めた少女はコクコクと頷き、ベッドの上から飛び退いた。
裕二は思う。どんな地獄だ。生き恥晒しまくりじゃないか。
「と…とりあえず食べて。冷えたらおいしくないよーーたぶん」
なにやら不穏な言葉が聞こえたが、声の小ささと食欲により裕二の耳には入ってこなかった。
木製の匙で掬うと粥からほんのり湯気が溢れ出す。
ちらりと少女を見れば、彼女はニコニコと微笑んでいる。
「召し上がれ?」
遠慮はいらない。
裕二は空腹を満たすために器に口をつけて流しこんだ。
「ーー?!?!」
裕二の肉体に電撃がはしった。
なんだ、
この
不味さは!
裕二は先ほどより一層目を白黒させてーー最終的に白目をむいて倒れた。
気が遠くなるなかで、少女がやっぱりーっとかごめんなさいーっとか叫んでいた。