酔いどれたちの肴④
ダミアン一行が席につけば、常連たちが珍しいこともあるものだと目を向ける。
看板娘としての愛想も器量もあるプチではあったが、いかんせん飯を出す店としては問題があることを常連である彼らは知っていた。
「……なんでい」
居心地の悪い視線にダミアンがにらみあげる。
「いや。……宿泊客か?見たことないなと思ってな」
そう答えたのは先ほどエールのおかわりをした男である。
今までの陽気な様子はどこへやら、真顔で問う。
「あぁ、おらたちは税を納めにきただ」
「じゃぁ南東あたりの村か」
「よう知っとんのー」
「オレの親父の従兄の息子が嫁にもらった女がその地方から来たらしくてな。よく手紙で話をきくぜ」
同郷の知り合いならばと、ダミアンたちの警戒心は薄れる。
「ンまー、あレよ。この店の先輩としてナ。いっちょ忠告しといたラぁ…飯だけはやめトけ」
陽気だった男と一緒に飲んでいた浅黒い肌の男が東方の港訛りで言えば、ダミアンたちは首をかしげる。
「あぁ…ナルスはひどい目にあったな」
「ンまー、そレは仕方ナいことラ。プチちゃん肴にしテ飲めば、酒はうめーしヨー」
話の読めない会話にダミアンが苛立ってきた瞬間、それは訪れた。
三人分の料理を抱えたプチである。よほど手荒く拭いたのか、髪の毛はバサバサ、耳の毛もバサバサである。
しかし男たちの視線はそこにあらず。
プチの持った皿である。
かたや待ちわびて、かたや魔王がやってきたかのように。
その皿にはコッコと呼ばれる鳥系の怪物が美味しそうな匂いと焼け音を立てている。
コッコは名前ばかりの怪物で、畑を荒らすことはあっても、人畜無害といっても過言ではない。なぜなら、食事の時なら六歳過ぎた子供でも捕まえることができるからだ。
例え途中で逃げても数歩歩けば、新しい餌に目移りして逃げていたことを忘れてしまう。家畜化している農家も少なくない。
「鶏の香草焼きだんなー」
「おら、好物だよー」
田舎者二人が騒ぐなか、ダミアンは一人違うことを考えていた。
「(おらぁ、感激だ。おらの大好物作ってくれるとは…おらのこと)」
たまたま安売りしていた鶏をプチが大量に仕入れてきただけなのだが、知らぬが仏。
ナイフで皮ごと切れば、溢れ出す肉汁。漏れだす香り。
一口には少し大きすぎるそれを口に放り込む!




